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「あ゛ーーーーっ、身体もうクッタクタだぜー。正月休み明けの身体には中々ハードだったわー」
「そのわりには、最後の方は佳菜と一緒にはしゃいでいたではないか? 『くらえー!! 必殺の──』」
「ダーーッ!! だってあんな楽しかったら子供心に帰っちまうだろか。男っていうのは何歳になっても心のなかに男の子がいるんだよ」
「ふふっ。まぁ私も、にぎやかで楽しかったがな。佳菜もずいぶんと楽しそうだった」
陽介と瑞月は、施設内の休憩スペースにいた。ほぼ無人の体育館同様、利用者は陽介たち以外にいない。3人のうち、陽介と瑞月は備えつけのソファーに腰かけている。佳菜はというと、遊び疲れてしまっていた。いまは、瑞月の膝の上で眠っている。すやすやと寝息を立てるさまは安らかだ。
ゆえに陽介と瑞月は、ないしょ話でもするみたいにボリュームを絞って話していた。秘密の話をしているみたいで、とても楽しい。
瑞月は、眠る彼女の頭に流れる髪の一本一本をとかすような手つきで撫でていた。
陽介はというと、佳菜が寒くないようにジャケットを毛布がわりに貸し出している。運動によって生じた熱が、身体に心地よく巡っていたから上着が必要なくなったのだ。四肢を伸びやかに動かしたからか、特定の筋肉を酷使するアルバイト後とは違って全身に血が巡るような充足感が強い。
「にぎやかといえば……きみから貰ったボードゲームも中々好評だ。家に籠りきりだった年末年始も、リビングでこたつを囲んで遊んでいた」
「えっ、えぇっ!?」
瞬間、瑞月が「しーっ」と親指を己の唇に立てた。
「花村、声が大きい……!」
「あ、ワリ!」
驚きが飛び出した口を両手で塞ぐ。2人しておそるおそる横になる佳菜を覗きこむと、静かに寝息を立てていた。かすかに身じろいだだけで、いまだ眠りのなかだ。ほーっと、陽介と瑞月は息を着く。
「ふぅ……、起きていない。セーフだ」
「そ、よかった。そうなりゃいいと思ってたけど、んな風に瀬名ん家 に受け入れられるとは思ってなかったから……」
陽介がクリスマスにプレゼントしたもの──それは国民的な猫型ロボットのボードゲームだ。日本旅行をモチーフにした双六に似たゲームで、日本の地名や名物の勉強にもなるから、妹の佳菜にも、家族とあまり話そうとしない瑞月にもピッタリだと思って用意した。
照れくささに陽介は、頭を掻く。もともと瑞月を喜ばせたくて用意したものではあるが、彼女の家族に楽しんでもらえたのが想像以上に嬉しい。瑞月は陽介に向かって、目端を柔らかくほどいている。澄んだ紺碧の瞳は偽りなく、感謝と喜びの色を映している。
佳菜を撫でながら、瑞月はゆっくりと噛み締めるように言葉を紡ぐ。
「佳菜がね、最近旅のバラエティ番組を見ると、『ここの名物ってアレだよね!』なーんてはしゃぎながら言うんだ。お母さんやお父さんは『この県にこんなものがあったのか』って義務教育のおさらいになってるみたいで面白いみたいだ」
「……思った以上に大人気じゃん」
「そうだな。ジュネスの委託サンタさん大成功だったとも」
瑞月は一度、言葉を切る。それから、秘密でも打ち明けるように小さく告げた。
「かくいう私も……楽しかった」
「え……」
ためらいがちに告げた瑞月に、陽介は問い返す。すると、目線を泳がせてから瑞月は躊躇いがちに続けた。
「家族でボードゲームをしている最中に、ゲームのこともそうだけど……、いろいろ話が出来たんだ。文化祭のこととか、学校で友達ができたこととか、沖奈に遊びにいったこととか、そうしたら、お母さんとお父さん、すごく喜んでくれて……」
