爆走
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***
「知り合いの農家さんが野菜を分けてくれるって」
通話を終えるなり、雪子は笑顔とともに告げた。雪子の実家は『天城屋旅館』と呼ばれる老舗の温泉旅館だ。彼女はその伝手を使って、贔屓にしている農家と形不良の野菜を譲ってもらう話をつけたという。
「天城さん、ありがとう」
雪子の言葉にいちはやく動いたのは瑞月だ。一縷の希望に浮かれた陽介たちとは違い、瑞月は頭を下げる。折り目正しい礼ののち、彼女は素早く姿勢をただす。
「通話の内容からすると、直接取りに行く条件だったね」
「う、うん。それで農家さんの住所は×××で——」
「承知した。教えてくれてありがとう」
「お、おい瀬名さん、どこ行く気だよ!」
瑞月は教室に背を向けた。関係者である陽介たちを置き去りにして。教室の出入り口近くで陽介が声を掛けると、思い出したように振り向いた。淡々と、瑞月は告げる。
「模擬店や調理班は、私が抜けても問題はない。ゆえに、野菜の在庫数が分かる私が野菜を『採り』に行く。花村くんと松坂くんは──教室の装飾は一通り終わったようだな。であれば、戻ってくる調理班と共に、当日の打ち合わせをしてくれ」
「は!? ちょっと待て! て、速すぎだろ!」
指示だけを残し、瑞月は教室を飛び出した。陸上選手のような瞬発に陽介は面を食らう。廊下を駆ける瑞月の背中が、瞬く間に遠ざかっていく。
「ダーッくそ! オレも行く!」
陽介もまた、床を蹴った。
当日の打ち合わせといっても、衛生項目や接客の注意点が記されたマニュアルを読むだけだ。松坂を含む他のクラス委員でも仕切れる。
なにより陽介は瑞月の仕事を手伝うと決めたのだ。野菜を持ち帰るなんて重労働は、女の子1人に任せられない。
「知り合いの農家さんが野菜を分けてくれるって」
通話を終えるなり、雪子は笑顔とともに告げた。雪子の実家は『天城屋旅館』と呼ばれる老舗の温泉旅館だ。彼女はその伝手を使って、贔屓にしている農家と形不良の野菜を譲ってもらう話をつけたという。
「天城さん、ありがとう」
雪子の言葉にいちはやく動いたのは瑞月だ。一縷の希望に浮かれた陽介たちとは違い、瑞月は頭を下げる。折り目正しい礼ののち、彼女は素早く姿勢をただす。
「通話の内容からすると、直接取りに行く条件だったね」
「う、うん。それで農家さんの住所は×××で——」
「承知した。教えてくれてありがとう」
「お、おい瀬名さん、どこ行く気だよ!」
瑞月は教室に背を向けた。関係者である陽介たちを置き去りにして。教室の出入り口近くで陽介が声を掛けると、思い出したように振り向いた。淡々と、瑞月は告げる。
「模擬店や調理班は、私が抜けても問題はない。ゆえに、野菜の在庫数が分かる私が野菜を『採り』に行く。花村くんと松坂くんは──教室の装飾は一通り終わったようだな。であれば、戻ってくる調理班と共に、当日の打ち合わせをしてくれ」
「は!? ちょっと待て! て、速すぎだろ!」
指示だけを残し、瑞月は教室を飛び出した。陸上選手のような瞬発に陽介は面を食らう。廊下を駆ける瑞月の背中が、瞬く間に遠ざかっていく。
「ダーッくそ! オレも行く!」
陽介もまた、床を蹴った。
当日の打ち合わせといっても、衛生項目や接客の注意点が記されたマニュアルを読むだけだ。松坂を含む他のクラス委員でも仕切れる。
なにより陽介は瑞月の仕事を手伝うと決めたのだ。野菜を持ち帰るなんて重労働は、女の子1人に任せられない。