動き出す運命
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3人が他愛ない話をするなか、唐突に千枝がため息をつく。さっきまで唐揚げに舌鼓を打っていたというのに、唐突に肩を落とした彼女はピックをさ迷わせた。すかさず、陽介も首をかしげる。
「どした里中? 唐揚げが旨すぎて、食べ過ぎたこと後悔しちまった?」
「うっさい花村。遠回しに『太る』っつってんなら、とんだ勘違いよ。肉は筋肉になってエネルギーつかってくれるって瑞月ちゃん言ってたんだから」
少々デリカシーにかけるからかいを、千枝はスパンと切った。唐揚げをつまみながら、千枝は寂しそうに告げる。
「……雪子も来れればよかったなぁって。旅館の手伝いがあるからって帰っちゃって……まぁ、仕方ないけどさ。シーズン明けたからまた遊べると思ったんだけど……」
あぁ、と悠は彼女の消沈ぶりに納得する。
雪子とは、クラスメイト”天城雪子”のことだ。地元の老舗旅館”天城屋旅館”の一人娘であり、千枝とは幼馴染みで親友でもある。
帰り際、彼女も悠の歓迎会に誘ったのだが家の手伝いを理由に断られた。それを千枝は気にしているのだろう。シオシオとドリンクを啜る彼女を陽介がなだめる。
「旅館の”次期女将”なんだろ。修行とか、家の事情があるなら仕方ないさ」
「にしても、なんかトックベツテンション低かったんだよね~。一緒に肉を食べれば雪子も元気になると思ったんだけどさ~」
「いやいや、お前みてーな肉食獣と一緒にすんなや。天城なら和菓子とかさ。そういや沖奈に和風の菓子屋できてたぞ」
「肉食獣ゆーなや! でもま、そだね。今度、瑞月ちゃんも誘って行ってみようかな」
「……あー、アイツな。いんじゃね? 甘いもん好きだし、楽しんでこいよ」
不参加といえば、瑞月もだった。佳菜の小学校からパトロールの要請を受けた母親の代わりに、家事を担うべく雪子と帰ってしまった。瑞月の名前に、陽介が心配そうに眉を下げる。なにやら落ち込んだ雰囲気の2人に、悠は慌てて話題を探した。
「それにしても、すごい人だなジュネス 。平日なのに結構人いるし」
「まぁね。八十稲羽 いらじゃ一番品揃えいい店だから。食べ物から洋服から、果ては洗濯機までぜーんぶ扱ってるからさ」
千枝がジュネスのフードコートを見渡す。かなり開けた空間のはずが、人足が絶えないせいか、ちょっとしたテーマパークに劣らない賑わいがある。曇天の元、母親の買い物でも付き添っていたのか、幼い子供が嬉しそうにソフトクリームを舐めている。ドヤッと、どこかで楽しそうな笑い声が上がった。千枝は続ける。
「できてまだ半年だけど、大抵のものは揃っちゃうから皆ココで買い物しちゃうんだよね。地元の商店街なんか全然行かないで……あ」
「…………別に、ここだけのせいって事ないだろ?」
「ご、ごめん……」
相手をしていた陽介の声がにわかに険しくなる。千枝も口ごもって、気まずそうに陽介を見つめた。するとハッとした陽介は、無理矢理に口角を上げた。
「ま、まぁ、それだけココが便利っつーコトでさ、ご贔屓よろしくな! おふたりさん」
そうは言うが、どこか張りつけたような空元気が否めない。
「ああ、そうさせてもらうよ。ここのお総菜、美味しいしな」
だから悠は陽介の流れに乗ることにした。流して微妙な空気になるより、無理矢理作った明るさに乗ったほうがいい。悠は唐揚げをつまみながら、さりげなく告げる。
すると陽介は、ちょっと目を見張ってからぎこちなかった頬を緩めた。自然な笑みには安堵が含まれて、人間らしいあたたかみがあった。
