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「くっそ、覚えとけよっ。だっだら年末にジュネスの委託サンタがお前に逆襲してやるっ!」
「その言い方だと仇討ちになってしまうが花村。それに、私にサンタさんは来ないよ。もう齢 も齢 だ」
意味深な瑞月の言葉に、陽介は口を開きかけた。しかし、午後の授業を知らせる予鈴が鳴る。弾かれたように2人は勢いよく階段を駆け下りていく。
だが突然、陽介が階段に躓いた。
「ダッ!?」
「──ッ!」
間一髪、瑞月がとっさに腕を掴んだ。転倒はせず、無事に陽介は立て直す。
瀬名瑞月にとって、大切な友人だ。ちょっとドジだけれど、善良で優しい。ずっと、そばにいられたのなら、瑞月は柄にもなく願う。だが──
──お前のような罪人が、誰かと寄り添いあうなんて、許されると思っているの?
──一瞬、陽介の腕を掴んだ拍子に、瑞月の内側から呪詛が響く。低く地を這う幼い声に弾かれて、陽介から性急に手を離した。
(私は”忌み子”だ)
瑞月はぐっと唇を引き結ぶ。誰に言えるはずもない──だが、ひとりで抱えるには重すぎる、忌まわしい過去の叫びを封じ込める。
(本当は、君と並び立つ資格なんてないのに)
瑞月はかつて罪を犯した。八十稲羽に来るよりも昔に。
幾多の罪を重ねた誰かたちの、歪な罪を背負わざる得ない、生まれながらの”忌み子”だった。それにふさわしい罪人に──×××になった。
(────罪人は、檻の中で孤独に罪を悔い改めるという)
だから、罪人である瑞月も、本当は誰の手も取らずにひとりで生きねばならなくて、
善良な陽介の隣にいるなんて、到底、許されないことだった。
「なぁ、瀬名」
瑞月は振り向く。あまりにも優しい声で、陽介が瑞月を呼んだから。声にたがわず、優しい──まるで春の日差しを思わせる無垢な微笑を、陽介は瑞月へと向けた。
「やっぱり、サンタは来るよ。お前のところにさ。別に年とかそういうの関係なくて────頑張った人たちにご褒美を堂々と振り撒くサンタがいても、俺はいいと思う」
────お前みたいに、さ。
瑞月が贈ったプレゼントを、大事そうに陽介は抱え直す。瑞月が彼に贈ったのは何の変哲もない手袋だ。
それなのに、繊細な装飾が施されたブローチでも入っているような手つきで、陽介は紙袋を丁重に抱きしめる。
心から嬉しそうな陽介の笑顔は、紛れもなく瑞月がもたらしたものだ。
その事実に、瑞月の心がただ震える。
(────私のすべては”償い”のために)
瑞月は、一人で死ぬと決めている。
みずからの、かつて背負った罪ゆえに。
葬送の花もなく、冥福への旅路に臨 むための旅装束もなく、何もない棺のなかに、罪への祈りと”忌み子”である身一つを納めて、暗い土くれのなかに孤独に葬られようと。
(────けれど)
瑞月がそばにいて、笑ってくれる人がいる。あなたがいて嬉しいのだと。
罪人である瑞月にとって、それはたしかに”救い”だった。
きっとと、瑞月は思う。あまりにも寂しい棺のなかに、宝石のような輝きを持った陽介との思い出を抱いて逝けるのは、きっと素敵だと。
いつか別れるその日まで、瑞月のもの寂しい『平穏』のなかに、優しい陽介がいる。
それは、罪人である瑞月にとって何よりも善いことなのだろう。
──もとより、罪を背負ったこの身は、孤独に死ぬと定められている。どうせ終わる時間なのだから、暗闇の中のほのかな灯 を見つめるくらいは、許されるでしょう?