すうっと、瑞月は深呼吸をする。陽介は黙ってそれを聞いている。一生懸命話す瑞月に、水を注したくなかったのだ。だから静かにする。瑞月が陽介の話を辛抱強く聞いてくれるように。
「家族が、私の話であんな喜んでくれるとは思わなくて、だから……そのことが分かって、嬉しくて」
「うん。そっか……」
自然とこぼれた合いの手は、あたたかさが滲んでいた。瑞月が自分のプレゼントをきっかけに家族と一歩歩み寄れたことが、我がことのように陽介は嬉しい。喜びを噛み締める陽介に向かって、瑞月はにこりと笑う。
「だから──ありがとう、花村」
「そ──」
そんなことではないと言おうとして、陽介は口をつぐむ。喜びを素直に表す彼女は、やっぱりどこかあどけなくて──幼子のように可愛らしい。
照れ隠しであろうとも、彼女の言葉や笑顔の意味を否定するのは忍びない気がした。瑞月の笑顔にドギマギしながらも、せりあがった否定の言葉を取り消す。カァッと熱くなった目元を陽介はとっさに手のひらで隠した。
「そういう風に……俺がプレゼントしたヤツ、大事に使ってくれると、嬉しいなって」
身も蓋もないが、クリスマスに予告もなくプレゼントをくれた瑞月に対して、勢いで返そうと決めてしまったプレゼントだった。ただ、親友の瑞月に対して場当たりの対処はしたくない。ゆえに年末の短い期間で、なんとか瑞月が喜びそうなものを選んで、贈った。
そして、今までの人生で、一番ワクワクドキドキしながら贈ったプレゼントでもある。それが陽介の想像した──いや、それ以上に相手を喜ばせている事実が、こそばゆくて、嬉しい。ムズムズする口許を陽介は覆う。
「って、俺、なに言ってんだろな。『大事にしてくれー』なんて────」
重いよな。そう言おうとしたとき。
「別におかしなことではない。自分の贈ったものが相手の役に立っていて喜ぶのは」
「え……?」
すると、瑞月は陽介の手をじっと見つめる。それから、あたたかな慈しみを浮かべて微笑んだ。
「手袋、使ってくれているのだな。手の状態も大分良くなったようだ」
きれいだな。と瑞月は呟く。陽介は「あぁ……」と自分の手に注目する。クリスマス前、さかむけや荒れが目立っていた指先は、滑らかな皮膚に覆われている。外見に気をつかう性分から手荒れはどうにかしたかったのだが、バイトで負担をかける部位でもあるから、改善は半ば諦めていたのだ。
瑞月の見守るような眼差しに、とくんと胸があたたかくなる。それをなんとか抑えて、陽介はVサインを形づくった。
「バッチシ治ってんぜ。しっかし、手袋とはスゲーな。手のモデルでもできるかもってくらい、ツルツル」
「畑仕事や料理で、私も手荒れに悩んだ経験はあるのでな。知恵を貸したまでだ」
「なんか、お前そーいうのに詳しいよな。ライフハックつか、おばあちゃんの知恵? みたいな?」
「誉め言葉の触れ幅が広いな花村。グローバルかと思ったら一気に懐かしい感じになったではないか」
軽口をたたきながらも、瑞月は優しい瞳のまま、陽介の手元を見つめている。そうして、不意に佳菜を撫でているのとは反対の手を伸ばした。瑞月の手のひらはそのまま──ぽすりと軽く陽介の頭に置かれる。
「あ、あの瑞月……サン……?」
「いつも、花村は頑張っているな。年末年始のバイトも、今日も。誰かを喜ばせるために」
──そういうところを私はすごいと思っているよ。
そのまま、羽根突きのせいで乱れた陽介の髪を丁寧に梳いていく。陽介は戸惑う。他人に髪を触られている事態ではなく、瑞月を拒まない陽介自身に。他人に触られているというのに、違和感や心地の悪さはない。スキンシップに敏感な陽介には珍しいことだった。
