サンストーンのあなた
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氷の斧槍 が、シャドウを切り裂く。瑞月と対峙するシャドウは他愛のない雑魚だ。しかし油断は絶対にしない。攻撃に怯んだ隙をついて、瑞月は青いカードを握りつぶす。
「出でませ」
——デビルスマイル
瑞月のペルソナが立ち出でる。己の分身である異形の力を受けて、シャドウたちは熱病に当てられた狂人のごとくキリキリ舞う。間髪入れず、瑞月のペルソナが動いた。冷血に、傲慢に、暴君の瞳を持って、瑞月はシャドウたちを見下ろす。
「死地に沈め」
——亡者の嘆き
シャドウたちがもがき苦しみ息絶える。狂乱の中、瑞月は踊るように斧槍を振るった。即死技を免れた残党の首を刎ね、胸を穿ち、四肢を断つ。死神となった瑞月のまわり一帯は、シャドウたちの物言わぬ骸だけが散らばる。殲滅完了。
瑞月は走り出すと同時に、再びペルソナを召喚した。冷気が満ち、数人が通過できる幅を取って巨大な氷の双璧がそびえたつ。瑞月の後方にあった氷壁と接着し、氷で囲われた歩廊が完成した。瑞月を追ってくる仲間たちを守るための簡素な城壁であり、道標でもある。
わずかな光を反射する氷壁は、うす暗い第2迷宮『ごーこんきっさ 4次会』の隠し通路も照らしてくれるはずだ。
仲間を待つことなく、瑞月は床を蹴った。震える手のひらに力を込めて、彼女は斧槍を握りなおす。脳裏を過ぎるのは、奈落に吸い込まれながらも瑞月に笑いかけてくれた最愛の人——花村陽介の姿。
彼らを救出すべく、瑞月は隠し通路を一人で駆け抜けている。
瑞月が隠し通路に突入する前、不気味な極彩色のテディベアが飾られたオブジェの間にて。突如として出現した2つの奈落が、探索リーダーの鳴上悠と、彼の『運命の相手』に選ばれた花村陽介を飲み込んだのである。
真っ黒な穴は、陽介たちを吸い込むとすぐに閉じて、瑞月はその前に片膝をついて項垂れた。陽介を、守れなかった。瑞月は目の前の虚ろな空間に押し潰されそうになった。
打ちひしがれる瑞月をより戻したのが、暗闇に吸い込まれる最中に残した陽介の仕草だ。心が折れぬようにと、瑞月は行方知れずの人の名を喉から絞り出す。
「おまえさま……! 花村……!」
陽介は笑っていた。瑞月に向かって。まるで、怖がる子供を大丈夫だと安心させるように。
親指を、励ますように立てていた。縋るために伸ばしたはずの手のひらを精一杯握りしめて。
彼の笑顔を思い出すと、瑞月の胸は刺すようなひどい痛みに締め付けられる。
陽介の喪失が、瑞月は何よりも恐ろしい。彼を失うくらいなら、瑞月は自分の心臓を抉られた方がマシだ。陽介が奈落に落ちていく瞬間、衝動のまま、叫びたかった。
けれど、行き先も分からない場所に落ちていく陽介は、瑞月などよりもずっと強く、恐怖と混乱に白く頭を塗りつぶされたはずだ。
それなのに、陽介は微笑んでくれた。瑞月を安心させるように。悲しまないで、と訴えるように。
ならば、瑞月が無力感に打ちひしがれて立ち止まるのは、きっと正しくない。陽介の優しさに報えない。片膝をついている場合ではなかった。遠くに行ってしまったのなら、追いかけるまでだ。たとえ、花村が地の底にいるとしても。
さいわいにも、もう一人の自分の力が陽介の居場所を示している。『どうか無事で』と祈りながら、瑞月は暗がりをひた走る。その足取りに、迷いはない。
「出でませ」
——デビルスマイル
瑞月のペルソナが立ち出でる。己の分身である異形の力を受けて、シャドウたちは熱病に当てられた狂人のごとくキリキリ舞う。間髪入れず、瑞月のペルソナが動いた。冷血に、傲慢に、暴君の瞳を持って、瑞月はシャドウたちを見下ろす。
「死地に沈め」
——亡者の嘆き
シャドウたちがもがき苦しみ息絶える。狂乱の中、瑞月は踊るように斧槍を振るった。即死技を免れた残党の首を刎ね、胸を穿ち、四肢を断つ。死神となった瑞月のまわり一帯は、シャドウたちの物言わぬ骸だけが散らばる。殲滅完了。
瑞月は走り出すと同時に、再びペルソナを召喚した。冷気が満ち、数人が通過できる幅を取って巨大な氷の双璧がそびえたつ。瑞月の後方にあった氷壁と接着し、氷で囲われた歩廊が完成した。瑞月を追ってくる仲間たちを守るための簡素な城壁であり、道標でもある。
わずかな光を反射する氷壁は、うす暗い第2迷宮『ごーこんきっさ 4次会』の隠し通路も照らしてくれるはずだ。
仲間を待つことなく、瑞月は床を蹴った。震える手のひらに力を込めて、彼女は斧槍を握りなおす。脳裏を過ぎるのは、奈落に吸い込まれながらも瑞月に笑いかけてくれた最愛の人——花村陽介の姿。
彼らを救出すべく、瑞月は隠し通路を一人で駆け抜けている。
瑞月が隠し通路に突入する前、不気味な極彩色のテディベアが飾られたオブジェの間にて。突如として出現した2つの奈落が、探索リーダーの鳴上悠と、彼の『運命の相手』に選ばれた花村陽介を飲み込んだのである。
真っ黒な穴は、陽介たちを吸い込むとすぐに閉じて、瑞月はその前に片膝をついて項垂れた。陽介を、守れなかった。瑞月は目の前の虚ろな空間に押し潰されそうになった。
打ちひしがれる瑞月をより戻したのが、暗闇に吸い込まれる最中に残した陽介の仕草だ。心が折れぬようにと、瑞月は行方知れずの人の名を喉から絞り出す。
「おまえさま……! 花村……!」
陽介は笑っていた。瑞月に向かって。まるで、怖がる子供を大丈夫だと安心させるように。
親指を、励ますように立てていた。縋るために伸ばしたはずの手のひらを精一杯握りしめて。
彼の笑顔を思い出すと、瑞月の胸は刺すようなひどい痛みに締め付けられる。
陽介の喪失が、瑞月は何よりも恐ろしい。彼を失うくらいなら、瑞月は自分の心臓を抉られた方がマシだ。陽介が奈落に落ちていく瞬間、衝動のまま、叫びたかった。
けれど、行き先も分からない場所に落ちていく陽介は、瑞月などよりもずっと強く、恐怖と混乱に白く頭を塗りつぶされたはずだ。
それなのに、陽介は微笑んでくれた。瑞月を安心させるように。悲しまないで、と訴えるように。
ならば、瑞月が無力感に打ちひしがれて立ち止まるのは、きっと正しくない。陽介の優しさに報えない。片膝をついている場合ではなかった。遠くに行ってしまったのなら、追いかけるまでだ。たとえ、花村が地の底にいるとしても。
さいわいにも、もう一人の自分の力が陽介の居場所を示している。『どうか無事で』と祈りながら、瑞月は暗がりをひた走る。その足取りに、迷いはない。