falling down
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ひと悶着あったのち、落ち着きを取り戻した3人は『愛のメモリアルフォトグラフ』を後にする。インパクトだけはあったが、この花畑に関して有力な情報は何も得られなかった。見掛け倒しにもほどがある。
あぜ道を歩く瑞月は時折、繋がれた右手と陽介を盗み見る。淡く染まった頬や、程よくしっとりと汗ばんだ手のひらがウブだ。
陽介をそうさせているのが自分だと思うと、無意識に口角が緩んでしまう。肌のキメがぴったりと吸い付いて合う感覚が幸福で、ずっと手を繋げたらとすら思う。
しかし、浮き立った気分も長くは続かない。まだ途切れないあぜ道を歩き続けると、石造りの質素な教会が現れた。ジリ、と瑞月はいやな焦燥を覚える。自身のペルソナであるヨナガヒメも、意味深に口元を袂にうずめた。瑞月は無意識に、陽介とつないだ手を握りしめる。瑞月は、振り返る花村と悠に向けて告げた。
「鳴上、花村、教会の中にシャドウがいる」
瑞月は目を閉じて集中する。探索能力を持つヨナガヒメの影響により、瑞月は敵・味方の状態をなんとなく認識できる。近くにいるシャドウや、閉所——宝箱や個室に閉じこもっているシャドウの感知は慣れたものだ。位置関係の捕捉精度だけならば、りせや風花と同等といってもいい。感覚を研ぎ澄ませば、敵の強さも判別できた。
「強いな。前の迷宮で戦った”ハートの女王様”とよく似た気配だ」
「じゃあ、この迷宮の核となる物を守ってる『番人』ってことか。なら、ほかのメンバーが助けに来るのを待った方がいいんじゃねーか?」
「だとすれば、教会にはまだ入らない方が——難しい顔をしているな、瀬名」
鳴上が先を促す。瑞月は頷いて口を開く。たしかに、悠の判断は賢明だ。援軍が確実に到着する前提が成立するのなら。しかし、瑞月の探索結果は悠の提案を支持できないものだった。
「探索範囲を広げてみたのだが、私たちが閉じ込められた空間——その外の状態が拾えないんだ。味方どころか、シャドウの反応でさえ。恐らくは、教会の中にいるシャドウが探知を邪魔しているのだろう。私たちは暗闇の中で、黒い布をかぶせられたようなものだな」
悠と陽介が、眉を寄せる。位置関係の捕捉精度だけならば、瑞月はりせや風花と同等である。その瑞月が花畑より外の空間を拾えない——探知能力を阻害する力が、花畑の空間と外を区切っている可能性がある。花畑に落ちてしばらく、ヨナガヒメの探知能力が機能しなかったのも、敵の力によるものだろう。
つまりは、りせと風花のナビチームも、探知を阻まれて3人の居場所を捕捉できていない恐れがある。
「……俺らはココに閉じ込められた上に、仲間との合流もいつになるか見込めないっつーことか」
「合流するには、教会の中のシャドウを3人で倒す他ないだろうな。鳴上はどうする?」
陽介も、そして瑞月も、悠に判断を仰ぐ。選択肢は2つ。奇跡的に援軍が来るのを待つか、それとも教会の扉を開けてシャドウと戦うか。悠は目を閉じ、慎重にしかしはっきりと決断を下す。
「教会に入ろう。シャドウを倒さずとも、俺たちを相手取るのに力を割いて、この空間を隠す力が弱くなるかもしれない。そうしたら、きっと他の皆が俺たちを見つけてくれるはずだ」
「だな。じっとしてるとか、俺らの性に合わねーし。ジライヤ、いっちょ頼むぜ」
「分かった。ヨナガヒメも、すぐ動いてもらえるようにしておこう」
瑞月も陽介も、リーダーがどのような答えを返すか、お見通しであった。陽介の言うとおり。ただおとなしく待つよりも、声を張り上げて行動した方が性に合っている。
ペルソナであるヨナガヒメとジライヤも力強く頷いた。あっと、陽介が何かに気が付いた体で瑞月へと顔を向ける。
「瀬名、何なら『アレ』できるか?敵の位置も分かってるし、相手の隙もつけると思うんだけど」
「『アレ』って……ああ、『アレ』か。承知した。すぐ準備しよう」