「おう、ジュネス八十稲羽店をよろしくってな!」
屈託のない笑みに悠もほっとする。そして、同時に商店街に関わる話題は、陽介にとって微妙なものらしいと。フランクフルトをパクつきながら、気を付けようと悠は思う。
「どした里中? 唐揚げが旨すぎて、食べ過ぎたこと後悔しちまった?」
「うっさい花村。遠回しに『太る』っつってんなら、とんだ勘違いよ。肉は筋肉になってエネルギーつかってくれるって瑞月ちゃん言ってたんだから」
少々デリカシーにかけるからかいを、千枝はスパンと切った。唐揚げをつまみながら、千枝は寂しそうに告げる。
「……雪子も来れればよかったなぁって。旅館の手伝いがあるからって帰っちゃって……まぁ、仕方ないけどさ。シーズン明けたからまた遊べると思ったんだけど……」
あぁ、と悠は彼女の消沈ぶりに納得する。
雪子とは、クラスメイト”天城雪子”のことだ。地元の老舗旅館”天城屋旅館”の一人娘であり、千枝とは幼馴染みで親友でもある。
帰り際、彼女も悠の歓迎会に誘ったのだが家の手伝いを理由に断られた。それを千枝は気にしているのだろう。シオシオとドリンクを啜る彼女を陽介がなだめる。
「旅館の”次期女将”なんだろ。修行とか、家の事情があるなら仕方ないさ」
「にしても、なんかトックベツテンション低かったんだよね~。一緒に肉を食べれば雪子も元気になると思ったんだけどさ~」
「いやいや、お前みてーな肉食獣と一緒にすんなや。天城なら和菓子とかさ。そういや沖奈に和風の菓子屋できてたぞ」
「肉食獣ゆーなや! でもま、そだね。今度、瑞月ちゃんも誘って行ってみようかな」
「……あー、アイツな。いんじゃね? 甘いもん好きだし、楽しんでこいよ」
不参加といえば、瑞月もだった。佳菜の小学校からパトロールの要請を受けた母親の代わりに、家事を担うべく雪子と帰ってしまった。瑞月の名前に、陽介が心配そうに眉を下げる。なにやら落ち込んだ雰囲気の2人に、悠は慌てて話題を探した。
「それにしても、すごい人だな
「まぁね。
千枝がジュネスのフードコートを見渡す。かなり開けた空間のはずが、人足が絶えないせいか、ちょっとしたテーマパークに劣らない賑わいがある。曇天の元、母親の買い物でも付き添っていたのか、幼い子供が嬉しそうにソフトクリームを舐めている。ドヤッと、どこかで楽しそうな笑い声が上がった。千枝は続ける。
「できてまだ半年だけど、大抵のものは揃っちゃうから皆ココで買い物しちゃうんだよね。地元の商店街なんか全然行かないで……あ」
「…………別に、ここだけのせいって事ないだろ?」
「ご、ごめん……」
相手をしていた陽介の声がにわかに険しくなる。千枝も口ごもって、気まずそうに陽介を見つめた。するとハッとした陽介は、無理矢理に口角を上げた。
「ま、まぁ、それだけココが便利っつーコトでさ、ご贔屓よろしくな! おふたりさん」
そうは言うが、どこか張りつけたような空元気が否めない。
「ああ、そうさせてもらうよ。ここのお総菜、美味しいしな」
だから悠は陽介の流れに乗ることにした。流して微妙な空気になるより、無理矢理作った明るさに乗ったほうがいい。悠は唐揚げをつまみながら、さりげなく告げる。
すると陽介は、ちょっと目を見張ってからぎこちなかった頬を緩めた。自然な笑みには安堵が含まれて、人間らしいあたたかみがあった。
「おう、ジュネス八十稲羽店をよろしくってな!」
屈託のない笑みに悠もほっとする。そして、同時に商店街に関わる話題は、陽介にとって微妙なものらしいと。フランクフルトをパクつきながら、気を付けようと悠は思う。