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「佳菜ちゃん、相変わらず元気だなぁ」
陽介はため息混じりに関心した。彼の目の前では、水を得た魚か、籠を飛び出した鳥のように、佳菜が広い体育館をぴょんぴょん走り回っている。幼子特有、底なしのバイタリティーである。
「年末年始は雪のせいで家に籠りっきりだったからな。雪の中では長く遊べず、嬉しさが爆発したんだろう」
隣にいた瑞月が応えた。冷静な分析はさすが姉としての観察眼という他ない。
「で、総合運動公園 に来たっつーことか。たしかにこんな広くて屋根のあるトコなら自由に走り回れるわな」
「だろう。わんぱくなお姫さまも大満足だ。ついでに運動不足の私たちにも良いと思ってな」
「おーいー、誰が運動不足だって? バイトでは結構身体使ってからな」
「ダラダラテレビを見ていると言ったのはきみじゃないか。それにバイトと運動で使う筋肉は別物だが?」
そういって、瑞月は室内を飛び回る佳菜へと、再び目を向けた。陽介もつられて佳菜に注目する。元気ハツラツと、佳菜は身体をいっぱいに動かしてはしゃいでいた。ただ、見ている人間にも元気を振り撒くようなイキイキとした跳びはねっぷりだ。
ダラダラと家に籠ってたら見れなかったなと、陽介は外に出る誘いを持ちかけてくれた瑞月にしみじみ感謝した。
陽介たちは現在、稲羽市の総合運動公園に来ていた。野球場やプール、剣道場に、柔道場、テニスコート、トレーニング機器などを取り揃えている公的な施設だ。瑞月たちの家から近く、身分証を提示すれば稲羽市民は低額(一部施設は無料)で利用できるとは瑞月の談。
そのうちの、備え付けの施設のひとつ──体育館に陽介たちはいる。
***
『よかったら、一緒に遊ばないか?』──そういって、瑞月は陽介を遊びに誘った。
瑞月いわく、腕白な佳菜が外に出て遊びたいとねだり始めたらしい。瑞月としても運動不足で外に出かけたかったという。
とはいえ、外で遊ぶわけにはいかない。冷たく足をとる雪が所狭しと広がっていて危険だからだ。ならばと思い付いた遊び場がココ──総合運動公園だった。
そして、なぜ陽介が誘われたのかというと──『その……年末にもらったボードゲームについて、話したくてな』とのこと。陽介が瑞月に贈った遅めのクリスマスプレゼントのことだろう。妹や家族を大事にする瑞月に向けて、ファミリー層に人気のボードゲームを贈ったのだ。佳菜もお礼を言いたがっていたというから、ちょうど良い機会だと思ったらしい。
さいわい、フリーの陽介は2つ返事で応じた。退屈だったなか、久しぶりに友達の瑞月や、妹の佳菜に会えるのも楽しみだが──それだけではなかった。
陽介は、瑞月に渡したいものがあったのだ。
***
「にしても、んなジムみたいなトコあるなんてな。知らんかったわ」
「稲羽市民はあまり、運動に熱心じゃないからね。利用者も少ないということだ」
「へぇ。だから空いてんのか。年始っつーコトもあるけど」
陽介は周りを見渡す。体育館は、気持ちがいいほどガランドウだった。陽介たち以外の利用者といえば、中年の男女4人組がいるくらいだ。バレーボールの練習中なのか、レシーブやサーブの練習に夢中でこちらには気がついていない。
「そうだ。空いているから気兼ねなく身体を動かせるということよな」
「おねえちゃん、陽介おにいちゃん。 どうしたの? あそばないの?」
会話を続けていた陽介たちの下に、佳菜が戻ってくる。子供特有のまろい頬をリンゴみたいに染めて、彼女は不思議そうにこちらを見ていた。瑞月は膝を折り、彼女と向き合う。視線を合わせて安心させるためだろう。
「いや、お兄ちゃんに、ここがどんなところか説明していただけだよ。花村お兄ちゃんはここに来るのが初めてなんだって」
「……おはなし もうちょっとつづく?」
「イヤイヤ、もう聞き終わったから、いつでも佳菜ちゃんと遊べるよー」
「ほんと!?」
陽介の答えに、佳菜がパッと瞳を輝かせる。するとすぐさま、佳菜は2人の間をすり抜けて──瑞月が持ってきたトートバックめがけて突撃した。ごそごそとその中を漁ると、佳菜は持ち手がついた木の板──羽子板だ──を取り出し、満面の笑みを浮かべた。
「じゃあね、佳菜『はねつき』やりたい! コンコンって、うちかえすやつ! 陽介おにいちゃん、いっしょにあそぼ!」
「おう! ココ来るまでずっと遊びたいつってたもんな。めいっぱい楽しもうぜ!」
威勢のいい陽介の呼びかけに、佳菜もまた「うん!」と元気に応じる。正直、羽根突きは初めてだが、勢いでどうにかなるだろう。そう自分に言い聞かせて、駆け寄ってくる佳菜から羽子板を受け取った。すると「おーい」と瑞月が腰に手を当てて、真面目に告げた。
