プレゼント
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そこまで考えて、陽介は思い出す。陽介は瑞月に渡したいものがあったのだ。
勢いよく、陽介は顔をあげる。瑞月が目を丸くして陽介に触れていた手を引っ込めた。
陽介はショルダーバッグから布袋を取り出す。贈呈用に赤いリボンがかけられているけれど、ちょうちょ結びは斜めになっていたり、左右の羽が非対称だったりと、どこか歪だ。
「あのさ……。これ、お前にやる」
「……これは?」
「誕プレ」
「たんぷれ……?」
「誕生日プレゼント。お前、12月24日だったんだろ」
ハッピーバースデー。今さらだけど。と陽介が告げると、瑞月がきゅる、と紺碧の瞳を細めた。そうしてまじまじと下手くそなラッピングの誕生日プレゼントを見つめる。それを施した張本人──陽介は、照れくさくて鼻の下をこすった。
「ホントなら、休み明けにでもいいかなー。とか思ってたんだけど……どうせなら、早く渡したくってさ」
瑞月の誕生日を知ったのは、遅れたクリスマスプレゼントを瑞月の家に届けたときだ。瑞月と一緒に陽介を出迎えてくれた佳菜が「クリスマスプレゼント? それとも、おねえちゃんの おたんじょうび プレゼント?」と尋ねて発覚した。
後々メールで送った『んで言わなかったんだよ!?』とのツッコミに、『言うタイミングがなかったし、私は誕生日に執着がない』と言い放った瑞月へと、『もっと執着しろや! お前が生まれて、ちゃんと生きてきたっていう大切な記念日だろ!』と陽介がメール越しで説教かました記憶は新しい。
そして陽介は、瑞月に誕生日プレゼントを用意しようと決意した。伊達にイベント好きのムードメーカーを気取ってはいないのだ。瑞月が祝わないというなら、勝手に陽介が祝うまで。大遅刻? 知るかそんなもん。
瑞月はひきつづき、陽介が渡した誕プレを眺めている。じわじわと陽介のなかに不安が込み上げてきた。やはり不細工な装飾が気に入らなかったのかもしれない。
「……ごめん。ラッピング汚ねぇのは、気にしないで。俺がやったヤツだから」
「花村が?」
「うん……何度かやり直したんだけど、上手くできなくてさ」
かすかに、陽介は頷く。ネットショッピングで品を調達したまではいいが、贈呈用のオプションがなかったため、ラッピングは自力でやるしかなかった。どうしても慣れない作業だったため、仕上がりが歪になってしまったけれど。
「────嬉しい」
「へっ?」
縮こまる陽介とは裏腹に、陽介の手渡した不細工な誕プレを、瑞月は両手で大切に抱えていた。歪な赤のリボンを見つめて、かすかに笑んだ頬はほんのりと桜の色が乗る。
「だって、一生懸命包んでくれたこと、分かるから」
そして、左右非対称のリボンをゆっくりと指先でなぞった。その手つきは、瑞月が陽介に触れる──絶対に傷つけないように触るときと似ていた。
「花村、その……中身を確かめてもいいだろうか」
「あ、うん……、お好きにしていいともー、なんちって」
ただ、中身を開けるだけなのに急に陽介は恥ずかしさが込み上げてきた。瑞月が陽介の誕プレを目にしたときの反応へに、期待と不安がせめぎあって、陽介は柄にもなく両手を組んだ。楽しげな瑞月を直視できずに、陽介は横目で彼女を伺う。
しゅるりと、固く結ばれたリボンが解 かれた。モソモソと瑞月が、布袋を慎重に開く。中身を目にした瑞月が、コチンと固まった。しかも間が悪く、瑞月の横顔は彼女の黒髪に覆われてしまう。
これでは瑞月の表情が分からない。瑞月の反応にそわそわする陽介は、仕方なく瑞月に顔を近づける。
「か……」
「か?」
「かわいい……!」
ふわり、と艶のある黒髪が鼻先を掠めた。清潔感のある石鹸の香りと、柔らかい花に似た甘い匂いが陽介の目の前で香る。
陽介に振り向いて瑞月はニコニコと無垢に微笑む。そうして陽介が贈った──瑠璃色の夜空に、雪と三日月の白が光るフェイクレザーのブックカバーを両手で胸元にぎゅうっと抱きしめる。
「かわいい。嬉しい。とても嬉しい……! 色合いもモチーフも私が好きなものばかりだ」
大切に使う。ありがとう。
混じりけのない感謝と喜びを、瑞月は惜しげもなく陽介に見せてくれる。プレゼントにキャッキャとはしゃぐ様子は、普段の大人びた彼女からは想像できない天真爛漫さで、陽介の心は毛布で包まれたように暖かくなる。
