協力要請
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興味を置いていた相手から、好意を示されたと早まった陽介は肩を落とす。意気消沈した陽介に、瑞月はふたたび頭を傾ける。
「どうして落胆している。文化祭が終わるまでの仲だというのに」
瑞月の発言に、陽介はバネのように顔を引き上げた。
「は? 瀬名さん、それはどういう……」
「元々、君は自転車の一件を清算したいというから、私の手伝いを引き受けたのだろう? つまり、文化祭の終わりと共に協力関係がなくなるのも、成り行きとしては当然だ」
事務的な口調で話し続ける瑞月からは何の感情も読み取れない。
陽介は段々と瑞月の人となりが掴めてきた。確かに瀬名瑞月は、闇雲に人を撥ねつける冷たい人間ではない。
しかし、積極的に人と仲良くする人間でもない。極めてドライな人間だ。それにしても、極端に人間らしさの感じられない瑞月の口調に、陽介は落胆混じりに呟く。
「なんか瀬名さんってすげークールだよな……。こう、スパッとしてるところとか」
「一人が好きな人種だからな、私は。それに、この関係はきみにとっても益があると思うが。加害者であるきみは文化祭以降、私と関わる必要がなくなるのだから。事故に関しても全く気負う必要がなくなる」
「う……」
痛いところを突かれて、陽介は口ごもった。
事故に関しても全く気負う必要がなくなる────発言の裏を返せば、瑞月は事故で負った責任以上の働きや交流を陽介には求めていないということ。
元はといえば、その責任というのも、陽介の自己満足で言い出したモノだ。陽介と瑞月の関係は、陽介のワガママによって始まっている。本来ならば、はねつけてもいいそれを瑞月は受け入れていた。
つまり、事故の件について陽介を咎めない方針と、陽介は期限付きの関係を覆せる立場ではないのだと、暗に瑞月は示唆している。
今さらだが、情に流されやすい自身とドライな瑞月とはとんでもなく相性が悪いのではないかと、陽介は内心頭を抱えた。
だが、そんな陽介の胸中など瑞月は毛頭気にかけるつもりはないらしい。正面で暗い顔をする陽介などいざ知らず、瑞月はいつの間にか携帯を取り出していた。ポチポチと、キーを淀みなく操作し、彼女は陽介へと携帯を差し向ける。
「花村くん、メールアドレスを交換しないか。私の手伝いにあたって、何か疑問があったら答えられるようにしておきたい」
「あ、あぁ、そうだな。分かった……」
美人とアドレスを交換する機会がめぐって来たというのに、陽介の心は踊らなかった。携帯のフレームはぶつかりそうに近いというのに、陽介と瑞月の心の距離ははるかに遠い。
「それでは、花村くん。文化祭が終わるまでよろしく頼む」
「あ……うん。こっちも、引き受けたからには頑張っから」
「そうしてくれると、私も助かる。よろしく頼む」
陽介の返事を聞き届けた瑞月は、一礼の後、すみやかに借りた席を戻して教室をひとり後にした。後には、陽介だけがぽつねんと教室に残されるばかりだった。
「どうして落胆している。文化祭が終わるまでの仲だというのに」
瑞月の発言に、陽介はバネのように顔を引き上げた。
「は? 瀬名さん、それはどういう……」
「元々、君は自転車の一件を清算したいというから、私の手伝いを引き受けたのだろう? つまり、文化祭の終わりと共に協力関係がなくなるのも、成り行きとしては当然だ」
事務的な口調で話し続ける瑞月からは何の感情も読み取れない。
陽介は段々と瑞月の人となりが掴めてきた。確かに瀬名瑞月は、闇雲に人を撥ねつける冷たい人間ではない。
しかし、積極的に人と仲良くする人間でもない。極めてドライな人間だ。それにしても、極端に人間らしさの感じられない瑞月の口調に、陽介は落胆混じりに呟く。
「なんか瀬名さんってすげークールだよな……。こう、スパッとしてるところとか」
「一人が好きな人種だからな、私は。それに、この関係はきみにとっても益があると思うが。加害者であるきみは文化祭以降、私と関わる必要がなくなるのだから。事故に関しても全く気負う必要がなくなる」
「う……」
痛いところを突かれて、陽介は口ごもった。
事故に関しても全く気負う必要がなくなる────発言の裏を返せば、瑞月は事故で負った責任以上の働きや交流を陽介には求めていないということ。
元はといえば、その責任というのも、陽介の自己満足で言い出したモノだ。陽介と瑞月の関係は、陽介のワガママによって始まっている。本来ならば、はねつけてもいいそれを瑞月は受け入れていた。
つまり、事故の件について陽介を咎めない方針と、陽介は期限付きの関係を覆せる立場ではないのだと、暗に瑞月は示唆している。
今さらだが、情に流されやすい自身とドライな瑞月とはとんでもなく相性が悪いのではないかと、陽介は内心頭を抱えた。
だが、そんな陽介の胸中など瑞月は毛頭気にかけるつもりはないらしい。正面で暗い顔をする陽介などいざ知らず、瑞月はいつの間にか携帯を取り出していた。ポチポチと、キーを淀みなく操作し、彼女は陽介へと携帯を差し向ける。
「花村くん、メールアドレスを交換しないか。私の手伝いにあたって、何か疑問があったら答えられるようにしておきたい」
「あ、あぁ、そうだな。分かった……」
美人とアドレスを交換する機会がめぐって来たというのに、陽介の心は踊らなかった。携帯のフレームはぶつかりそうに近いというのに、陽介と瑞月の心の距離ははるかに遠い。
「それでは、花村くん。文化祭が終わるまでよろしく頼む」
「あ……うん。こっちも、引き受けたからには頑張っから」
「そうしてくれると、私も助かる。よろしく頼む」
陽介の返事を聞き届けた瑞月は、一礼の後、すみやかに借りた席を戻して教室をひとり後にした。後には、陽介だけがぽつねんと教室に残されるばかりだった。