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 幸運にも、ほどなくして千枝は起き上がった。

「う、うーん。ここは……? というか、さっきまでいたヘンなクマは?」

 上体を起こしたまま、千枝は所在なげに言葉をこぼす。怪物に襲われたショックで前後の記憶がないのだろう。途中で途切れた記憶に混乱する千枝に、悠と陽介は事情をかいつまんで説明する。

「それがさ……怪物に襲われたんだけど、鳴上が撃退してくれたんだよ」
「へっ? そうなの? 全然覚えてない。ってか、鳴上くんってすごい強いんだねぇ……」
「それよりも、里中は怪我とかしてないか? 勢いよく走りすぎて転んで頭打ったみたいだから」

 悠は怪物に舐められたという事実は告げない。女の子が怪物の涎でベタベタにされたなんて、フツーに考えてトラウマ級の体験だ。この件については言わないよう男2人で口裏を合わせてある。
 千枝はペタペタを自分の身体を触る。そうして浮かない顔になった。

「うーん、頭も身体も大丈夫だとは思うんだけど……なんか、身体がダルい……かな」
「里中もか。俺もアタマと下腹部がだっりーわ」
「アンタまた漏らすとか言わないでよ」

 千枝がキッと陽介を睨みつける。あせあせと滑稽に陽介は両手を上げた。下ネタに頼る是非は置いておき、ツッコミができる元気はあるようだと陽介は密かに息を吐く。ついでに怪物の話題を逸らす目論みも叶った。

「もしかすると、この霧の影響かもしれないな。視界が遮られていることで、ストレスがかかったのかも」

 陽介のつくった流れを、悠が巧みに利用する。すると、千枝が眉を下げて表情を曇らせた。

「なら、はやく帰ろ。こんなトコ長くいたら、絶対生き倒れるし」
「それは鳴上と話してたとこ。そんで、さっきのスタジオみたいなトコに戻ろうって。あの妙ちくりんなクマ、覚えてっか?」
「うん。スタジオみたいなトコで会って、それでアタシら、ビックリして逃げてきて、その先でまた会った……んだったよね」

 千枝の不安げな物言いを、悠はしっかりと頷いて肯定する。

「だから、俺が先頭になって。さっきのスタジオに戻ろうって」
「え……。でも大丈夫? 霧スゴくて周り見えないんじゃない?」
「実はな……」

 悠は意味ありげに装着していた眼鏡をかけ直す。すると千枝は、不思議そうに首を傾げた。学校では裸眼で過ごしていた鳴上が、どうしていきなり眼鏡をかけているのか気になったのだろう。

「さっきのクマからもらったメガネ、霧の中を見通す効果があるみたいなんだ」

 霧を通すという眼鏡をかけた悠を先頭に、3人は来た道を引き返す。陽介も一度かけさせてもらったが、眼鏡の効果は本物だった。重くまとわりつくかのように濃い霧が、たちどころに薄くなり、遮られて見えなかった周囲の事物が浮き彫りになる。

(にしても……むちゃくちゃな世界だな)

 眼鏡を通じて見た世界に、陽介はそんな感想を抱いた。マンションや信号機といった現代的な物品が確認できたと思えば、ハニワや現代ではほぼ絶滅危惧種となったダイアル式のテレビが投げ捨てられていたりする。

 言ってしまえば、散乱するスクラップに脈絡がないのだ。個人の嗜好も、文明的な空気も、そうした個人が生きる周りを取り囲んだ思想や時代背景をゴチャゴチャにしたといえばいいのだろうか。

(なんていうか……ゴミ置き場みたいだ)

 統一性なく、多種多様なスクラップが投げ捨てられる集積場、巨大なゴミ山。そうした要らなくなったモノ、見たくないモノたちを濃い霧が蓋をするように覆い隠している。

 見てはいけないよ。
 見てはいけないよ。と黙して語るかのように。

(とにかく……入って良い場所じゃあないよな)

 そう結論づけて、陽介は前を行く悠の背を追いかける。
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