(そういえば、コイツに触られるの、あんま悪い気しないんだよな……)
文化祭のとき、同性の長瀬に触られても即座に腕を払ったのに。瑞月にはなぜか──自分を助けてくれた手だからか、彼女の人となりをわかっているからか──嫌悪はなかった。むしろ、決して人を傷つけようとしない彼女の手に、陽介は安心さえ覚える。
「……それで、俺はなんで瀬名に撫でられてるんスかね」
「すまない。どうしてか、こうしたくなってしまったんだ」
「……なんだよソレ、ガキみてぇ」
憎まれ口をたたきながらも、陽介は瑞月を拒まなかった。彼女の手つきが、そうした目下のものに向ける仕草ではなかったからだ。髪に触れるにしても形を崩さないよう、繊細な美術品にでも触れるような、慎重な手つき。
なでなでと、ボサボサに跳ねた陽介の髪を整えながら、瑞月はふわりとやわく笑う。
「だから、頑張っている花村の役に立てたのなら、私は嬉しい」
「くすぐってぇ……」
瑞月が陽介に向ける言葉も、仕草も、その根底にある親愛も。陽介を守ってくれているようで、きみは大切だと伝えてくれているようで。さらさらと瑞月に髪を梳かれながら、陽介は瑞月に憧憬を抱いた。親愛を当たり前のように、まっすぐに伝えられる瑞月に。
(俺も……)
守り、力になれる、与える存在でありたい。と思う。親友であり、陽介を大切にしてくれる瑞月に対して。
(といっても、俺自身こいつより弱かったり、課題、山積みなんだけどな……)
小西先輩への恋心に、『ジュネスの店長の息子』という立場から降りかかる問題の数々。高校2年生だから進路だって考え始めないといけないかもしれない。
(でも、どんな未来を辿るとしても────)
瑞月の、そばにいたいと思う。友達としてそばにいて──一緒にいて、まだ知ることのない瑞月の様々な一面を目にできたのならいい。凪いだ仮面とは裏腹に、優しい心を宿した瑞月の傍は心地がいいから。
「そのわりには、最後の方は佳菜と一緒にはしゃいでいたではないか? 『くらえー!! 必殺の──』」
「ダーーッ!! だってあんな楽しかったら子供心に帰っちまうだろか。男っていうのは何歳になっても心のなかに男の子がいるんだよ」
「ふふっ。まぁ私も、にぎやかで楽しかったがな。佳菜もずいぶんと楽しそうだった」
陽介と瑞月は、施設内の休憩スペースにいた。ほぼ無人の体育館同様、利用者は陽介たち以外にいない。3人のうち、陽介と瑞月は備えつけのソファーに腰かけている。佳菜はというと、遊び疲れてしまっていた。いまは、瑞月の膝の上で眠っている。すやすやと寝息を立てるさまは安らかだ。
ゆえに陽介と瑞月は、ないしょ話でもするみたいにボリュームを絞って話していた。秘密の話をしているみたいで、とても楽しい。
瑞月は、眠る彼女の頭に流れる髪の一本一本をとかすような手つきで撫でていた。
陽介はというと、佳菜が寒くないようにジャケットを毛布がわりに貸し出している。運動によって生じた熱が、身体に心地よく巡っていたから上着が必要なくなったのだ。四肢を伸びやかに動かしたからか、特定の筋肉を酷使するアルバイト後とは違って全身に血が巡るような充足感が強い。
「にぎやかといえば……きみから貰ったボードゲームも中々好評だ。家に籠りきりだった年末年始も、リビングでこたつを囲んで遊んでいた」
「えっ、えぇっ!?」
瞬間、瑞月が「しーっ」と親指を己の唇に立てた。
「花村、声が大きい……!」
「あ、ワリ!」
驚きが飛び出した口を両手で塞ぐ。2人しておそるおそる横になる佳菜を覗きこむと、静かに寝息を立てていた。かすかに身じろいだだけで、いまだ眠りのなかだ。ほーっと、陽介と瑞月は息を着く。
