昼休みの友達
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瑞月は何度も頷く。満足気な瑞月に、まっさらになったはずの陽介の心の中が陰る。ジワリと黒いインクがにじんだような猜疑によって。
「ん? どうした花村。浮かない顔をしていると見える。もっと長く昼寝をしたかったのか?」
「あのさ、瀬名。もしかして、俺って……邪魔?」
瑞月が唇を引き結んだ。陽介はハッとして、自身の口を抑える。だが、失言はどうやっても取り消しが効かない。
瑞月は誰に何と言われようと、昼寝の時間が大切なのだろう。昼寝を終えた陽介に見せた、彼女の満足げな仕草が詳細に物語っている。
だからこそ、瑞月の楽しみにしている時間を奪うように屋上を訪ねていた自身の振る舞いが、陽介は申し訳なかった。
思い至らないだけで、陽介は他にも瑞月に迷惑をかけていたかもしれない。自分ばかり喋って、あまつさえ彼女が関心のないアイドルの話題も振って——わざわざ瑞月に話題を合わせるように仕向けたようでもある。
『俺って……邪魔?』
先ほどの発言は。
陽介との関りが、瑞月に余計な気を使わせ時間を奪っているのではないか? という疑惑が、口をついてしまったのだ。
振り返ってみれば、あまりに女々しい質問だ。「そんなことはない」と、「陽介は邪魔ではない」と解答されたい意図が見え透いている。とんだウザったい発言に、目の前の瑞月も呆れたように黙ってしまった。
血の気がさっと引いて、陽介はあたふたと両手をばたつかせる。
「う、ウソウソウソ! ちょっと寝不足でセンチな気分になってて、嫌なコト思い出しちまっただけだから」
「……君は、他の人間に『邪魔だ』と、もしくはそれに準ずる言葉か行動を示されたのか」
予想だにしないデッドボールが鳩尾に命中した。思わず「あ……ぐ……」と呻いて陽介は胸を抑える。思わぬところで墓穴を掘ってしまったと陽介は絶望した。これでは本当にイタい人になってしまう。
何か、何か弁明を、と陽介の頭の中で思考がぐるぐるする。けれど、何も言えない。瑞月の視線が怖い、陽介をどんな風に見ているのか知るのが怖い。陽介自身が邪魔ではないという否定ができない。
なぜなら、陽介が、他ならぬ陽介自身が、自分のこと少なからずそういう風に、思ってしまっているから。
八十稲羽に来てからというもの、陽介は自分自身が異物であるような感覚がぬぐえない。どこに行っても『ジュネスの店長の息子』だからと、向けられる粘つくような好奇の視線。群れる人々から遠巻きに聞こえる重く沈んだ囁き。普段は何とはなしにやり過ごしている。
しかしふと、孤独感を覚えてしまうのだ。自分を遠巻きにあざ笑う人々に囲まれて、まるで泥の中に一人沈められるような、息が詰まる閉塞感が伴った孤独を。自分が邪魔なのではないかとすら、陽介も思ってしまう。
座っていた瑞月が、腰を持ち上げる。呆れられたかな。と陽介が自嘲的な笑みを浮かべた、そのとき。
「ん? どうした花村。浮かない顔をしていると見える。もっと長く昼寝をしたかったのか?」
「あのさ、瀬名。もしかして、俺って……邪魔?」
瑞月が唇を引き結んだ。陽介はハッとして、自身の口を抑える。だが、失言はどうやっても取り消しが効かない。
瑞月は誰に何と言われようと、昼寝の時間が大切なのだろう。昼寝を終えた陽介に見せた、彼女の満足げな仕草が詳細に物語っている。
だからこそ、瑞月の楽しみにしている時間を奪うように屋上を訪ねていた自身の振る舞いが、陽介は申し訳なかった。
思い至らないだけで、陽介は他にも瑞月に迷惑をかけていたかもしれない。自分ばかり喋って、あまつさえ彼女が関心のないアイドルの話題も振って——わざわざ瑞月に話題を合わせるように仕向けたようでもある。
『俺って……邪魔?』
先ほどの発言は。
陽介との関りが、瑞月に余計な気を使わせ時間を奪っているのではないか? という疑惑が、口をついてしまったのだ。
振り返ってみれば、あまりに女々しい質問だ。「そんなことはない」と、「陽介は邪魔ではない」と解答されたい意図が見え透いている。とんだウザったい発言に、目の前の瑞月も呆れたように黙ってしまった。
血の気がさっと引いて、陽介はあたふたと両手をばたつかせる。
「う、ウソウソウソ! ちょっと寝不足でセンチな気分になってて、嫌なコト思い出しちまっただけだから」
「……君は、他の人間に『邪魔だ』と、もしくはそれに準ずる言葉か行動を示されたのか」
予想だにしないデッドボールが鳩尾に命中した。思わず「あ……ぐ……」と呻いて陽介は胸を抑える。思わぬところで墓穴を掘ってしまったと陽介は絶望した。これでは本当にイタい人になってしまう。
何か、何か弁明を、と陽介の頭の中で思考がぐるぐるする。けれど、何も言えない。瑞月の視線が怖い、陽介をどんな風に見ているのか知るのが怖い。陽介自身が邪魔ではないという否定ができない。
なぜなら、陽介が、他ならぬ陽介自身が、自分のこと少なからずそういう風に、思ってしまっているから。
八十稲羽に来てからというもの、陽介は自分自身が異物であるような感覚がぬぐえない。どこに行っても『ジュネスの店長の息子』だからと、向けられる粘つくような好奇の視線。群れる人々から遠巻きに聞こえる重く沈んだ囁き。普段は何とはなしにやり過ごしている。
しかしふと、孤独感を覚えてしまうのだ。自分を遠巻きにあざ笑う人々に囲まれて、まるで泥の中に一人沈められるような、息が詰まる閉塞感が伴った孤独を。自分が邪魔なのではないかとすら、陽介も思ってしまう。
座っていた瑞月が、腰を持ち上げる。呆れられたかな。と陽介が自嘲的な笑みを浮かべた、そのとき。