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10月11日 放課後
文化祭の模擬店の設営と、当日の接客を担当してほしいと瑞月は言った。
放課後の空き教室にて、陽介は瑞月から説明を受けている。陽介が謝罪に利用した昼休みでは、説明の時間足りなくなってしまったからだ。瑞月は他から椅子を借りて、自席に座った陽介と向き合っていた。
10月30・31日は八十神高校にて文化祭が執り行われる日だ。2人いる文化祭実行委員のうち、瑞月はその1人だという。
「私たちのクラスは、地元農家の要請に合わせて飲食店をやるんだ。『いなば食堂』というのだが」
メニューの考案や保健所への要請など、面倒事は済ませてしまったとのこと。あとは会場の設営、チラシの作成、促販グッズの作成と当日の業務を残すばかりらしい。
「といっても、チラシもあとは写真を入れるだけだし、会場のレイアウトも用意している。大筋は整えたので、あとは細々 とした業務と当日の仕事が残るばかりだ」
「段取りいいっすね……。つか、そこまで出来てんなら俺はナニすりゃいいんだ?」
「模擬店の設営にて、クラスメイトたちのまとめ役をお願いしたい」
瑞月はまっすぐに陽介を見据える。泥をかけたという相手にも嫌悪を示さず、きっぱりと頼み込む口調に自然と陽介の背が伸びた。
瑞月は不思議だ。共にいると、どうしてか気が引き締まるような心地がする。
ぱちりと1つ瞬きをすると、彼女は理由を子細に述べた。
「準備期間は人、資材の流れが複雑だ。その他にも、会計業務、文化祭実行委員の本部とのやり取り、調理衛生の管理などと多忙でね……。私ともう一人では手が足りなくなりそうだったから、クラス全体を見てくれる人が欲しかったんだ。どうだろうか?」
瑞月の問いに陽介はしばらく思案し、頷いた。
別段、陽介の人脈が広いというわけではない。しかし、クラスの人気者である人物──女子に人気な一条や、交友関係の広い千枝、男子たちに友人の多い長瀬など──と友人であった。彼らを橋として陽介が動けば、まとめ役の件はどうにかなりそうだ。
「そーゆーことならやれるぜ。 てか、瀬名さんって学校行事とか積極的にやるタイプだったんか」
瑞月がクラス内で誰かといる場面を、一つとして陽介は知らない。授業が終わると、どこかへ忽然と消えてしまう不思議な同級生。彼女の表情は常に凪いでいて、どんな表情を見せるのかすら知らなかった。
「積極的にではないがな……。もともと、推薦で務めている役だ」
そう呟いた瑞月いわく──地元の農家との共同の出し物を請け負ったクラス担任が瑞月に実行委員の役を持ち掛けてきたらしい。文化祭は、2学期の中間テストの後に行われる。ゆえに成績不振ではなく、ある程度余裕のある生徒に文化祭実行委員の仕事が回ってきたそうだ。
文化祭の模擬店の設営と、当日の接客を担当してほしいと瑞月は言った。
放課後の空き教室にて、陽介は瑞月から説明を受けている。陽介が謝罪に利用した昼休みでは、説明の時間足りなくなってしまったからだ。瑞月は他から椅子を借りて、自席に座った陽介と向き合っていた。
10月30・31日は八十神高校にて文化祭が執り行われる日だ。2人いる文化祭実行委員のうち、瑞月はその1人だという。
「私たちのクラスは、地元農家の要請に合わせて飲食店をやるんだ。『いなば食堂』というのだが」
メニューの考案や保健所への要請など、面倒事は済ませてしまったとのこと。あとは会場の設営、チラシの作成、促販グッズの作成と当日の業務を残すばかりらしい。
「といっても、チラシもあとは写真を入れるだけだし、会場のレイアウトも用意している。大筋は整えたので、あとは
「段取りいいっすね……。つか、そこまで出来てんなら俺はナニすりゃいいんだ?」
「模擬店の設営にて、クラスメイトたちのまとめ役をお願いしたい」
瑞月はまっすぐに陽介を見据える。泥をかけたという相手にも嫌悪を示さず、きっぱりと頼み込む口調に自然と陽介の背が伸びた。
瑞月は不思議だ。共にいると、どうしてか気が引き締まるような心地がする。
ぱちりと1つ瞬きをすると、彼女は理由を子細に述べた。
「準備期間は人、資材の流れが複雑だ。その他にも、会計業務、文化祭実行委員の本部とのやり取り、調理衛生の管理などと多忙でね……。私ともう一人では手が足りなくなりそうだったから、クラス全体を見てくれる人が欲しかったんだ。どうだろうか?」
瑞月の問いに陽介はしばらく思案し、頷いた。
別段、陽介の人脈が広いというわけではない。しかし、クラスの人気者である人物──女子に人気な一条や、交友関係の広い千枝、男子たちに友人の多い長瀬など──と友人であった。彼らを橋として陽介が動けば、まとめ役の件はどうにかなりそうだ。
「そーゆーことならやれるぜ。 てか、瀬名さんって学校行事とか積極的にやるタイプだったんか」
瑞月がクラス内で誰かといる場面を、一つとして陽介は知らない。授業が終わると、どこかへ忽然と消えてしまう不思議な同級生。彼女の表情は常に凪いでいて、どんな表情を見せるのかすら知らなかった。
「積極的にではないがな……。もともと、推薦で務めている役だ」
そう呟いた瑞月いわく──地元の農家との共同の出し物を請け負ったクラス担任が瑞月に実行委員の役を持ち掛けてきたらしい。文化祭は、2学期の中間テストの後に行われる。ゆえに成績不振ではなく、ある程度余裕のある生徒に文化祭実行委員の仕事が回ってきたそうだ。