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◇◇◇
────リデイ♪ ヤングライフ♪ ジュ・ネ・ス♪
馴染み深いジュネスの店内BGMが、陽介の意識を浮上させた。仰向けになった視界には、ピカピカとクリアな光を放つ照明と、悠が手を差し入れた——異世界へ迷い込むきっかけとなった──大型のテレビがあった。きょとんとした千枝があたりを見回し、小首をかしげる。
「も、戻ってきた?」
彼女の疑問に答えるかのように、店内放送のチャイムが鳴る。親しみやすい女性の声が流れ出した。
『ただいまより、一階お惣菜売り場にて、恒例のタイムサービスを行います。今夜のおかずにもう一品、ジュネスの朝採り山菜セットはいかがでしょうか』
「げっ、もうそんな時間だったのか」
タイムセールを告げる店内放送はたしかにジュネスのものだ。バイトで聞きなれた陽介が間違えるはずはない。おかげで現実世界に無事帰ってきた安堵より、アルバイターとしてのシビアな時間感覚を刺激した。
体感にすれば数十分程度だが、店内放送から推測するにはるかに長い時間を異世界でさまよっていたらしい。帰ってきたと確信はできたが、せっかくシフトが入っていない自由時間を浪費してしまったと知って、陽介は過ぎた時間を惜しんだ。
「……でも、みんなで帰れて良かった」
「……まぁ、そうだな」
悠が大きく息をつく。その表情には、濃い疲労が滲んでいる。それもその通りだった。なぜなら3人は奇妙な異世界に迷い混んだあげく、正体不明の怪物────クマによれば《シャドウ》というらしい──に殺されかけた。ゆえに陽介は同意を示す。
命なくして、自由な時間など望めないのだと。
ほどなくして、陽介と千枝は立ち上がる。しかし、悠はいまだ座り込んだままだ。その視線は、あるポスターに注がれていた。
「どした鳴上? 具合悪いとか」
「花村……その、あの人型パネルの着物、異世界で見たポスターと同じじゃないか?」
悠が指さしたパネルの人物を見て、陽介は嫌な既視感を覚える。お手製の絞首台。血飛沫のようにペンキがブチ撒かれた壁。そして──壁に何枚も貼り付けられ、すべてが例外なく無残な方法で顔の部分をズタズタにされていた一種類のポスター。異世界を歩いているうちに迷い混んだ殺風景で不気味な部屋にあったソレと似ている。
というよりも、構図から映りこんでいた和服から何から、『演歌道』『みすず』という文字のフォントまでぴったりと一致していた。同じく既視感を覚えたのか、千枝が訝しげにパネルをじっと見つめた。
「あれって、“柊みすず”だよね。山野アナの不倫相手の奥さんだった……ていう……」
「じゃ、ナニか? あのヤバい部屋と死んだ山野アナに、なんか……関係、が……?」
「さっきのクマも『人が放り込まれている』って……いってた、な」
何かの怨念を感じたのか、千枝の顔色がみるみるうちに悪くなる。男子2人も同じく顔を青くした。「だーっ!!」と千枝はがむしゃらに騒いで、陰気な空気を打ち消す。
「やめやめ! この話ここまでにしとこう。あたし、気分悪いし! そもそもあんな気持ち悪いトコもう行かないだろうし」
「そ、そ、そーだよな! ついでに、今日の事まとめて忘れる事にするね、俺。なんかも、ハート的に無理だから、うん」
そそくさと、陽介はバックを持って立ち上がった。瞬間、股間に電気が走ったような衝撃と、なんとも言えない切迫感が陽介を襲う。
そのとき、陽介は思い出した。ひとつだけ忘れてはいけないことがあったということに。
「うわーーーぁ!! 漏るっ漏る~~~~ッ!」
恥も外聞もなく、陽介は飛び上がった。絶句する悠と千枝をよそに、陽介は悶絶して股を押さえる。
「すまん2人とも! 俺はもー限界だ! つーわけで俺は早々に退散すッから、お前ら気ィつけて帰れよ!」
「うっさい! サッサと行きなさいよ!」
千枝に噛みつかれて、陽介は床を蹴った。我慢していたトイレを済ませたら、早く帰って、不気味な体験など寝て忘れてしまうおうと、ジュネスの廊下をひた走る。
