こぼれ桜
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陽介が紡げる言葉はただ一つ。
「すっげぇ、よかった」
腕の中の瑞月が小さく震える。彼女は涙を流していた。サァと、陽介の身体から熱が引いていく。行為の終わりまでにやらかした様々な暴挙が頭を過ぎって、瑞月に強いた無体に心までもが冷めていく。
「……瑞月、ごめん、俺、自分のことばっかで、全然優しくできなかった」
「! 違うんだようすけ、どうか、私と目を合わせておくれ」
瑞月が力の入らない手で、懸命に陽介の面を引き上げる。瑞月のすべらかな手は、情事の余韻か、とても温かい。
見上げた先に、青空があった。無数の桜の花びらを散らした紺碧の空を閉じ込めた眼が。
桜は、いっとう数を増している。
こまやかにきらめく花弁は、空を潤す水の膜へと溶けた。そうして、はらりはらりと瑞月のまろい輪郭を伝って落ちる。
陽介によって花開いた女性は、淡く染まった頬で、艶麗に、無垢に笑う。
「嬉しいんだ。陽介の想いをこんなにも注いでもらえたことが」
瞳に映った桜は、瑞月が過ごし、彼女の中に降り積もった思い出であり、
彼女が今まで、宝物のように抱いてきた、彼女が育んだ、誰かが与えた想いそのものだった。
今、数を増した花弁はきっと、陽介が瑞月にぶつけた想いの数々だ。
「陽介、愛してくれてありがとう」
『必ず私は、陽介に操をささげるから』
いつか、彼女の誓いが、陽介の脳裏を過ぎった。いつかと言ってしまえるほどの、長い時間が流れていた。長く置いていかれた誓いは、もう果たされた。
陽介は言葉を忘れて、瑞月と己の額をそっと合わせる。そうして、いまだに彼女の頬を伝う雫へと唇を寄せた。
「俺も、ずっと待っててくれて、ありがとう」
儚い花の奥に健気に秘されていた蜜の味を、陽介は知った。
「すっげぇ、よかった」
腕の中の瑞月が小さく震える。彼女は涙を流していた。サァと、陽介の身体から熱が引いていく。行為の終わりまでにやらかした様々な暴挙が頭を過ぎって、瑞月に強いた無体に心までもが冷めていく。
「……瑞月、ごめん、俺、自分のことばっかで、全然優しくできなかった」
「! 違うんだようすけ、どうか、私と目を合わせておくれ」
瑞月が力の入らない手で、懸命に陽介の面を引き上げる。瑞月のすべらかな手は、情事の余韻か、とても温かい。
見上げた先に、青空があった。無数の桜の花びらを散らした紺碧の空を閉じ込めた眼が。
桜は、いっとう数を増している。
こまやかにきらめく花弁は、空を潤す水の膜へと溶けた。そうして、はらりはらりと瑞月のまろい輪郭を伝って落ちる。
陽介によって花開いた女性は、淡く染まった頬で、艶麗に、無垢に笑う。
「嬉しいんだ。陽介の想いをこんなにも注いでもらえたことが」
瞳に映った桜は、瑞月が過ごし、彼女の中に降り積もった思い出であり、
彼女が今まで、宝物のように抱いてきた、彼女が育んだ、誰かが与えた想いそのものだった。
今、数を増した花弁はきっと、陽介が瑞月にぶつけた想いの数々だ。
「陽介、愛してくれてありがとう」
『必ず私は、陽介に操をささげるから』
いつか、彼女の誓いが、陽介の脳裏を過ぎった。いつかと言ってしまえるほどの、長い時間が流れていた。長く置いていかれた誓いは、もう果たされた。
陽介は言葉を忘れて、瑞月と己の額をそっと合わせる。そうして、いまだに彼女の頬を伝う雫へと唇を寄せた。
「俺も、ずっと待っててくれて、ありがとう」
儚い花の奥に健気に秘されていた蜜の味を、陽介は知った。