friendship
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期待に浮つく学校に着いても、瑞月は乱されなかった。廊下に溢れた男子生徒たちの間を器用に抜け、瑞月は教室へと足早に歩いていく。せっかくなので、陽介と千枝はその後に続いた。(詳細は分からないが、瑞月が通ろうとすると生徒たちは何も言わずに道を開けてくれる)
真っ先に教室入りした瑞月が、ある女生徒に駆け寄った。着席した赤いカーディガンの女生徒──天城雪子へと、彼女は穏やかに声をかける。
「天城さん、おはよう。雪道、無事だったようだね。良かった」
「ありがとう、瑞月ちゃん。それから、おはよう」
「雪子ー。あたしもオハヨー! 雪すごかったんだよー」
瑞月を見上げた雪子は、親しげな微笑を浮かべていた。そんな雪子に「寒かったー。あっためてー」と千枝が抱きつく。学内でも有名な親友コンビを、瑞月は微笑ましく見守っている。
3人の様子に、陽介は人知れず安堵した。雪子と千枝は、陽介の紹介を通じて瑞月と友人関係になった2人だ。人懐っこい千枝はともかく、引っ込み思案で大和撫子な雪子と、我が道を行く一匹狼の瑞月は、当初相性が悪いのではないかと懸念していたのだ。
しかし、陽介の心配は杞憂だったらしい。双方の反応から友人に対する親しさが伺える。
「天城はよーす。里中のついでに俺もあっためてくんね?」
「え、嫌だけど」
「火の玉ドストレートッ! しかも俺だけ挨拶なしかよっ!」
「もう、花村! 朝からオッサンみたいなの禁止。んなだったらストーブの近く行きなよ! それに雪子はあたし専用ぬくぬく人間湯タンポなの」
「人間湯タンポ……くっ……ふふっ」
「花村、カイロが入り用なのか? しばし待っ──」
「ああ、いや瀬名さん。そうじゃないっすフリっすよ。うん。お前の心遣いでジューブン暖かいから」
陽介のボケに、色とりどりの反応が飛び出す。千枝はいつも通りに突っ込み、雪子はなぜか口許を手で押さえてふるえている。瑞月にいたっては陽介の発言を真に受け、コートのポケットに突っ込んだ。彼女を制止しようとする陽介に対し、復活した雪子がくすりと笑った。
「雪のせいで大変かと思ったけど、みんな平気みたいだね。安心した」
「それがさー、雪子。一名ダイジョブじゃなかったのよ。雪道で花村が転びかけてさー」
「ちょ、里中。言いふらすなってっ」
堂々と告げ口しようとする里中に、陽介が突っ込みを入れる。今日はバレンタインだというのに、甘い雰囲気は微塵もない。陽介はわざとらしくため息を吐いた。
「ハァ……せっかくバレンタインだってのに、苦い思いバッカしてる気がする」
「苦いチョコレートだってあるよ?」
「そういうことじゃないっスよ、天城サン……」
雪子による天然が炸裂した。バレンタインとは甘い期待に胸をときめかせる素敵な一日ではなかったのか。
「あーあー、俺だって甘い夢ぐらい見たいですよ。文化祭のとき結構活躍してたし、今日くらい期待していいはずッショ?」
「そーゆー心の声言っちゃうのが、あんたの残念なところだよ」
ショックで陽介は開き直った。どうしようもない者に向ける眼差しとともに、千枝は呆れてため息をつく。
そのまま、バレンタインの話題はお流れになり、陽介の投げたネタを話題に朝のSHRまでの空き時間が賑やかに過ぎていく。バレンタインだというのに、チョコレートのような甘い気配は一切なかった。
(けど、これはこれでいつも通りで楽しいよな)
結局、朝に陽介へと話しかけてきた人間はいつもの3人と、男子生徒の一条と長瀬だけだ。陽介にとって、ありふれた、代わりばえのないイツメンである。
けれどそれを、退屈だと陽介は思わなかった。
真っ先に教室入りした瑞月が、ある女生徒に駆け寄った。着席した赤いカーディガンの女生徒──天城雪子へと、彼女は穏やかに声をかける。
「天城さん、おはよう。雪道、無事だったようだね。良かった」
「ありがとう、瑞月ちゃん。それから、おはよう」
「雪子ー。あたしもオハヨー! 雪すごかったんだよー」
瑞月を見上げた雪子は、親しげな微笑を浮かべていた。そんな雪子に「寒かったー。あっためてー」と千枝が抱きつく。学内でも有名な親友コンビを、瑞月は微笑ましく見守っている。
3人の様子に、陽介は人知れず安堵した。雪子と千枝は、陽介の紹介を通じて瑞月と友人関係になった2人だ。人懐っこい千枝はともかく、引っ込み思案で大和撫子な雪子と、我が道を行く一匹狼の瑞月は、当初相性が悪いのではないかと懸念していたのだ。
しかし、陽介の心配は杞憂だったらしい。双方の反応から友人に対する親しさが伺える。
「天城はよーす。里中のついでに俺もあっためてくんね?」
「え、嫌だけど」
「火の玉ドストレートッ! しかも俺だけ挨拶なしかよっ!」
「もう、花村! 朝からオッサンみたいなの禁止。んなだったらストーブの近く行きなよ! それに雪子はあたし専用ぬくぬく人間湯タンポなの」
「人間湯タンポ……くっ……ふふっ」
「花村、カイロが入り用なのか? しばし待っ──」
「ああ、いや瀬名さん。そうじゃないっすフリっすよ。うん。お前の心遣いでジューブン暖かいから」
陽介のボケに、色とりどりの反応が飛び出す。千枝はいつも通りに突っ込み、雪子はなぜか口許を手で押さえてふるえている。瑞月にいたっては陽介の発言を真に受け、コートのポケットに突っ込んだ。彼女を制止しようとする陽介に対し、復活した雪子がくすりと笑った。
「雪のせいで大変かと思ったけど、みんな平気みたいだね。安心した」
「それがさー、雪子。一名ダイジョブじゃなかったのよ。雪道で花村が転びかけてさー」
「ちょ、里中。言いふらすなってっ」
堂々と告げ口しようとする里中に、陽介が突っ込みを入れる。今日はバレンタインだというのに、甘い雰囲気は微塵もない。陽介はわざとらしくため息を吐いた。
「ハァ……せっかくバレンタインだってのに、苦い思いバッカしてる気がする」
「苦いチョコレートだってあるよ?」
「そういうことじゃないっスよ、天城サン……」
雪子による天然が炸裂した。バレンタインとは甘い期待に胸をときめかせる素敵な一日ではなかったのか。
「あーあー、俺だって甘い夢ぐらい見たいですよ。文化祭のとき結構活躍してたし、今日くらい期待していいはずッショ?」
「そーゆー心の声言っちゃうのが、あんたの残念なところだよ」
ショックで陽介は開き直った。どうしようもない者に向ける眼差しとともに、千枝は呆れてため息をつく。
そのまま、バレンタインの話題はお流れになり、陽介の投げたネタを話題に朝のSHRまでの空き時間が賑やかに過ぎていく。バレンタインだというのに、チョコレートのような甘い気配は一切なかった。
(けど、これはこれでいつも通りで楽しいよな)
結局、朝に陽介へと話しかけてきた人間はいつもの3人と、男子生徒の一条と長瀬だけだ。陽介にとって、ありふれた、代わりばえのないイツメンである。
けれどそれを、退屈だと陽介は思わなかった。