彼女の秘密
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水の中を漂うようにぼやけた意識が、浮かび上がる。まず、認識できたのは、自分は石の上に座っていて、背中が硬い段差にもたれかかっているということ。
けれど背中に痛みはなく、頭ごと柔らかくモフモフしたものに覆われている。瞼を開けると、古ぼけた鳥居が視界に飛び込んだ。ここどこだっけ。と、陽介は目をこする。
「花村?」
澄んだ声が聞こえた。清水のように冷たい呼びかけに、陽介の意識は急速に覚醒する。がばりと勢いよく起き上がると、石畳の上に私服の友達が立っていた。一瞬、彼女は直立すると、弾かれたように陽介のもとへと駆け出した。
「――瀬名、っ」
喉がぴりついて、陽介は口を閉じる。自転車で全力疾走したせいか、喉がカラカラに乾いて、声が満足に出なかった。なんとか唾を飲みこもうとするが、上手くできない。やきもきしている陽介の目の前に、ペットボトルが差し出された。
「うん、正解だ。ほら、これを飲むんだ」
有無を言わさず、瑞月はボトルをすすめてくる。いいの? と瑞月を仰いで、陽介は開きかけた口を閉じた。普段はきちんと結われている瑞月の髪はほつれている。きっと、飲み物を買ってくるために走ったのだろう。陽介はボトルを受け取ると、中身を一気に流し込んだ。常温のスポーツドリンクが、干上がった喉を潤していく。ごくごくとスポドリを飲みつくす陽介を、瑞月はホッと肩をなでおろして眺めていた。
「異常はないようだな。どうだ花村、ほかに調子の悪いところはあるか」
「瀬名……」
陽介の声は元通りになっている。「ん?」と瑞月は微かに口元を緩めながら首を傾げた。彼女に怒りは見受けられない。ただ、倒れた陽介を心配して親身になって介抱してくれようとしている。
瑞月は優しい。己に迷惑をかけた相手あっても、彼女は手を差し伸べてくれる。その優しい人を傷つけたことが、陽介はたまらなく恥ずかしい。
「ごめん」
瑞月は突然の謝罪に目を丸くした。許して、くれるだろうか。陽介はおそるおそる瑞月の様子をうかがう。きれいな瞳を、ゆらゆらと不安定に揺らして瑞月は曖昧に唇を動かす。それは、相手を安心させようする不器用な笑みにも見える。彼女は神妙に頷いた。
「そうだな。私も、君と話したかったんだ」
けれど背中に痛みはなく、頭ごと柔らかくモフモフしたものに覆われている。瞼を開けると、古ぼけた鳥居が視界に飛び込んだ。ここどこだっけ。と、陽介は目をこする。
「花村?」
澄んだ声が聞こえた。清水のように冷たい呼びかけに、陽介の意識は急速に覚醒する。がばりと勢いよく起き上がると、石畳の上に私服の友達が立っていた。一瞬、彼女は直立すると、弾かれたように陽介のもとへと駆け出した。
「――瀬名、っ」
喉がぴりついて、陽介は口を閉じる。自転車で全力疾走したせいか、喉がカラカラに乾いて、声が満足に出なかった。なんとか唾を飲みこもうとするが、上手くできない。やきもきしている陽介の目の前に、ペットボトルが差し出された。
「うん、正解だ。ほら、これを飲むんだ」
有無を言わさず、瑞月はボトルをすすめてくる。いいの? と瑞月を仰いで、陽介は開きかけた口を閉じた。普段はきちんと結われている瑞月の髪はほつれている。きっと、飲み物を買ってくるために走ったのだろう。陽介はボトルを受け取ると、中身を一気に流し込んだ。常温のスポーツドリンクが、干上がった喉を潤していく。ごくごくとスポドリを飲みつくす陽介を、瑞月はホッと肩をなでおろして眺めていた。
「異常はないようだな。どうだ花村、ほかに調子の悪いところはあるか」
「瀬名……」
陽介の声は元通りになっている。「ん?」と瑞月は微かに口元を緩めながら首を傾げた。彼女に怒りは見受けられない。ただ、倒れた陽介を心配して親身になって介抱してくれようとしている。
瑞月は優しい。己に迷惑をかけた相手あっても、彼女は手を差し伸べてくれる。その優しい人を傷つけたことが、陽介はたまらなく恥ずかしい。
「ごめん」
瑞月は突然の謝罪に目を丸くした。許して、くれるだろうか。陽介はおそるおそる瑞月の様子をうかがう。きれいな瞳を、ゆらゆらと不安定に揺らして瑞月は曖昧に唇を動かす。それは、相手を安心させようする不器用な笑みにも見える。彼女は神妙に頷いた。
「そうだな。私も、君と話したかったんだ」