falling down
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ゆらゆらと不安定に揺れる陽介の瞳が、縋るように瑞月を見つめる。迷うことなく、瑞月はそれを受け止めた。沈黙がしばらく続いたあと、陽介は遠慮がちに口を開いた。
「……悠とお前が『運命の相手』同士に選ばれて、モヤッとした」
「うん」
「このウェルカムボードを見てさ、『お似合いだな』って思っちまったんだよ。その事実が苦しくて、相棒である悠に嫉妬した。あのヘンテコな写真も、敵のせいだから仕方ないって頭では分かってる。けど、嫉妬した自分がいたのは事実で、そんな自分が情けねぇなって……俺はお前の友達でしかないのに」
瑞月と陽介は付き合っていない。同じ想いを向けていると、お互いに分かってはいる。しかし、事件に対してケジメを付けたいから、2人が望む関係には至っていないのだ。それは、端から見れば、とても不安定で曖昧な関係に見えるのだろう。
だからこそ、陽介を離さないと、彼をつかむ両の手に瑞月は力を込める。
「そうだな。『まだ』だが」
「おま……俺はマジで——」
「私だって本気だ」
瑞月は毅然と背を伸ばして、陽介を見据える。悠に嫉妬したと、陽介の言葉は事実だろう。しかしすべてではない。言葉の奥に、深く隠した自身への劣等感がある。ならば瑞月がすべきことは、悠を引き合いに陽介を褒めることではない。陽介の存在を、瑞月が認めることだ。
「私が花村に言うべきは2つ。 1つ、花村は情けない、無力な男ではない。至らない自分や欠点を自覚して、それでも前に進もうと全力でもがくおまえさまは、決して情けなくなどない。私が愛する花村そのものだ。そして、おまえさまがそうやって足掻いて、手に入れたものが、成したことが確かにある。何もないなどと、私と鳴上とみんなが言わせない」
特捜隊の結成も、誘拐の被害者たちの救出も、確実に彼は関わって成し遂げている。往生際悪く否定するのなら、瑞月が出会ってからの陽介を詳細に語るつもりだ。徹底応戦の構えである。
驚きに開く陽介の瞳から、瑞月は目をそらさない。瑞月への反論はなかった。ヘーゼルのレンズにしっかりと瑞月が映っている確信と共に、瑞月は言葉の刃を振るう。陽介の心に言葉を刻みつけるために。
「2つ。これがもっとも重要だ。誰が何と言おうと、私が恋人として、生涯のパートナーとしてそばにいたい、いてほしい、いさせてほしいと願う相手は、おまえさま。花村、だだ一人だ」
瑞月は思い出す。この花畑に、大きな虚空を通して一人落ちていくはずだった瑞月の腕をがむしゃらに掴んでくれた、陽介の必死な表情を。暗闇の中で瑞月を抱きすくめてくれた陽だまりのようにあたたかな身体を。
「花村陽介。奈落に一人で落ちるはずだった私の運命を変えた人。おまえさまは、私の唯一だ」
陽介の身体が硬くなる。まるで、傷を受けた筋肉が縮こまるような、そんな硬さだった。陽介は首まで真っ赤に染めて、きゅるりと輝いた瞳を瑞月から逸らさずにいた。瑞月は悟る。瑞月が陽介にむける想いのかけらが、陽介に届いたのだと。瑞月の唇がゆるりと弧を描いた。
「……悠とお前が『運命の相手』同士に選ばれて、モヤッとした」
「うん」
「このウェルカムボードを見てさ、『お似合いだな』って思っちまったんだよ。その事実が苦しくて、相棒である悠に嫉妬した。あのヘンテコな写真も、敵のせいだから仕方ないって頭では分かってる。けど、嫉妬した自分がいたのは事実で、そんな自分が情けねぇなって……俺はお前の友達でしかないのに」
瑞月と陽介は付き合っていない。同じ想いを向けていると、お互いに分かってはいる。しかし、事件に対してケジメを付けたいから、2人が望む関係には至っていないのだ。それは、端から見れば、とても不安定で曖昧な関係に見えるのだろう。
だからこそ、陽介を離さないと、彼をつかむ両の手に瑞月は力を込める。
「そうだな。『まだ』だが」
「おま……俺はマジで——」
「私だって本気だ」
瑞月は毅然と背を伸ばして、陽介を見据える。悠に嫉妬したと、陽介の言葉は事実だろう。しかしすべてではない。言葉の奥に、深く隠した自身への劣等感がある。ならば瑞月がすべきことは、悠を引き合いに陽介を褒めることではない。陽介の存在を、瑞月が認めることだ。
「私が花村に言うべきは2つ。 1つ、花村は情けない、無力な男ではない。至らない自分や欠点を自覚して、それでも前に進もうと全力でもがくおまえさまは、決して情けなくなどない。私が愛する花村そのものだ。そして、おまえさまがそうやって足掻いて、手に入れたものが、成したことが確かにある。何もないなどと、私と鳴上とみんなが言わせない」
特捜隊の結成も、誘拐の被害者たちの救出も、確実に彼は関わって成し遂げている。往生際悪く否定するのなら、瑞月が出会ってからの陽介を詳細に語るつもりだ。徹底応戦の構えである。
驚きに開く陽介の瞳から、瑞月は目をそらさない。瑞月への反論はなかった。ヘーゼルのレンズにしっかりと瑞月が映っている確信と共に、瑞月は言葉の刃を振るう。陽介の心に言葉を刻みつけるために。
「2つ。これがもっとも重要だ。誰が何と言おうと、私が恋人として、生涯のパートナーとしてそばにいたい、いてほしい、いさせてほしいと願う相手は、おまえさま。花村、だだ一人だ」
瑞月は思い出す。この花畑に、大きな虚空を通して一人落ちていくはずだった瑞月の腕をがむしゃらに掴んでくれた、陽介の必死な表情を。暗闇の中で瑞月を抱きすくめてくれた陽だまりのようにあたたかな身体を。
「花村陽介。奈落に一人で落ちるはずだった私の運命を変えた人。おまえさまは、私の唯一だ」
陽介の身体が硬くなる。まるで、傷を受けた筋肉が縮こまるような、そんな硬さだった。陽介は首まで真っ赤に染めて、きゅるりと輝いた瞳を瑞月から逸らさずにいた。瑞月は悟る。瑞月が陽介にむける想いのかけらが、陽介に届いたのだと。瑞月の唇がゆるりと弧を描いた。