最悪の出会い
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陽介が水濡れにしたクラスメイト──瀬名瑞月は陽介に関心などないだろう。しかし陽介は彼女に興味があった。
理由は単純。瀬名瑞月は美しい少女であったから。転校初日の十月四日、自己紹介に立った壇上から思わず二度見してしまったほどだ。
いくらヤンチャざかりの高校生とはいえ、ある人物を断りなく注視することがマナー違反だとは知っている。だがそれでも、陽介はしばらく目を逸らさずにはいられなかった。
陽介は都会育ちだ。派手なメイクや流行りのアクセサリーなどで華美に着飾った女子高生など、いくらでも見てきた。
しかし、瑞月にはそれらとは全く違った魅力があった。なぜなら瑞月の美しさの前では、下手な化粧やアクセサリーが意味を成さない。陽介が見たことのない、改めて着飾る必要すらないほどに、根本の造詣から設計されたかのような、無駄をそぎ落として完成された鋭利で冷たい美貌そのものだったから。
思わず息を呑んだ陽介に反して、瑞月は至って冷静だった。壇上から注いだ陽介の視線を意に介さず、落ち着いた様子で陽介の自己紹介を聞いていた。
「体重が知りたい人はあとでコッソリ聞きに来てください♡」
そうして陽介のスベった自己紹介にげんなりすることも、飽きた様子で教材をとりだすこともなく、背筋を伸ばして律儀に紹介が終わるのを待っていた。
人の話はちゃんと聞きなさい、そのルールを厳格に守っているようだった。そのせいか、彼女の羽織った、丈の長いアクアブルーとパールホワイトのマウンテンパーカーは微動だにしない。
紹介が終わり、担任に促された席へと向かうなか、陽介はちらりと瑞月を盗み見る。
濡れたような黒髪は几帳面に後頭部でまとめられ、側頭部に添えられた唯一のアクセサリーである白蓮の髪飾りと新雪のごとき肌が映える。
白が浮き彫りにさせた輪郭と鼻梁は1寸の狂いもなく端麗に整って、たとえ色を失ったとしても褪せないような鋭い存在感がある。濡れ羽根の黒、新雪の白と無彩色で構成された顔立ちのなか、 唯一の彩りである瞳だけが鮮やかだ。清浄な泉に似て澄んだ紺碧のそれは釣り目がちで大きく、見つめた相手を射抜きそうな怜悧な光が宿っている。
さながら氷を慎重に彫って、色を注したように研ぎ澄まされた美貌だった。
なにより陽介の心に刻まれたのは、彼女の紺碧に染まった瞳だ。
大多数のクラスメイトたちが余所者である陽介を、ジトリといやに蒸れた瞳へと歪んだ像を写すなかで、美しい彼女の、鏡面にも似た紺碧の瞳には、陽介の姿が鮮明に写されていたのだ。 それこそ一分の狂いもなく、正確に。
飛びぬけた冷たい容姿と、凛とした立ち振る舞い、そして何よりも──歪みなく陽介を写した紺碧の瞳が印象に残り、陽介は黒髪碧目の美人に関心を持った。
けれども転校から五日過ぎても彼女と話す機会はなかった。瑞月は授業の合間は教科書を読みこんでいるし、昼休みはすぐさまどこかへと姿を消してしまうのだから。
理由は単純。瀬名瑞月は美しい少女であったから。転校初日の十月四日、自己紹介に立った壇上から思わず二度見してしまったほどだ。
いくらヤンチャざかりの高校生とはいえ、ある人物を断りなく注視することがマナー違反だとは知っている。だがそれでも、陽介はしばらく目を逸らさずにはいられなかった。
陽介は都会育ちだ。派手なメイクや流行りのアクセサリーなどで華美に着飾った女子高生など、いくらでも見てきた。
しかし、瑞月にはそれらとは全く違った魅力があった。なぜなら瑞月の美しさの前では、下手な化粧やアクセサリーが意味を成さない。陽介が見たことのない、改めて着飾る必要すらないほどに、根本の造詣から設計されたかのような、無駄をそぎ落として完成された鋭利で冷たい美貌そのものだったから。
思わず息を呑んだ陽介に反して、瑞月は至って冷静だった。壇上から注いだ陽介の視線を意に介さず、落ち着いた様子で陽介の自己紹介を聞いていた。
「体重が知りたい人はあとでコッソリ聞きに来てください♡」
そうして陽介のスベった自己紹介にげんなりすることも、飽きた様子で教材をとりだすこともなく、背筋を伸ばして律儀に紹介が終わるのを待っていた。
人の話はちゃんと聞きなさい、そのルールを厳格に守っているようだった。そのせいか、彼女の羽織った、丈の長いアクアブルーとパールホワイトのマウンテンパーカーは微動だにしない。
紹介が終わり、担任に促された席へと向かうなか、陽介はちらりと瑞月を盗み見る。
濡れたような黒髪は几帳面に後頭部でまとめられ、側頭部に添えられた唯一のアクセサリーである白蓮の髪飾りと新雪のごとき肌が映える。
白が浮き彫りにさせた輪郭と鼻梁は1寸の狂いもなく端麗に整って、たとえ色を失ったとしても褪せないような鋭い存在感がある。濡れ羽根の黒、新雪の白と無彩色で構成された顔立ちのなか、 唯一の彩りである瞳だけが鮮やかだ。清浄な泉に似て澄んだ紺碧のそれは釣り目がちで大きく、見つめた相手を射抜きそうな怜悧な光が宿っている。
さながら氷を慎重に彫って、色を注したように研ぎ澄まされた美貌だった。
なにより陽介の心に刻まれたのは、彼女の紺碧に染まった瞳だ。
大多数のクラスメイトたちが余所者である陽介を、ジトリといやに蒸れた瞳へと歪んだ像を写すなかで、美しい彼女の、鏡面にも似た紺碧の瞳には、陽介の姿が鮮明に写されていたのだ。 それこそ一分の狂いもなく、正確に。
飛びぬけた冷たい容姿と、凛とした立ち振る舞い、そして何よりも──歪みなく陽介を写した紺碧の瞳が印象に残り、陽介は黒髪碧目の美人に関心を持った。
けれども転校から五日過ぎても彼女と話す機会はなかった。瑞月は授業の合間は教科書を読みこんでいるし、昼休みはすぐさまどこかへと姿を消してしまうのだから。