大事なこと
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「ヨースケは、おヨメさんだもんね!」
「はい?」
能天気なクマの発言に、陽介が固まった。
リーダーである俺はとりあえず口を出さない。
今はテレビ探索の休憩時間で、特捜隊メンバーの隊列を考えていたのだ。この場を外している彼女のサポートに陽介が回るという話をしていたところ、クマが割り込んできた。
お嫁さんということは、嫁ぎ先があるわけで。
ハッと顔をあげた陽介が目をかッ開いて赤くなった。
「何言ってんだクマ吉!?」
途端に焦った陽介がマシンガントークで反論を並べ立てる。
きっと、一途な彼女を思い浮かべたのだろう。
「お嫁さんってのは、女の子がなるもんだろーがっ!! 俺、男よ!? ついてるからな! どこらへんが嫁になるっつんだクマ!」
「最近のテレビでは、男の子もヨメになるって言ってたクマよ?」
「放送リンリ仕事して!!」
ぎゃんぎゃん騒ぐジュネスコンビをよそに、俺を含む他メンバーは神妙に黙ってしまう。
沈黙は是なり。
ペルソナが前衛向きの彼女と組むと、陽介は追撃や風による補助を請け負うことが多かった。彼女に攻撃を任せながらも自身はサポートを徹底する健気さは、たしかによくできたお嫁さんのようだと思わなくもない。
のらりくらりと反論をかわすクマに、痺れを切らした陽介が彼女の去った方角を指さす。
「生活能力的にも性別的にも、あいつの方が嫁だろうがッ!?」
「「「「「「「あ」」」」」」」
「へっ? ……!!」
そこには棒立ちになる彼女がいた。示し合わせず、みんなでハモる。さすが陽介、運がない。
タチが悪い冗談を嫌う彼女から冷静な突っ込みが飛ぶかな、という俺の予想は外れた。
陽介に向けられた彼女の瞳がかじわりと潤む。混乱が極地に達したのか、ゆでガニよろしく彼女は顔から蒸気を吹き出した。
「よ、よめ……?」
彼女は発音方法を忘れてしまったらしい。動きのぎこちない唇を片手で覆い隠そうとしている。
そうだ。彼女は片想いの相手──陽介に関しては、思考が平常から外れてしまうのだ。
陽介への想いには素直な彼女のことだから、意中の相手に大声で「嫁」と言われたら、冗談と流せず、それはもう照れるに決まっていた。
かたや陽介は、額からどっと汗を吹き出してすごい顔をしている。息を吸ったはずみで陽介の喉がヒュッと鳴った。
「ち、違うかんなっ。お前のこと、全っ然そんな風に見てねーから!!」
変化は劇的だった。彼女は怒られた猫のようにシュンとうなだれる。あまりの落胆ぶりに垂れた猫耳の幻が見えた。ショックが取り繕えていない。
どうしてそんな言い方をしてしまうんだ陽介。お前も彼女に好意を抱いているというのに。往生際が悪い。
「そ、そうか。冗談だったか……。すまないが、席を外す」
彼女は足早に踵を返した。隣の陽介は口元を押さえて青ざめている。そんなガッカリな親友に、俺は眉をしかめて一言。
「意気地なし」「ヘタレ」「最低」「先輩、漢じゃねぇッス」「ヨヨヨヨースケェ……」「花村先輩、ひどい」「ガッカリ王子、ですね……」「コン……」
「総攻撃!」
非難の嵐にキツネまでもが参戦した。全員容赦がない。言葉がキツくなってしまうけれど、陽介の親友ゆえに俺は言わねばならなかった。
「陽介、心にもないことを言ったままでいいのか? ……時間はまだあるから」
漢なら潔く謝ってこいと直接言わなくとも、情に厚い俺の親友はわかっている。
俺がやるべきは、迷った親友の背中を押してやるだけでいい。
彼は大事なことから目を逸らさない男なのだから。
俺が軽く肩を叩くと、陽介は勢いよく顔をあげた。「サンキュ」と一声残し、去った彼女を追いかけていく。
「りせ、捕捉は任せた」
「おっけー♪ カンゼオン!」
りせがペルソナを召喚する。数分後、スクカジャ使用で俺は陽介を追跡した。
大勢で押し掛けると気付かれてしまうから、りせたちは通信で成り行きを見守るらしい。