「あぁ、『アレ』か。俺も手伝おうか」
ヨナガヒメが冷気を呼ぶ。ジライヤは印を結び、いつでも風を生み出せる態勢をとった。悠はイザナギを召喚し、背中の大太刀を引き抜く。
あぜ道を歩く瑞月は時折、繋がれた右手と陽介を盗み見る。淡く染まった頬や、程よくしっとりと汗ばんだ手のひらがウブだ。
陽介をそうさせているのが自分だと思うと、無意識に口角が緩んでしまう。肌のキメがぴったりと吸い付いて合う感覚が幸福で、ずっと手を繋げたらとすら思う。
しかし、浮き立った気分も長くは続かない。まだ途切れないあぜ道を歩き続けると、石造りの質素な教会が現れた。ジリ、と瑞月はいやな焦燥を覚える。自身のペルソナであるヨナガヒメも、意味深に口元を袂にうずめた。瑞月は無意識に、陽介とつないだ手を握りしめる。瑞月は、振り返る花村と悠に向けて告げた。
「鳴上、花村、教会の中にシャドウがいる」
瑞月は目を閉じて集中する。探索能力を持つヨナガヒメの影響により、瑞月は敵・味方の状態をなんとなく認識できる。近くにいるシャドウや、閉所——宝箱や個室に閉じこもっているシャドウの感知は慣れたものだ。位置関係の捕捉精度だけならば、りせや風花と同等といってもいい。感覚を研ぎ澄ませば、敵の強さも判別できた。
「強いな。前の迷宮で戦った”ハートの女王様”とよく似た気配だ」
「じゃあ、この迷宮の核となる物を守ってる『番人』ってことか。なら、ほかのメンバーが助けに来るのを待った方がいいんじゃねーか?」
「だとすれば、教会にはまだ入らない方が——難しい顔をしているな、瀬名」
鳴上が先を促す。瑞月は頷いて口を開く。たしかに、悠の判断は賢明だ。援軍が確実に到着する前提が成立するのなら。しかし、瑞月の探索結果は悠の提案を支持できないものだった。
「探索範囲を広げてみたのだが、私たちが閉じ込められた空間——その外の状態が拾えないんだ。味方どころか、シャドウの反応でさえ。恐らくは、教会の中にいるシャドウが探知を邪魔しているのだろう。私たちは暗闇の中で、黒い布をかぶせられたようなものだな」
悠と陽介が、眉を寄せる。位置関係の捕捉精度だけならば、瑞月はりせや風花と同等である。その瑞月が花畑より外の空間を拾えない——探知能力を阻害する力が、花畑の空間と外を区切っている可能性がある。花畑に落ちてしばらく、ヨナガヒメの探知能力が機能しなかったのも、敵の力によるものだろう。
つまりは、りせと風花のナビチームも、探知を阻まれて3人の居場所を捕捉できていない恐れがある。
「……俺らはココに閉じ込められた上に、仲間との合流もいつになるか見込めないっつーことか」
「合流するには、教会の中のシャドウを3人で倒す他ないだろうな。鳴上はどうする?」
陽介も、そして瑞月も、悠に判断を仰ぐ。選択肢は2つ。奇跡的に援軍が来るのを待つか、それとも教会の扉を開けてシャドウと戦うか。悠は目を閉じ、慎重にしかしはっきりと決断を下す。
「教会に入ろう。シャドウを倒さずとも、俺たちを相手取るのに力を割いて、この空間を隠す力が弱くなるかもしれない。そうしたら、きっと他の皆が俺たちを見つけてくれるはずだ」
「だな。じっとしてるとか、俺らの性に合わねーし。ジライヤ、いっちょ頼むぜ」
「分かった。ヨナガヒメも、すぐ動いてもらえるようにしておこう」
瑞月も陽介も、リーダーがどのような答えを返すか、お見通しであった。陽介の言うとおり。ただおとなしく待つよりも、声を張り上げて行動した方が性に合っている。
ペルソナであるヨナガヒメとジライヤも力強く頷いた。あっと、陽介が何かに気が付いた体で瑞月へと顔を向ける。
「瀬名、何なら『アレ』できるか?敵の位置も分かってるし、相手の隙もつけると思うんだけど」
「『アレ』って……ああ、『アレ』か。承知した。すぐ準備しよう」
「あぁ、『アレ』か。俺も手伝おうか」
ヨナガヒメが冷気を呼ぶ。ジライヤは印を結び、いつでも風を生み出せる態勢をとった。悠はイザナギを召喚し、背中の大太刀を引き抜く。