────リデイ♪ ヤングライフ♪ ジュ・ネ・ス♪
馴染み深いジュネスの店内BGMが、陽介の意識を浮上させた。仰向けになった視界には、ピカピカとクリアな光を放つ照明と、悠が手を差し入れた——異世界へ迷い込むきっかけとなった──大型のテレビがあった。きょとんとした千枝があたりを見回し、小首をかしげる。
「も、戻ってきた?」
彼女の疑問に答えるかのように、店内放送のチャイムが鳴る。親しみやすい女性の声が流れ出した。
『ただいまより、一階お惣菜売り場にて、恒例のタイムサービスを行います。今夜のおかずにもう一品、ジュネスの朝採り山菜セットはいかがでしょうか』
「げっ、もうそんな時間だったのか」
タイムセールを告げる店内放送はたしかにジュネスのものだ。バイトで聞きなれた陽介が間違えるはずはない。おかげで現実世界に無事帰ってきた安堵より、アルバイターとしてのシビアな時間感覚を刺激した。
体感にすれば数十分程度だが、店内放送から推測するにはるかに長い時間を異世界でさまよっていたらしい。帰ってきたと確信はできたが、せっかくシフトが入っていない自由時間を浪費してしまったと知って、陽介は過ぎた時間を惜しんだ。
「……でも、みんなで帰れて良かった」
「……まぁ、そうだな」
悠が大きく息をつく。その表情には、濃い疲労が滲んでいる。それもその通りだった。なぜなら3人は奇妙な異世界に迷い混んだあげく、正体不明の怪物────クマによれば《シャドウ》というらしい──に殺されかけた。ゆえに陽介は同意を示す。
命なくして、自由な時間など望めないのだと。
ほどなくして、陽介と千枝は立ち上がる。しかし、悠はいまだ座り込んだままだ。その視線は、あるポスターに注がれていた。
「どした鳴上? 具合悪いとか」
「花村……その、あの人型パネルの着物、異世界で見たポスターと同じじゃないか?」
悠が指さしたパネルの人物を見て、陽介は嫌な既視感を覚える。お手製の絞首台。血飛沫のようにペンキがブチ撒かれた壁。そして──壁に何枚も貼り付けられ、すべてが例外なく無残な方法で顔の部分をズタズタにされていた一種類のポスター。異世界を歩いているうちに迷い混んだ殺風景で不気味な部屋にあったソレと似ている。
というよりも、構図から映りこんでいた和服から何から、『演歌道』『みすず』という文字のフォントまでぴったりと一致していた。同じく既視感を覚えたのか、千枝が訝しげにパネルをじっと見つめた。
「あれって、“柊みすず”だよね。山野アナの不倫相手の奥さんだった……ていう……」
「じゃ、ナニか? あのヤバい部屋と死んだ山野アナに、なんか……関係、が……?」
「さっきのクマも『人が放り込まれている』って……いってた、な」
何かの怨念を感じたのか、千枝の顔色がみるみるうちに悪くなる。男子2人も同じく顔を青くした。「だーっ!!」と千枝はがむしゃらに騒いで、陰気な空気を打ち消す。
「やめやめ! この話ここまでにしとこう。あたし、気分悪いし! そもそもあんな気持ち悪いトコもう行かないだろうし」
「そ、そ、そーだよな! ついでに、今日の事まとめて忘れる事にするね、俺。なんかも、ハート的に無理だから、うん」
そそくさと、陽介はバックを持って立ち上がった。瞬間、股間に電気が走ったような衝撃と、なんとも言えない切迫感が陽介を襲う。
そのとき、陽介は思い出した。ひとつだけ忘れてはいけないことがあったということに。
「うわーーーぁ!! 漏るっ漏る~~~~ッ!」
恥も外聞もなく、陽介は飛び上がった。絶句する悠と千枝をよそに、陽介は悶絶して股を押さえる。
「すまん2人とも! 俺はもー限界だ! つーわけで俺は早々に退散すッから、お前ら気ィつけて帰れよ!」
「うっさい! サッサと行きなさいよ!」
千枝に噛みつかれて、陽介は床を蹴った。我慢していたトイレを済ませたら、早く帰って、不気味な体験など寝て忘れてしまうおうと、ジュネスの廊下をひた走る。