「ふぅ……、起きていない。セーフだ」
「そ、よかった。そうなりゃいいと思ってたけど、んな風に瀬名ん
陽介がクリスマスにプレゼントしたもの──それは国民的な猫型ロボットのボードゲームだ。日本旅行をモチーフにした双六に似たゲームで、日本の地名や名物の勉強にもなるから、妹の佳菜にも、家族とあまり話そうとしない瑞月にもピッタリだと思って用意した。
照れくささに陽介は、頭を掻く。もともと瑞月を喜ばせたくて用意したものではあるが、彼女の家族に楽しんでもらえたのが想像以上に嬉しい。瑞月は陽介に向かって、目端を柔らかくほどいている。澄んだ紺碧の瞳は偽りなく、感謝と喜びの色を映している。
佳菜を撫でながら、瑞月はゆっくりと噛み締めるように言葉を紡ぐ。
「佳菜がね、最近旅のバラエティ番組を見ると、『ここの名物ってアレだよね!』なーんてはしゃぎながら言うんだ。お母さんやお父さんは『この県にこんなものがあったのか』って義務教育のおさらいになってるみたいで面白いみたいだ」
「……思った以上に大人気じゃん」
「そうだな。ジュネスの委託サンタさん大成功だったとも」
瑞月は一度、言葉を切る。それから、秘密でも打ち明けるように小さく告げた。
「かくいう私も……楽しかった」
「え……」
ためらいがちに告げた瑞月に、陽介は問い返す。すると、目線を泳がせてから瑞月は躊躇いがちに続けた。
「家族でボードゲームをしている最中に、ゲームのこともそうだけど……、いろいろ話が出来たんだ。文化祭のこととか、学校で友達ができたこととか、沖奈に遊びにいったこととか、そうしたら、お母さんとお父さん、すごく喜んでくれて……」
すうっと、瑞月は深呼吸をする。陽介は黙ってそれを聞いている。一生懸命話す瑞月に、水を注したくなかったのだ。だから静かにする。瑞月が陽介の話を辛抱強く聞いてくれるように。
「家族が、私の話であんな喜んでくれるとは思わなくて、だから……そのことが分かって、嬉しくて」
「うん。そっか……」
自然とこぼれた合いの手は、あたたかさが滲んでいた。瑞月が自分のプレゼントをきっかけに家族と一歩歩み寄れたことが、我がことのように陽介は嬉しい。喜びを噛み締める陽介に向かって、瑞月はにこりと笑う。
「だから──ありがとう、花村」
「そ──」
そんなことではないと言おうとして、陽介は口をつぐむ。喜びを素直に表す彼女は、やっぱりどこかあどけなくて──幼子のように可愛らしい。
照れ隠しであろうとも、彼女の言葉や笑顔の意味を否定するのは忍びない気がした。瑞月の笑顔にドギマギしながらも、せりあがった否定の言葉を取り消す。カァッと熱くなった目元を陽介はとっさに手のひらで隠した。
「そういう風に……俺がプレゼントしたヤツ、大事に使ってくれると、嬉しいなって」
身も蓋もないが、クリスマスに予告もなくプレゼントをくれた瑞月に対して、勢いで返そうと決めてしまったプレゼントだった。ただ、親友の瑞月に対して場当たりの対処はしたくない。ゆえに年末の短い期間で、なんとか瑞月が喜びそうなものを選んで、贈った。
そして、今までの人生で、一番ワクワクドキドキしながら贈ったプレゼントでもある。それが陽介の想像した──いや、それ以上に相手を喜ばせている事実が、こそばゆくて、嬉しい。ムズムズする口許を陽介は覆う。
「って、俺、なに言ってんだろな。『大事にしてくれー』なんて────」
重いよな。そう言おうとしたとき。
「別におかしなことではない。自分の贈ったものが相手の役に立っていて喜ぶのは」
「え……?」
