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「それで花村? 2人を紹介したいと」
「そのとおりでごぜぇやす」
「うーむ、平穏からどんどん遠ざかってる気がする」
時刻は昼休み。今朝、千枝がしたように陽介は瑞月に両手を合わせている。対して、瑞月は己の額を手にした箸で小突いた。
明らかに、接触を試みる2人に手をこまねいている。人付き合いを好まない瑞月の反応は、陽介の予想通りであった。
今日も屋上は快晴だ。絶好の昼寝日和の青空の下、瑞月と陽介は昼食を共にしている。授業の合間、『今日は話が長くなるので、昼食を一緒に食べたい』と陽介が記した置手紙を、瑞月は確認してくれたらしい。
陽介はジュネスの割引総菜パンを一口頬張った。対して、彩りのよいお弁当を前に、瑞月は微動だにしない。陽介の話への断り方を考えているのだろう。陽介はパンを咀嚼している間に、瑞月へのプレゼンを練る。
「それは置いといてさ。あいつら普通にイイやつだし、話してると楽しいぞ」
「今の関係のままでも、学校生活に支障はない。それに別段、私は会話を楽しみたくないし、楽しませる気もないのだが……」
「俺とはこうやって話してんじゃん。俺は楽しいし、おんなじように話しゃいーだけだって」
「私との会話は、ほぼ君がリードしているから成り立っているんだろう」
「ハハッ、お上手。そんじゃ今度俺とお茶しなーい? 里中と天城も込みで、さ」
「簡単には引き下がらないか……、手ごわいものだ」
しゃんと姿勢を正して、彼女は卵焼きを口に運んだ。昼食の一つを食べ終わった陽介は、パンに持っていかれた水分をリボンシトロンで補った。清涼感のある甘さが、のどを潤す。喋るために十分に口を湿らせた陽介は再び口を開いた。
「まぁ、そんな頑なになんなって。お前にもメリットある話だと思うけど?」
「……どういうことだろうか?」
「お前は、俺が人とコミュニケーションとるのが得意だから友達になったって言ったよな? んなら、里中も中々のもんだ。女子なら俺より知り合い多いからな、アイツ。それから天城の実家はお前のお袋さんのお得意先だ。仲よくしときゃ、お袋さんの仕事にリターンがあるかもよ?」
友達である千枝と雪子を商品のように紹介する行為は気が引けるが、瑞月を説得するのならシノゴノ言っていられない。瑞月が人付き合いに必要性を感じないというのなら、陽介が口でそれを否定すればいい。
スクエア型のお弁当箱に入ったレンコンつくねに伸びた瑞月の箸が止まる。陽介の提案が瑞月を揺さぶっているらしい。いけるかもと、畳みかけようとした陽介を冷たく落ち着いた声が遮った。
「花村は——」
瑞月が箸を持った手を膝に置いた。同時に弁当箱に落としていた視線を陽介へと向ける。紺碧の瞳が陽介をまっすぐに映し出した。嘘や邪念があれば、すぐに見抜いてしまいそうな鋭利な光が瑞月の瞳には宿っていた。
「花村は、どうしてそこまで、私に里中さんと天城さんを紹介しようとする? 私があまり人付き合いを好まない人間であるとは知っているだろう?」
瑞月は真剣だ。軽口やのらくらした言い訳は許さないだろう。
陽介は逡巡する。確かに、どうして陽介は千枝たちと瑞月を合わせようと必死になっているのだろう。千枝たちに頼りにされたというのも理由として嘘ではない。
しかし、それだけではない。千枝から提案を受けたとき、ふと、瑞月と共に過ごした文化祭の時間が、彼女の笑顔が、頭をよぎったのだ。ああ、そうかと、陽介は納得する。
「そのとおりでごぜぇやす」
「うーむ、平穏からどんどん遠ざかってる気がする」
時刻は昼休み。今朝、千枝がしたように陽介は瑞月に両手を合わせている。対して、瑞月は己の額を手にした箸で小突いた。
明らかに、接触を試みる2人に手をこまねいている。人付き合いを好まない瑞月の反応は、陽介の予想通りであった。
今日も屋上は快晴だ。絶好の昼寝日和の青空の下、瑞月と陽介は昼食を共にしている。授業の合間、『今日は話が長くなるので、昼食を一緒に食べたい』と陽介が記した置手紙を、瑞月は確認してくれたらしい。
陽介はジュネスの割引総菜パンを一口頬張った。対して、彩りのよいお弁当を前に、瑞月は微動だにしない。陽介の話への断り方を考えているのだろう。陽介はパンを咀嚼している間に、瑞月へのプレゼンを練る。
「それは置いといてさ。あいつら普通にイイやつだし、話してると楽しいぞ」
「今の関係のままでも、学校生活に支障はない。それに別段、私は会話を楽しみたくないし、楽しませる気もないのだが……」
「俺とはこうやって話してんじゃん。俺は楽しいし、おんなじように話しゃいーだけだって」
「私との会話は、ほぼ君がリードしているから成り立っているんだろう」
「ハハッ、お上手。そんじゃ今度俺とお茶しなーい? 里中と天城も込みで、さ」
「簡単には引き下がらないか……、手ごわいものだ」
しゃんと姿勢を正して、彼女は卵焼きを口に運んだ。昼食の一つを食べ終わった陽介は、パンに持っていかれた水分をリボンシトロンで補った。清涼感のある甘さが、のどを潤す。喋るために十分に口を湿らせた陽介は再び口を開いた。
「まぁ、そんな頑なになんなって。お前にもメリットある話だと思うけど?」
「……どういうことだろうか?」
「お前は、俺が人とコミュニケーションとるのが得意だから友達になったって言ったよな? んなら、里中も中々のもんだ。女子なら俺より知り合い多いからな、アイツ。それから天城の実家はお前のお袋さんのお得意先だ。仲よくしときゃ、お袋さんの仕事にリターンがあるかもよ?」
友達である千枝と雪子を商品のように紹介する行為は気が引けるが、瑞月を説得するのならシノゴノ言っていられない。瑞月が人付き合いに必要性を感じないというのなら、陽介が口でそれを否定すればいい。
スクエア型のお弁当箱に入ったレンコンつくねに伸びた瑞月の箸が止まる。陽介の提案が瑞月を揺さぶっているらしい。いけるかもと、畳みかけようとした陽介を冷たく落ち着いた声が遮った。
「花村は——」
瑞月が箸を持った手を膝に置いた。同時に弁当箱に落としていた視線を陽介へと向ける。紺碧の瞳が陽介をまっすぐに映し出した。嘘や邪念があれば、すぐに見抜いてしまいそうな鋭利な光が瑞月の瞳には宿っていた。
「花村は、どうしてそこまで、私に里中さんと天城さんを紹介しようとする? 私があまり人付き合いを好まない人間であるとは知っているだろう?」
瑞月は真剣だ。軽口やのらくらした言い訳は許さないだろう。
陽介は逡巡する。確かに、どうして陽介は千枝たちと瑞月を合わせようと必死になっているのだろう。千枝たちに頼りにされたというのも理由として嘘ではない。
しかし、それだけではない。千枝から提案を受けたとき、ふと、瑞月と共に過ごした文化祭の時間が、彼女の笑顔が、頭をよぎったのだ。ああ、そうかと、陽介は納得する。