falling down
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瑞月は自身のケータイを眺めて鼻歌を歌う。彼女が熱心にのぞき込む液晶画面には、陽介と瑞月が横並びで写っていた。瑞月は打掛を羽織っているので、なんちゃって婚礼写真である。陽介は瑞月の隣で、照れくさそうに頬をかいていた。
照れた陽介がケータイを貸してくれないと分かると、ヨナガヒメは大の字で花畑に寝っころがった。絢爛な着物に草を引っ付けて盛大にゴネたのである。強硬手段にもほどがある。
結局、瑞月のケータイをヨナガヒメに貸した。撮影を終えて、ケータイを瑞月へ返したヨナガヒメは、元気よく袖を振って瑞月の心へと帰っていった。
「なぁ瀬名、その写真——」
「消さないからな。このツーショット写真は私のものだ」
「ちっげーよ! おまえはソレ撮ってよかったのかって聞いてるの!」
「好きな人とのツーショット写真だ。撮って良かったに決まってるだろう?」
瑞月はさも当然のごとく告げた。ヨナガヒメは瑞月の一部だ。婚礼写真を撮りたかった瑞月の望みは、瑞月が思っていた以上に強く根を張ってヨナガヒメにも伝わっていたらしい。
言葉に詰まった陽介は、瑞月から顔をそむけた。しかし、ある部分の変化を瑞月は見逃さなかった。
「おまえさま、耳が真っ赤なのだが」
「!? ちっくしょ、見えてんのかよっ」
「ふふふっ、おまえさまは隠し事が下手よなぁ。ヘッドホンを使えばいいものを。そういう正直なところも好きだ」
「ああああぁ……。どーせ俺はツメが甘いですよッ」
「ところで花村」
「なんだよ。これ以上からかうのはご法度だぜ。俺泣いちゃう」
「着物、似合っていたか?」
不意に、瑞月はかしこまって問いかけた。瑞月の頬に、かすかに熱が集まる。からかいを止め、陽介にまっすぐ身体を向ける。あーうーと唸ったのち、陽介は頭を掻きながら応えた。
「……似合ってたよ。男モノのスーツなんかより、断然」
「ふふっ、そうか。花村の目にかなったのなら、これほど嬉しいことはない」
陽介の言葉を聞き届け、瑞月の内で喜びがコンコンと湧き出る。それは声となって、ころころと瑞月の喉を鳴らした。陽介はというと、笑い続ける瑞月に文句を言わずに眺めている。彼の瞳は、温かい色をたたえて瑞月を映していた。
笑いに笑った瑞月は、陽介の片手を取った。そうして彼女は陽介の手を引く。まるで、踊りに誘うかのような流れる手つきで。
「行こうか」
「え……あ!」
瑞月が走り出す。つられて、陽介の足も動いた。陽介が転ばないように、瑞月がスピードを調整して、瑞月と陽介は花畑の中を走り出す。
「それと、花村」
「な、なに?」
「ウェルカムボードの前で告げたこと、私は本気ゆえな」
「それって…………ッ!」
『花村、結婚写真を撮るときの衣装は一緒に選ぼう。私もおまえさまのウェディングスーツ姿が楽しみだ』
瞬間、瑞月は陽介へと振り返る。これからが楽しくて仕方ないと語るように、希望に溢れた瑞月の笑みが陽介の瞳に映し出されていた。陽介と、そしてみんなと元の世界に帰るのだと、瑞月は陽介の手を握りなおす。光指す出口までの道を2人はつまづくことなく駆けていった。
照れた陽介がケータイを貸してくれないと分かると、ヨナガヒメは大の字で花畑に寝っころがった。絢爛な着物に草を引っ付けて盛大にゴネたのである。強硬手段にもほどがある。
結局、瑞月のケータイをヨナガヒメに貸した。撮影を終えて、ケータイを瑞月へ返したヨナガヒメは、元気よく袖を振って瑞月の心へと帰っていった。
「なぁ瀬名、その写真——」
「消さないからな。このツーショット写真は私のものだ」
「ちっげーよ! おまえはソレ撮ってよかったのかって聞いてるの!」
「好きな人とのツーショット写真だ。撮って良かったに決まってるだろう?」
瑞月はさも当然のごとく告げた。ヨナガヒメは瑞月の一部だ。婚礼写真を撮りたかった瑞月の望みは、瑞月が思っていた以上に強く根を張ってヨナガヒメにも伝わっていたらしい。
言葉に詰まった陽介は、瑞月から顔をそむけた。しかし、ある部分の変化を瑞月は見逃さなかった。
「おまえさま、耳が真っ赤なのだが」
「!? ちっくしょ、見えてんのかよっ」
「ふふふっ、おまえさまは隠し事が下手よなぁ。ヘッドホンを使えばいいものを。そういう正直なところも好きだ」
「ああああぁ……。どーせ俺はツメが甘いですよッ」
「ところで花村」
「なんだよ。これ以上からかうのはご法度だぜ。俺泣いちゃう」
「着物、似合っていたか?」
不意に、瑞月はかしこまって問いかけた。瑞月の頬に、かすかに熱が集まる。からかいを止め、陽介にまっすぐ身体を向ける。あーうーと唸ったのち、陽介は頭を掻きながら応えた。
「……似合ってたよ。男モノのスーツなんかより、断然」
「ふふっ、そうか。花村の目にかなったのなら、これほど嬉しいことはない」
陽介の言葉を聞き届け、瑞月の内で喜びがコンコンと湧き出る。それは声となって、ころころと瑞月の喉を鳴らした。陽介はというと、笑い続ける瑞月に文句を言わずに眺めている。彼の瞳は、温かい色をたたえて瑞月を映していた。
笑いに笑った瑞月は、陽介の片手を取った。そうして彼女は陽介の手を引く。まるで、踊りに誘うかのような流れる手つきで。
「行こうか」
「え……あ!」
瑞月が走り出す。つられて、陽介の足も動いた。陽介が転ばないように、瑞月がスピードを調整して、瑞月と陽介は花畑の中を走り出す。
「それと、花村」
「な、なに?」
「ウェルカムボードの前で告げたこと、私は本気ゆえな」
「それって…………ッ!」
『花村、結婚写真を撮るときの衣装は一緒に選ぼう。私もおまえさまのウェディングスーツ姿が楽しみだ』
瞬間、瑞月は陽介へと振り返る。これからが楽しくて仕方ないと語るように、希望に溢れた瑞月の笑みが陽介の瞳に映し出されていた。陽介と、そしてみんなと元の世界に帰るのだと、瑞月は陽介の手を握りなおす。光指す出口までの道を2人はつまづくことなく駆けていった。