雲行き崩れて
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「ウソ!? 鳴上お前、引き受けるのぉ!?」
「こっちの世界をやみくもに動き回るのは危険すぎる。なら、案内役としてクマにいてもらった方がいい。……出口だって、クマがいないと出せないしな」
そう言うと、陽介はヒュッと息を飲んだ。悠は彼を安心させるように笑う。
そう、悠には始めから断る選択肢などなかった。テレビの中から出るにはクマの協力が必要不可欠だ。クマは相当切羽詰まった様子だったから、せっかく来た『頼れそうな』悠たちを逃しはしないだろう。そのために出口を封鎖する可能性だってあった。
だから結局、悠たちは要求を飲まざるを得ない。
(それに……もともとこの異世界への入り口を叩いたのは俺がきっかけだ)
テレビの中の世界に行き着いた原因は、もとはといえば悠にある。成り行きは事故だったとしても、最初に頭を突っ込んだのは悠だったという事実は変えられない。しかも今だって、関わらない選択もできたはずなのに、悠はテレビの世界へと足を踏み入れた。クマの要求はその結果だ。
自分の選択が引き寄せたトラブルならば、責任を背負わなければならない。だから悠は頷いた。しかし一つだけ断っておかなければいけないことがある。
ゆえに「ただし」とクマをまっすぐに見つめ、悠はクマに頼み込んだ。
「犯人捜しの件、俺だけが引き受けるようにしてほしい」
「ちょっ、鳴上!? ナニ言い出すんだよ!」
自ら重荷を背負おうとする悠に、陽介が抗議を示す。納得がいかないと歯を食いしばる陽介に向かって、悠はこんこんと理由を説いた。
「もとを辿れば昨日、俺がこの異世界の存在に花村を巻き込んだようなものなんだ。それに万が一、こっちに人を入れてる犯人が山野アナと小西先輩に関係がなかった場合、ただ花村を危険に晒すはめになる。……それはできないよ」
「──! 待てよっ!」
厳かに告げた悠に、陽介が横から鋭く牽制する。陽介は距離を詰め、凛と意志の強い瞳で悠を見据える。
「……今日もともと、鳴上をテレビん中誘ったのは俺だ。お前だけに背負わせるのは筋違いってもんだぜ。……俺も協力するさ、犯人捜し。小西先輩の事件と関係なかったとしてもな」
甘く垂れ目がちの瞳にはたしかに強い決意が宿っていて、悠は目を見張った。どこまでも、花村陽介という人間はお人好しだ。だが、一度死にかけた世界にもう一度関わろうとするなんて度が過ぎている。
「……クマもそんでいいよな?」
振り返って陽介がクマに問う。すると明らかに安堵のため息をついて、クマはあどけない様子で微笑んだ。
「よ、よかったクマー。人数が増えるのはクマとしても大歓迎ね!」
表情を緩めて、パタパタと両手をにぎやかに振る様子は着ぐるみゆえか中々に可愛らしい。どうやらクマとの協力関係は成立したようだ。陽介と悠は互いに頷き合う。
「一応、名乗っとくぞ。俺は花村陽介。で、コイツは鳴上悠」
「ヨースケと、ユウサンクマね。クマは『クマ』クマ!」
「おい待てクマ吉。なんで俺は呼び捨てなんだよ」
「いきなり2回も自慢のクマ毛を乱暴に取り押さえてきたヨースケは、ヨースケがお似合いクマ」
「いきなり馴れ馴れしいなコイツ! ……まあ、話できるようになっただけいいか?」
「……花村、さん?」
「いや鳴上、別にお前に敬称つけてもらいたいワケじゃないからな?」
ヨースケとユウサン、ヨースケとユウサン、とクマは歌うように2人の名前を繰り返している。幼い子供がお気に入りの言葉を口ずさむような微笑ましさに、悠と陽介の頬が思わず緩みそうになる。が、とっさに頭を横に振り、気を引き締めた。
「じゃ、サッキの約束どおり俺たちに協力してもらうかんな? クマ吉」
