最悪の出会い
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動揺する陽介を見かねたのか、瑞月が言葉を重ねる。
「謝罪の品以前の問題だ。私は最初に言ったよ。何が欲しいのか。少し時間でも用意できるものだ」
なぞかけのように彼女は問う。瑞月が何を求めているか分からず、陽介の額には汗がにじんでくる。『最初に言った』とは何を瑞月は欲しているのか。瑞月はしばらく間を開けてから、口を開く。
「私が欲しいのは、花村くんの言葉だ。君が申し訳ないと謝る前、私はなんと言った?」
「……反省?」
問いかけに、陽介は頭の中で屋上での瑞月のやり取りを脳内再生して、はっとした。瑞月が若干和らぐ。問題が解けた子供を褒めるように。しかし、また陽介を鋭い視線で射貫く。
「そうだ。雨の日の運転が危険だというのは火を見るよりも明らかだろう。にもかかわらず、君は走行した。
水たまりに突っ込んで私が水をかぶるほど勢いをつけたのだから、かなり勢いもついていたんだろう。しかも、片手に傘を持った状態で。
迂闊も迂闊だ。……運が悪ければ、きみも、私も、死んでいたところだった 。きみは打ち所が悪ければ、身体の一部が動かなくなっていたかもしれない」
冷水を浴びせるような鋭い口調で、瑞月は恐ろしい可能性を口にした。固まった陽介に一切の容赦なく説教を続ける。
「相手への謝罪で済ませるのではなく、自身への反省を添えろ。具体的な対策を講じるんだ。まだ事が小さいうちに、失敗を次に繰り返すな。
私を通じて、自身の命を粗雑に扱う行動をしないよう努力すると、自身に誓え。私は命を乱雑に扱う行為を見るのが嫌いだ」
はっきりと彼女は言い放った。瞳に圧が込められている。迂闊な陽介の運転に、相当おかんむりだ。瑞月の言葉は正論であり、陽介にとっては耳に痛い。
お縄に頂戴されるように陽介は両手をあげる。たしかに、自分は反省が足りなかったと認めて。
「……ごめん、なさい。もう、傘さして運転しません。必ずレインコート、着るようにします」
「分かったのなら、それでいい。もう危険な運転はしないでほしい」
「……反省と一緒に、菓子折りと、その他を受け取ってもらってもいいでしょうか」
「承知した」
陽介の謝罪を受け入れたのか、瑞月は鷹揚に頷く。それから、陽介の片手に引っ掛かっていた紙袋を受け取った。瑞月は謝罪金の入った封筒を取り出す。あろうことか、それを陽介につき返した。
「私自身に怪我があったわけではないからな。菓子折りだけ頂こう。君が反省してくれるのなら、このお金はいらない。衣服の汚れは洗濯したらすぐに落ちたからな」
「え、瀬名さん、ちょっとそれは申し訳ないんですけどッ」
「申し訳ないと思うのなら、びしょ濡れになった私と返された謝罪金を踏まえて、自転車の安全運転を心がけてくれ。
私からは以上だ。きみのご両親にも十分な謝罪は受け取ったと伝えておいてほしい。この件について、もう問う機会はない」
颯爽と踵を返し、瑞月は校内へと通じる扉へ向かおうとする。
「ちょっ、待った待った待った待った!!」
何事もなかったように屋上を去ろうとする瑞月の行く先を、焦った陽介は慌てて遮った。一方、なぜ引き留められるのか分かっていない様子で、瑞月は不思議そうに首を傾げる。
「謝罪が済んだのなら私が花村くんと話す必要は無くなっただろう?