「ははっ、お前ってば、喜びすぎだっての」
つられて陽介も笑う。瑞月の知らない一面を目にする──年始めから細やかな望みが叶った陽介は、何だか満ち足りた気分になった。
勢いよく、陽介は顔をあげる。瑞月が目を丸くして陽介に触れていた手を引っ込めた。
陽介はショルダーバッグから布袋を取り出す。贈呈用に赤いリボンがかけられているけれど、ちょうちょ結びは斜めになっていたり、左右の羽が非対称だったりと、どこか歪だ。
「あのさ……。これ、お前にやる」
「……これは?」
「誕プレ」
「たんぷれ……?」
「誕生日プレゼント。お前、12月24日だったんだろ」
ハッピーバースデー。今さらだけど。と陽介が告げると、瑞月がきゅる、と紺碧の瞳を細めた。そうしてまじまじと下手くそなラッピングの誕生日プレゼントを見つめる。それを施した張本人──陽介は、照れくさくて鼻の下をこすった。
「ホントなら、休み明けにでもいいかなー。とか思ってたんだけど……どうせなら、早く渡したくってさ」
瑞月の誕生日を知ったのは、遅れたクリスマスプレゼントを瑞月の家に届けたときだ。瑞月と一緒に陽介を出迎えてくれた佳菜が「クリスマスプレゼント? それとも、おねえちゃんの おたんじょうび プレゼント?」と尋ねて発覚した。
後々メールで送った『んで言わなかったんだよ!?』とのツッコミに、『言うタイミングがなかったし、私は誕生日に執着がない』と言い放った瑞月へと、『もっと執着しろや! お前が生まれて、ちゃんと生きてきたっていう大切な記念日だろ!』と陽介がメール越しで説教かました記憶は新しい。
そして陽介は、瑞月に誕生日プレゼントを用意しようと決意した。伊達にイベント好きのムードメーカーを気取ってはいないのだ。瑞月が祝わないというなら、勝手に陽介が祝うまで。大遅刻? 知るかそんなもん。
瑞月はひきつづき、陽介が渡した誕プレを眺めている。じわじわと陽介のなかに不安が込み上げてきた。やはり不細工な装飾が気に入らなかったのかもしれない。
「……ごめん。ラッピング汚ねぇのは、気にしないで。俺がやったヤツだから」
「花村が?」
「うん……何度かやり直したんだけど、上手くできなくてさ」
かすかに、陽介は頷く。ネットショッピングで品を調達したまではいいが、贈呈用のオプションがなかったため、ラッピングは自力でやるしかなかった。どうしても慣れない作業だったため、仕上がりが歪になってしまったけれど。
「────嬉しい」
「へっ?」
縮こまる陽介とは裏腹に、陽介の手渡した不細工な誕プレを、瑞月は両手で大切に抱えていた。歪な赤のリボンを見つめて、かすかに笑んだ頬はほんのりと桜の色が乗る。
「だって、一生懸命包んでくれたこと、分かるから」
そして、左右非対称のリボンをゆっくりと指先でなぞった。その手つきは、瑞月が陽介に触れる──絶対に傷つけないように触るときと似ていた。
「花村、その……中身を確かめてもいいだろうか」
「あ、うん……、お好きにしていいともー、なんちって」
ただ、中身を開けるだけなのに急に陽介は恥ずかしさが込み上げてきた。瑞月が陽介の誕プレを目にしたときの反応へに、期待と不安がせめぎあって、陽介は柄にもなく両手を組んだ。楽しげな瑞月を直視できずに、陽介は横目で彼女を伺う。
しゅるりと、固く結ばれたリボンが
これでは瑞月の表情が分からない。瑞月の反応にそわそわする陽介は、仕方なく瑞月に顔を近づける。
「か……」
「か?」
「かわいい……!」
ふわり、と艶のある黒髪が鼻先を掠めた。清潔感のある石鹸の香りと、柔らかい花に似た甘い匂いが陽介の目の前で香る。
陽介に振り向いて瑞月はニコニコと無垢に微笑む。そうして陽介が贈った──瑠璃色の夜空に、雪と三日月の白が光るフェイクレザーのブックカバーを両手で胸元にぎゅうっと抱きしめる。
「かわいい。嬉しい。とても嬉しい……! 色合いもモチーフも私が好きなものばかりだ」
大切に使う。ありがとう。
混じりけのない感謝と喜びを、瑞月は惜しげもなく陽介に見せてくれる。プレゼントにキャッキャとはしゃぐ様子は、普段の大人びた彼女からは想像できない天真爛漫さで、陽介の心は毛布で包まれたように暖かくなる。
「ははっ、お前ってば、喜びすぎだっての」
つられて陽介も笑う。瑞月の知らない一面を目にする──年始めから細やかな望みが叶った陽介は、何だか満ち足りた気分になった。