すると、瑞月は陽介の手をじっと見つめる。それから、あたたかな慈しみを浮かべて微笑んだ。
「手袋、使ってくれているのだな。手の状態も大分良くなったようだ」
きれいだな。と瑞月は呟く。陽介は「あぁ……」と自分の手に注目する。クリスマス前、さかむけや荒れが目立っていた指先は、滑らかな皮膚に覆われている。外見に気をつかう性分から手荒れはどうにかしたかったのだが、バイトで負担をかける部位でもあるから、改善は半ば諦めていたのだ。
瑞月の見守るような眼差しに、とくんと胸があたたかくなる。それをなんとか抑えて、陽介はVサインを形づくった。
「バッチシ治ってんぜ。しっかし、手袋とはスゲーな。手のモデルでもできるかもってくらい、ツルツル」
「畑仕事や料理で、私も手荒れに悩んだ経験はあるのでな。知恵を貸したまでだ」
「なんか、お前そーいうのに詳しいよな。ライフハックつか、おばあちゃんの知恵? みたいな?」
「誉め言葉の触れ幅が広いな花村。グローバルかと思ったら一気に懐かしい感じになったではないか」
軽口をたたきながらも、瑞月は優しい瞳のまま、陽介の手元を見つめている。そうして、不意に佳菜を撫でているのとは反対の手を伸ばした。瑞月の手のひらはそのまま──ぽすりと軽く陽介の頭に置かれる。
「あ、あの瑞月……サン……?」
「いつも、花村は頑張っているな。年末年始のバイトも、今日も。誰かを喜ばせるために」
──そういうところを私はすごいと思っているよ。
そのまま、羽根突きのせいで乱れた陽介の髪を丁寧に梳いていく。陽介は戸惑う。他人に髪を触られている事態ではなく、瑞月を拒まない陽介自身に。他人に触られているというのに、違和感や心地の悪さはない。スキンシップに敏感な陽介には珍しいことだった。
(そういえば、コイツに触られるの、あんま悪い気しないんだよな……)
文化祭のとき、同性の長瀬に触られても即座に腕を払ったのに。瑞月にはなぜか──自分を助けてくれた手だからか、彼女の人となりをわかっているからか──嫌悪はなかった。むしろ、決して人を傷つけようとしない彼女の手に、陽介は安心さえ覚える。
「……それで、俺はなんで瀬名に撫でられてるんスかね」
「すまない。どうしてか、こうしたくなってしまったんだ」
「……なんだよソレ、ガキみてぇ」
憎まれ口をたたきながらも、陽介は瑞月を拒まなかった。彼女の手つきが、そうした目下のものに向ける仕草ではなかったからだ。髪に触れるにしても形を崩さないよう、繊細な美術品にでも触れるような、慎重な手つき。
なでなでと、ボサボサに跳ねた陽介の髪を整えながら、瑞月はふわりとやわく笑う。
「だから、頑張っている花村の役に立てたのなら、私は嬉しい」
「くすぐってぇ……」
瑞月が陽介に向ける言葉も、仕草も、その根底にある親愛も。陽介を守ってくれているようで、きみは大切だと伝えてくれているようで。さらさらと瑞月に髪を梳かれながら、陽介は瑞月に憧憬を抱いた。親愛を当たり前のように、まっすぐに伝えられる瑞月に。
(俺も……)
守り、力になれる、与える存在でありたい。と思う。親友であり、陽介を大切にしてくれる瑞月に対して。
(といっても、俺自身こいつより弱かったり、課題、山積みなんだけどな……)
小西先輩への恋心に、『ジュネスの店長の息子』という立場から降りかかる問題の数々。高校2年生だから進路だって考え始めないといけないかもしれない。
(でも、どんな未来を辿るとしても────)
瑞月の、そばにいたいと思う。友達としてそばにいて──一緒にいて、まだ知ることのない瑞月の様々な一面を目にできたのならいい。凪いだ仮面とは裏腹に、優しい心を宿した瑞月の傍は心地がいいから。