「最初は準備運動だろーう、2人ともー」
陽介にとって、何年かぶりのラジオ体操となった。
陽介はため息混じりに関心した。彼の目の前では、水を得た魚か、籠を飛び出した鳥のように、佳菜が広い体育館をぴょんぴょん走り回っている。幼子特有、底なしのバイタリティーである。
「年末年始は雪のせいで家に籠りっきりだったからな。雪の中では長く遊べず、嬉しさが爆発したんだろう」
隣にいた瑞月が応えた。冷静な分析はさすが姉としての観察眼という他ない。
「で、
「だろう。わんぱくなお姫さまも大満足だ。ついでに運動不足の私たちにも良いと思ってな」
「おーいー、誰が運動不足だって? バイトでは結構身体使ってからな」
「ダラダラテレビを見ていると言ったのはきみじゃないか。それにバイトと運動で使う筋肉は別物だが?」
そういって、瑞月は室内を飛び回る佳菜へと、再び目を向けた。陽介もつられて佳菜に注目する。元気ハツラツと、佳菜は身体をいっぱいに動かしてはしゃいでいた。ただ、見ている人間にも元気を振り撒くようなイキイキとした跳びはねっぷりだ。
ダラダラと家に籠ってたら見れなかったなと、陽介は外に出る誘いを持ちかけてくれた瑞月にしみじみ感謝した。
陽介たちは現在、稲羽市の総合運動公園に来ていた。野球場やプール、剣道場に、柔道場、テニスコート、トレーニング機器などを取り揃えている公的な施設だ。瑞月たちの家から近く、身分証を提示すれば稲羽市民は低額(一部施設は無料)で利用できるとは瑞月の談。
そのうちの、備え付けの施設のひとつ──体育館に陽介たちはいる。
***
『よかったら、一緒に遊ばないか?』──そういって、瑞月は陽介を遊びに誘った。
瑞月いわく、腕白な佳菜が外に出て遊びたいとねだり始めたらしい。瑞月としても運動不足で外に出かけたかったという。
とはいえ、外で遊ぶわけにはいかない。冷たく足をとる雪が所狭しと広がっていて危険だからだ。ならばと思い付いた遊び場がココ──総合運動公園だった。
そして、なぜ陽介が誘われたのかというと──『その……年末にもらったボードゲームについて、話したくてな』とのこと。陽介が瑞月に贈った遅めのクリスマスプレゼントのことだろう。妹や家族を大事にする瑞月に向けて、ファミリー層に人気のボードゲームを贈ったのだ。佳菜もお礼を言いたがっていたというから、ちょうど良い機会だと思ったらしい。
さいわい、フリーの陽介は2つ返事で応じた。退屈だったなか、久しぶりに友達の瑞月や、妹の佳菜に会えるのも楽しみだが──それだけではなかった。
陽介は、瑞月に渡したいものがあったのだ。
***
「にしても、んなジムみたいなトコあるなんてな。知らんかったわ」
「稲羽市民はあまり、運動に熱心じゃないからね。利用者も少ないということだ」
「へぇ。だから空いてんのか。年始っつーコトもあるけど」
陽介は周りを見渡す。体育館は、気持ちがいいほどガランドウだった。陽介たち以外の利用者といえば、中年の男女4人組がいるくらいだ。バレーボールの練習中なのか、レシーブやサーブの練習に夢中でこちらには気がついていない。
「そうだ。空いているから気兼ねなく身体を動かせるということよな」
「おねえちゃん、陽介おにいちゃん。 どうしたの? あそばないの?」
会話を続けていた陽介たちの下に、佳菜が戻ってくる。子供特有のまろい頬をリンゴみたいに染めて、彼女は不思議そうにこちらを見ていた。瑞月は膝を折り、彼女と向き合う。視線を合わせて安心させるためだろう。
「いや、お兄ちゃんに、ここがどんなところか説明していただけだよ。花村お兄ちゃんはここに来るのが初めてなんだって」
「……おはなし もうちょっとつづく?」
「イヤイヤ、もう聞き終わったから、いつでも佳菜ちゃんと遊べるよー」
「ほんと!?」
陽介の答えに、佳菜がパッと瞳を輝かせる。するとすぐさま、佳菜は2人の間をすり抜けて──瑞月が持ってきたトートバックめがけて突撃した。ごそごそとその中を漁ると、佳菜は持ち手がついた木の板──羽子板だ──を取り出し、満面の笑みを浮かべた。
「じゃあね、佳菜『はねつき』やりたい! コンコンって、うちかえすやつ! 陽介おにいちゃん、いっしょにあそぼ!」
「おう! ココ来るまでずっと遊びたいつってたもんな。めいっぱい楽しもうぜ!」
威勢のいい陽介の呼びかけに、佳菜もまた「うん!」と元気に応じる。正直、羽根突きは初めてだが、勢いでどうにかなるだろう。そう自分に言い聞かせて、駆け寄ってくる佳菜から羽子板を受け取った。すると「おーい」と瑞月が腰に手を当てて、真面目に告げた。
「最初は準備運動だろーう、2人ともー」
陽介にとって、何年かぶりのラジオ体操となった。