向かう彼
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すでに太陽は、高々と空に昇っている。
じりじりと照り付ける日差しの中を、花村陽介はなるべく急いだ。本当は走りたかったのだが、荷物を抱えているため仕方なく早歩きで進む。
怪我しないことを第一に、とは彼の恋人がよくかけてくれる言葉である。
今日はその恋人——瀬名 瑞月と朝から過ごせる日、になるはずだった。
しかし、ゼミの研究で必要な資料を発見したと、大学の教授から連絡があったのだ。競争率の高い資料だから、至急取りに来てほしいとのこと。
運が悪いとは自覚しているが、どうして恋人との約束の日にイレギュラーが入るのか。
泣く泣く彼女に連絡を入れると、過保護な彼女とひと悶着あったけれど了承を得た。だから、家で待ってくれるという瑞月のためにも、早く用事を済ませて帰ろうと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
担当教授の研究室に着いてはいいが、その教授がドジを踏んで研究室にぶちまけられた本の山を整理する羽目になった。研究室を出た後も、長話をすることで有名な助手につかまり、やっと終わったと思えば学内の後輩に絡まれ時間をロスするという、散々な有様である。時間を確認して血の気が引いた。
さらに悪い事に、遅れるとSNSで一報を入れたはずの瑞月から返信がない。陽介の部屋に着いた、と連絡があったのにすぐに返信されないとはおかしな状況だった。
——まさか、怒った?
冷や汗が伝った。ついに怒らせたかもしれないと、陽介の心中は恐ろしかった。
陽介側のアクシデントが原因で、瑞月との約束に遅れたことが何回かあった。それ以外にも、自分は何かと彼女に迷惑をかけて、助けられている。付き合う前、高校で初めて会った日からそうだった。だが、ついに彼女の堪忍袋の緒が切れたのかもしれない。
瑞月が陽介に怒ったことは数少ない、叱られたことは何度もあるけれど。しかし、一度怒ると非常に苛烈になる様を陽介は知っていた。
それで、シャドウやら怪物やらを何体も屠ってきたのだ。
どうしよう。と陽介は悩んだ。とりあえず、もう一度SNSに謝罪を打ち込む。
焼け石に水かもしれないが、お詫びの品を買っていくことにした。
そのため、陽介は大学の資料が詰め込まれたショルダーバックのほか、両手に食べ物の入った袋を下げていた。すべて自宅最寄りの駅で買ったものだ。
昼食のサンドイッチやら、彼女と共通の好物であるアイスクリームやら、キャラメルポップコーンやらが詰め込まれている。彼女とよく飲むアイスティーも2人分買った。氷たちがなるべく溶けないよう、そして早く瑞月に会って謝れるよう、陽介は炎天下を行軍した。
じりじりと照り付ける日差しの中を、花村陽介はなるべく急いだ。本当は走りたかったのだが、荷物を抱えているため仕方なく早歩きで進む。
怪我しないことを第一に、とは彼の恋人がよくかけてくれる言葉である。
今日はその恋人——瀬名 瑞月と朝から過ごせる日、になるはずだった。
しかし、ゼミの研究で必要な資料を発見したと、大学の教授から連絡があったのだ。競争率の高い資料だから、至急取りに来てほしいとのこと。
運が悪いとは自覚しているが、どうして恋人との約束の日にイレギュラーが入るのか。
泣く泣く彼女に連絡を入れると、過保護な彼女とひと悶着あったけれど了承を得た。だから、家で待ってくれるという瑞月のためにも、早く用事を済ませて帰ろうと思ったのだが、そうは問屋が卸さなかった。
担当教授の研究室に着いてはいいが、その教授がドジを踏んで研究室にぶちまけられた本の山を整理する羽目になった。研究室を出た後も、長話をすることで有名な助手につかまり、やっと終わったと思えば学内の後輩に絡まれ時間をロスするという、散々な有様である。時間を確認して血の気が引いた。
さらに悪い事に、遅れるとSNSで一報を入れたはずの瑞月から返信がない。陽介の部屋に着いた、と連絡があったのにすぐに返信されないとはおかしな状況だった。
——まさか、怒った?
冷や汗が伝った。ついに怒らせたかもしれないと、陽介の心中は恐ろしかった。
陽介側のアクシデントが原因で、瑞月との約束に遅れたことが何回かあった。それ以外にも、自分は何かと彼女に迷惑をかけて、助けられている。付き合う前、高校で初めて会った日からそうだった。だが、ついに彼女の堪忍袋の緒が切れたのかもしれない。
瑞月が陽介に怒ったことは数少ない、叱られたことは何度もあるけれど。しかし、一度怒ると非常に苛烈になる様を陽介は知っていた。
それで、シャドウやら怪物やらを何体も屠ってきたのだ。
どうしよう。と陽介は悩んだ。とりあえず、もう一度SNSに謝罪を打ち込む。
焼け石に水かもしれないが、お詫びの品を買っていくことにした。
そのため、陽介は大学の資料が詰め込まれたショルダーバックのほか、両手に食べ物の入った袋を下げていた。すべて自宅最寄りの駅で買ったものだ。
昼食のサンドイッチやら、彼女と共通の好物であるアイスクリームやら、キャラメルポップコーンやらが詰め込まれている。彼女とよく飲むアイスティーも2人分買った。氷たちがなるべく溶けないよう、そして早く瑞月に会って謝れるよう、陽介は炎天下を行軍した。