言っておくが、私の両親は今回の騒動を知らないから、親同士の話し合いに発展させる必要はない。私がしてほしくない」
「イヤ、瀬名さんには話す必要ないかもだけど、俺にはあります。女の子水浸しにしたうえで本人から情け食らうとか、人としてココロすっげー抉られたんすよ!」
もし、このまま瑞月が屋上を去ったのなら、陽介にとって寝覚めが悪い。悪すぎる。
己の浅慮によって迷惑をかけたのなら、きちんと謝罪は済ませなければ、陽介は自分を許せないのだ。
「とにかく、封筒はちゃんと受け取ってくれ。じゃないと俺が情けなくて死ねる。恥ずか死ぬ!」
「だから言っただろう。菓子折りと反省を受け取ったので私は許すと」
瑞月は頑なに受け取ろうとはしない。陽介は必死な様子で、顔前で両手を合わせる。
「じゃあなんか瀬名さんが困ってることあったら、俺を使ってください。頼む! このままじゃ情けかけられたコト一生後悔するから」
「一生とは大げさな……」
いやいやと子供のごとく首を振る陽介に、瑞月は半分目を閉じた。
謝罪のため、なかなか折れない陽介に呆れた体である。瑞月は渋々とこめかみを指さした。
「……といっても、困っていることか……特には、うん?」
「ナニ、なんか心当たりあった?」
瑞月が目を一瞬ピクリと動かした。陽介はごまかされないように、反応を返す。
「……そうだな、文化祭実行委員である私を手伝ってはくれないか」
「謝罪の品以前の問題だ。私は最初に言ったよ。何が欲しいのか。少し時間でも用意できるものだ」
なぞかけのように彼女は問う。瑞月が何を求めているか分からず、陽介の額には汗がにじんでくる。『最初に言った』とは何を瑞月は欲しているのか。瑞月はしばらく間を開けてから、口を開く。
「私が欲しいのは、花村くんの言葉だ。君が申し訳ないと謝る前、私はなんと言った?」
「……反省?」
問いかけに、陽介は頭の中で屋上での瑞月のやり取りを脳内再生して、はっとした。瑞月が若干和らぐ。問題が解けた子供を褒めるように。しかし、また陽介を鋭い視線で射貫く。
「そうだ。雨の日の運転が危険だというのは火を見るよりも明らかだろう。にもかかわらず、君は走行した。
水たまりに突っ込んで私が水をかぶるほど勢いをつけたのだから、かなり勢いもついていたんだろう。しかも、片手に傘を持った状態で。
迂闊も迂闊だ。……運が悪ければ、きみも、私も、
冷水を浴びせるような鋭い口調で、瑞月は恐ろしい可能性を口にした。固まった陽介に一切の容赦なく説教を続ける。
「相手への謝罪で済ませるのではなく、自身への反省を添えろ。具体的な対策を講じるんだ。まだ事が小さいうちに、失敗を次に繰り返すな。
私を通じて、自身の命を粗雑に扱う行動をしないよう努力すると、自身に誓え。私は命を乱雑に扱う行為を見るのが嫌いだ」
はっきりと彼女は言い放った。瞳に圧が込められている。迂闊な陽介の運転に、相当おかんむりだ。瑞月の言葉は正論であり、陽介にとっては耳に痛い。
お縄に頂戴されるように陽介は両手をあげる。たしかに、自分は反省が足りなかったと認めて。
「……ごめん、なさい。もう、傘さして運転しません。必ずレインコート、着るようにします」
「分かったのなら、それでいい。もう危険な運転はしないでほしい」
「……反省と一緒に、菓子折りと、その他を受け取ってもらってもいいでしょうか」
「承知した」
陽介の謝罪を受け入れたのか、瑞月は鷹揚に頷く。それから、陽介の片手に引っ掛かっていた紙袋を受け取った。瑞月は謝罪金の入った封筒を取り出す。あろうことか、それを陽介につき返した。
「私自身に怪我があったわけではないからな。菓子折りだけ頂こう。君が反省してくれるのなら、このお金はいらない。衣服の汚れは洗濯したらすぐに落ちたからな」
「え、瀬名さん、ちょっとそれは申し訳ないんですけどッ」
「申し訳ないと思うのなら、びしょ濡れになった私と返された謝罪金を踏まえて、自転車の安全運転を心がけてくれ。
私からは以上だ。きみのご両親にも十分な謝罪は受け取ったと伝えておいてほしい。この件について、もう問う機会はない」
颯爽と踵を返し、瑞月は校内へと通じる扉へ向かおうとする。
「ちょっ、待った待った待った待った!!」
何事もなかったように屋上を去ろうとする瑞月の行く先を、焦った陽介は慌てて遮った。一方、なぜ引き留められるのか分かっていない様子で、瑞月は不思議そうに首を傾げる。
「謝罪が済んだのなら私が花村くんと話す必要は無くなっただろう?
言っておくが、私の両親は今回の騒動を知らないから、親同士の話し合いに発展させる必要はない。私がしてほしくない」
「イヤ、瀬名さんには話す必要ないかもだけど、俺にはあります。女の子水浸しにしたうえで本人から情け食らうとか、人としてココロすっげー抉られたんすよ!」
もし、このまま瑞月が屋上を去ったのなら、陽介にとって寝覚めが悪い。悪すぎる。
己の浅慮によって迷惑をかけたのなら、きちんと謝罪は済ませなければ、陽介は自分を許せないのだ。
「とにかく、封筒はちゃんと受け取ってくれ。じゃないと俺が情けなくて死ねる。恥ずか死ぬ!」
「だから言っただろう。菓子折りと反省を受け取ったので私は許すと」
瑞月は頑なに受け取ろうとはしない。陽介は必死な様子で、顔前で両手を合わせる。
「じゃあなんか瀬名さんが困ってることあったら、俺を使ってください。頼む! このままじゃ情けかけられたコト一生後悔するから」
「一生とは大げさな……」
いやいやと子供のごとく首を振る陽介に、瑞月は半分目を閉じた。
謝罪のため、なかなか折れない陽介に呆れた体である。瑞月は渋々とこめかみを指さした。
「……といっても、困っていることか……特には、うん?」
「ナニ、なんか心当たりあった?」
瑞月が目を一瞬ピクリと動かした。陽介はごまかされないように、反応を返す。
「……そうだな、文化祭実行委員である私を手伝ってはくれないか」