シャドウの奇襲といった、不測の事態への備えである。
決して野次馬ではない。決して。
「はい?」
能天気なクマの発言に、陽介が固まった。
リーダーである俺はとりあえず口を出さない。
今はテレビ探索の休憩時間で、特捜隊メンバーの隊列を考えていたのだ。この場を外している彼女のサポートに陽介が回るという話をしていたところ、クマが割り込んできた。
お嫁さんということは、嫁ぎ先があるわけで。
ハッと顔をあげた陽介が目をかッ開いて赤くなった。
「何言ってんだクマ吉!?」
途端に焦った陽介がマシンガントークで反論を並べ立てる。
きっと、一途な彼女を思い浮かべたのだろう。
「お嫁さんってのは、女の子がなるもんだろーがっ!! 俺、男よ!? ついてるからな! どこらへんが嫁になるっつんだクマ!」
「最近のテレビでは、男の子もヨメになるって言ってたクマよ?」
「放送リンリ仕事して!!」
ぎゃんぎゃん騒ぐジュネスコンビをよそに、俺を含む他メンバーは神妙に黙ってしまう。
沈黙は是なり。
ペルソナが前衛向きの彼女と組むと、陽介は追撃や風による補助を請け負うことが多かった。彼女に攻撃を任せながらも自身はサポートを徹底する健気さは、たしかによくできたお嫁さんのようだと思わなくもない。
のらりくらりと反論をかわすクマに、痺れを切らした陽介が彼女の去った方角を指さす。
「生活能力的にも性別的にも、あいつの方が嫁だろうがッ!?」
「「「「「「「あ」」」」」」」
「へっ? ……!!」
そこには棒立ちになる彼女がいた。示し合わせず、みんなでハモる。さすが陽介、運がない。
タチが悪い冗談を嫌う彼女から冷静な突っ込みが飛ぶかな、という俺の予想は外れた。
陽介に向けられた彼女の瞳がかじわりと潤む。混乱が極地に達したのか、ゆでガニよろしく彼女は顔から蒸気を吹き出した。
「よ、よめ……?」
彼女は発音方法を忘れてしまったらしい。動きのぎこちない唇を片手で覆い隠そうとしている。
そうだ。彼女は片想いの相手──陽介に関しては、思考が平常から外れてしまうのだ。
陽介への想いには素直な彼女のことだから、意中の相手に大声で「嫁」と言われたら、冗談と流せず、それはもう照れるに決まっていた。
かたや陽介は、額からどっと汗を吹き出してすごい顔をしている。息を吸ったはずみで陽介の喉がヒュッと鳴った。
「ち、違うかんなっ。お前のこと、全っ然そんな風に見てねーから!!」
変化は劇的だった。彼女は怒られた猫のようにシュンとうなだれる。あまりの落胆ぶりに垂れた猫耳の幻が見えた。ショックが取り繕えていない。
どうしてそんな言い方をしてしまうんだ陽介。お前も彼女に好意を抱いているというのに。往生際が悪い。
「そ、そうか。冗談だったか……。すまないが、席を外す」
彼女は足早に踵を返した。隣の陽介は口元を押さえて青ざめている。そんなガッカリな親友に、俺は眉をしかめて一言。
「意気地なし」「ヘタレ」「最低」「先輩、漢じゃねぇッス」「ヨヨヨヨースケェ……」「花村先輩、ひどい」「ガッカリ王子、ですね……」「コン……」
「総攻撃!」
非難の嵐にキツネまでもが参戦した。全員容赦がない。言葉がキツくなってしまうけれど、陽介の親友ゆえに俺は言わねばならなかった。
「陽介、心にもないことを言ったままでいいのか? ……時間はまだあるから」
漢なら潔く謝ってこいと直接言わなくとも、情に厚い俺の親友はわかっている。
俺がやるべきは、迷った親友の背中を押してやるだけでいい。
彼は大事なことから目を逸らさない男なのだから。
俺が軽く肩を叩くと、陽介は勢いよく顔をあげた。「サンキュ」と一声残し、去った彼女を追いかけていく。
「りせ、捕捉は任せた」
「おっけー♪ カンゼオン!」
りせがペルソナを召喚する。数分後、スクカジャ使用で俺は陽介を追跡した。
大勢で押し掛けると気付かれてしまうから、りせたちは通信で成り行きを見守るらしい。
シャドウの奇襲といった、不測の事態への備えである。
決して野次馬ではない。決して。