雲行き崩れて
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実を言うと、悠が今からテレビの中へ行くのは陽介のためだけではなかった。
『今年、貴方の人生は節目にあり、もし謎が解かれねば、貴方の未来は閉ざされてしまうやもしれません』
青い部屋の住人から、かつて悠は予言を受けた。予言が示す謎と、不可解な連続怪死事件、テレビの中の異世界。それから、己に目覚めた不思議な力──すなわち《ペルソナ》。陽介の推論を聞いたときから、この4つがどうも関連あるように思えてならないのだ。
謎が解けなければ、悠の未来は閉ざされるという。具体的に何が起こるかは明かされていないが、それは悠の死かもしれない。
テレビの中の怪物に襲われたとき、悠は「死」への恐怖を感じた。自分や他者の存在が消失する恐怖。暗い場所に飲み込まれ、自分の存在が余すことなく黒く塗りつぶされる恐怖を。それまで「死」なんて漠然とした存在であったのに。
「死」は嫌だ。悠はまだ生きていたい。それに誰かが死ぬのも御免だった。自分という存在が消えるのも、他人が目の前で消えるのも嫌だ。訳も分からない謎によって、自分や誰かの人生が終わるくらいなら、どんな苦労があったとしても解いてやろうと。
だから、もう一度『謎』を解く鍵があるだろう、あの異世界に行かなければいけないとは分かっていたのだ。
自分が、死なないために。
(……でも本当は、怖かったんだ。あの得体の知れない異世界に一人で行くのが)
行かなければいけないと分かっていても、悠はあの世界に一人で行くのが心細かった。
けれど、そんな悠の目の前で陽介はテレビの中の世界へ行きたいと願った。 悠にとって、これ以上にない都合のいい同行者だ。
だから悠は、陽介が心配で着いていくのではなくて、本当は、
真相を知りたいと願う陽介に便乗して、異世界に行くのだ。
(だから……花村を利用している俺は、お礼なんて言われる立場ではないんだ)
ほの暗い罪悪感を抱きながらも、何気ないふうを装って、悠は陽介が用意した命綱を受け取った。それを悠が身体に括り付けたことを確認すると、陽介は未だ当惑する千枝へと半ば強引に命綱を押しつける。
「待ってってば! 2人とも」
静止する千枝に振り返らず、悠と陽介はテレビに手をかざし、揺らぐ液晶画面のなかに飛び込んだ。呆然とする千枝だけを、一人テレビ売り場に残して。
『今年、貴方の人生は節目にあり、もし謎が解かれねば、貴方の未来は閉ざされてしまうやもしれません』
青い部屋の住人から、かつて悠は予言を受けた。予言が示す謎と、不可解な連続怪死事件、テレビの中の異世界。それから、己に目覚めた不思議な力──すなわち《ペルソナ》。陽介の推論を聞いたときから、この4つがどうも関連あるように思えてならないのだ。
謎が解けなければ、悠の未来は閉ざされるという。具体的に何が起こるかは明かされていないが、それは悠の死かもしれない。
テレビの中の怪物に襲われたとき、悠は「死」への恐怖を感じた。自分や他者の存在が消失する恐怖。暗い場所に飲み込まれ、自分の存在が余すことなく黒く塗りつぶされる恐怖を。それまで「死」なんて漠然とした存在であったのに。
「死」は嫌だ。悠はまだ生きていたい。それに誰かが死ぬのも御免だった。自分という存在が消えるのも、他人が目の前で消えるのも嫌だ。訳も分からない謎によって、自分や誰かの人生が終わるくらいなら、どんな苦労があったとしても解いてやろうと。
だから、もう一度『謎』を解く鍵があるだろう、あの異世界に行かなければいけないとは分かっていたのだ。
自分が、死なないために。
(……でも本当は、怖かったんだ。あの得体の知れない異世界に一人で行くのが)
行かなければいけないと分かっていても、悠はあの世界に一人で行くのが心細かった。
けれど、そんな悠の目の前で陽介はテレビの中の世界へ行きたいと願った。 悠にとって、これ以上にない都合のいい同行者だ。
だから悠は、陽介が心配で着いていくのではなくて、本当は、
真相を知りたいと願う陽介に便乗して、異世界に行くのだ。
(だから……花村を利用している俺は、お礼なんて言われる立場ではないんだ)
ほの暗い罪悪感を抱きながらも、何気ないふうを装って、悠は陽介が用意した命綱を受け取った。それを悠が身体に括り付けたことを確認すると、陽介は未だ当惑する千枝へと半ば強引に命綱を押しつける。
「待ってってば! 2人とも」
静止する千枝に振り返らず、悠と陽介はテレビに手をかざし、揺らぐ液晶画面のなかに飛び込んだ。呆然とする千枝だけを、一人テレビ売り場に残して。