「クマ、早速で悪いんだけど俺たちの質問に答えてくれないか?」
「ラジャークマ! ドンときんしゃい!」
「こっちの世界をやみくもに動き回るのは危険すぎる。なら、案内役としてクマにいてもらった方がいい。……出口だって、クマがいないと出せないしな」
そう言うと、陽介はヒュッと息を飲んだ。悠は彼を安心させるように笑う。
そう、悠には始めから断る選択肢などなかった。テレビの中から出るにはクマの協力が必要不可欠だ。クマは相当切羽詰まった様子だったから、せっかく来た『頼れそうな』悠たちを逃しはしないだろう。そのために出口を封鎖する可能性だってあった。
だから結局、悠たちは要求を飲まざるを得ない。
(それに……もともとこの異世界への入り口を叩いたのは俺がきっかけだ)
テレビの中の世界に行き着いた原因は、もとはといえば悠にある。成り行きは事故だったとしても、最初に頭を突っ込んだのは悠だったという事実は変えられない。しかも今だって、関わらない選択もできたはずなのに、悠はテレビの世界へと足を踏み入れた。クマの要求はその結果だ。
自分の選択が引き寄せたトラブルならば、責任を背負わなければならない。だから悠は頷いた。しかし一つだけ断っておかなければいけないことがある。
ゆえに「ただし」とクマをまっすぐに見つめ、悠はクマに頼み込んだ。
「犯人捜しの件、俺だけが引き受けるようにしてほしい」
「ちょっ、鳴上!? ナニ言い出すんだよ!」
自ら重荷を背負おうとする悠に、陽介が抗議を示す。納得がいかないと歯を食いしばる陽介に向かって、悠はこんこんと理由を説いた。
「もとを辿れば昨日、俺がこの異世界の存在に花村を巻き込んだようなものなんだ。それに万が一、こっちに人を入れてる犯人が山野アナと小西先輩に関係がなかった場合、ただ花村を危険に晒すはめになる。……それはできないよ」
「──! 待てよっ!」
厳かに告げた悠に、陽介が横から鋭く牽制する。陽介は距離を詰め、凛と意志の強い瞳で悠を見据える。
「……今日もともと、鳴上をテレビん中誘ったのは俺だ。お前だけに背負わせるのは筋違いってもんだぜ。……俺も協力するさ、犯人捜し。小西先輩の事件と関係なかったとしてもな」
甘く垂れ目がちの瞳にはたしかに強い決意が宿っていて、悠は目を見張った。どこまでも、花村陽介という人間はお人好しだ。だが、一度死にかけた世界にもう一度関わろうとするなんて度が過ぎている。
「……クマもそんでいいよな?」
振り返って陽介がクマに問う。すると明らかに安堵のため息をついて、クマはあどけない様子で微笑んだ。
「よ、よかったクマー。人数が増えるのはクマとしても大歓迎ね!」
表情を緩めて、パタパタと両手をにぎやかに振る様子は着ぐるみゆえか中々に可愛らしい。どうやらクマとの協力関係は成立したようだ。陽介と悠は互いに頷き合う。
「一応、名乗っとくぞ。俺は花村陽介。で、コイツは鳴上悠」
「ヨースケと、ユウサンクマね。クマは『クマ』クマ!」
「おい待てクマ吉。なんで俺は呼び捨てなんだよ」
「いきなり2回も自慢のクマ毛を乱暴に取り押さえてきたヨースケは、ヨースケがお似合いクマ」
「いきなり馴れ馴れしいなコイツ! ……まあ、話できるようになっただけいいか?」
「……花村、さん?」
「いや鳴上、別にお前に敬称つけてもらいたいワケじゃないからな?」
ヨースケとユウサン、ヨースケとユウサン、とクマは歌うように2人の名前を繰り返している。幼い子供がお気に入りの言葉を口ずさむような微笑ましさに、悠と陽介の頬が思わず緩みそうになる。が、とっさに頭を横に振り、気を引き締めた。
「じゃ、サッキの約束どおり俺たちに協力してもらうかんな? クマ吉」
「クマ、早速で悪いんだけど俺たちの質問に答えてくれないか?」
「ラジャークマ! ドンときんしゃい!」