瑞月の問いかけに、幼い呪詛は沈黙する。もう何も聞こえない。陽介と瑞月は教室に戻って、移動先の教室へと一目散に駆けていった。同タイミングで転がり込んだ瑞月と陽介を、クラスメイトは物珍しそうに眺めていた。
────その後の年末。季節外れのサンタ帽を被った男の子が、瀬名家にクリスマスプレゼントを届けにきたという。
「その言い方だと仇討ちになってしまうが花村。それに、私にサンタさんは来ないよ。もう
意味深な瑞月の言葉に、陽介は口を開きかけた。しかし、午後の授業を知らせる予鈴が鳴る。弾かれたように2人は勢いよく階段を駆け下りていく。
だが突然、陽介が階段に躓いた。
「ダッ!?」
「──ッ!」
間一髪、瑞月がとっさに腕を掴んだ。転倒はせず、無事に陽介は立て直す。
瀬名瑞月にとって、大切な友人だ。ちょっとドジだけれど、善良で優しい。ずっと、そばにいられたのなら、瑞月は柄にもなく願う。だが──
──お前のような罪人が、誰かと寄り添いあうなんて、許されると思っているの?
──一瞬、陽介の腕を掴んだ拍子に、瑞月の内側から呪詛が響く。低く地を這う幼い声に弾かれて、陽介から性急に手を離した。
(私は”忌み子”だ)
瑞月はぐっと唇を引き結ぶ。誰に言えるはずもない──だが、ひとりで抱えるには重すぎる、忌まわしい過去の叫びを封じ込める。
(本当は、君と並び立つ資格なんてないのに)
瑞月はかつて罪を犯した。八十稲羽に来るよりも昔に。
幾多の罪を重ねた誰かたちの、歪な罪を背負わざる得ない、生まれながらの”忌み子”だった。それにふさわしい罪人に──×××になった。
(────罪人は、檻の中で孤独に罪を悔い改めるという)
だから、罪人である瑞月も、本当は誰の手も取らずにひとりで生きねばならなくて、
善良な陽介の隣にいるなんて、到底、許されないことだった。
「なぁ、瀬名」
瑞月は振り向く。あまりにも優しい声で、陽介が瑞月を呼んだから。声にたがわず、優しい──まるで春の日差しを思わせる無垢な微笑を、陽介は瑞月へと向けた。
「やっぱり、サンタは来るよ。お前のところにさ。別に年とかそういうの関係なくて────頑張った人たちにご褒美を堂々と振り撒くサンタがいても、俺はいいと思う」
────お前みたいに、さ。
瑞月が贈ったプレゼントを、大事そうに陽介は抱え直す。瑞月が彼に贈ったのは何の変哲もない手袋だ。
それなのに、繊細な装飾が施されたブローチでも入っているような手つきで、陽介は紙袋を丁重に抱きしめる。
心から嬉しそうな陽介の笑顔は、紛れもなく瑞月がもたらしたものだ。
その事実に、瑞月の心がただ震える。
(────私のすべては”償い”のために)
瑞月は、一人で死ぬと決めている。
みずからの、かつて背負った罪ゆえに。
葬送の花もなく、冥福への旅路に
(────けれど)
瑞月がそばにいて、笑ってくれる人がいる。あなたがいて嬉しいのだと。
罪人である瑞月にとって、それはたしかに”救い”だった。
きっとと、瑞月は思う。あまりにも寂しい棺のなかに、宝石のような輝きを持った陽介との思い出を抱いて逝けるのは、きっと素敵だと。
いつか別れるその日まで、瑞月のもの寂しい『平穏』のなかに、優しい陽介がいる。
それは、罪人である瑞月にとって何よりも善いことなのだろう。
──もとより、罪を背負ったこの身は、孤独に死ぬと定められている。どうせ終わる時間なのだから、暗闇の中のほのかな
瑞月の問いかけに、幼い呪詛は沈黙する。もう何も聞こえない。陽介と瑞月は教室に戻って、移動先の教室へと一目散に駆けていった。同タイミングで転がり込んだ瑞月と陽介を、クラスメイトは物珍しそうに眺めていた。
────その後の年末。季節外れのサンタ帽を被った男の子が、瀬名家にクリスマスプレゼントを届けにきたという。