falling down
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「うーむ、これは迷宮の核ではなさそうだ。この場所の地図でもないし……時間を割いて調べる品ではなさそうよな」
「写真とか自分が花婿側なこととか、すんなり受け入れちゃってる!?」
アベコベなウェルカムボードを前に、何かを砕かれた表情で男2人が立ちすくむなか、一貫して瑞月は冷静であった。
陽介一途な瑞月には、鳴上との雑コラペア写真なんて取るに足らない嫌がらせでしかないのである。悠は力なく首を振り、瑞月に感心の声を漏らす。
「さすが瀬名だ。女子に持ち上げられる立場の俺とは違って、立ち直りが早い……」
「……相棒はなんで落ち込んでんだー?」
「自分の花嫁衣装が怖いくらい似合ってて、しかも……瀬名に……女の子に抱き上げられるなんて……、俺は男なのに、女の子になりきる才能が——」
「「いやそれはない」」
陽介と瑞月のツッコミが重なる。悠は肩幅も広いし、それに見合うだけの体つきをしている。雑コラだから何とかなっているが、悠が実際にウェディングドレスなんぞを着たら骨太の花嫁が誕生してしまう。
なぜ、文化祭の女装も似合っていたのに。とうろたえる悠に対し、ジライヤとヨナガヒメまでもが困惑をあらわにオロオロする。ペルソナすら動揺する悠の天然はいかがなものか。
瑞月はもう一度ウェルカムボードに注目する。何度見ても、悠にウェディングドレスは似合わない。気品があり恵まれた体躯を持つ彼には、ノーブルなスーツがきっとお似合いだ。
陽介の言うとおり、本来は花婿と花嫁の立場は逆だ。しかし、瑞月はスーツを身にまとった写真の中の自分に、羨ましさを覚えた。
「……私も、パートナーを持ち上げてみたいな」
「は?」
「んん?」
隣の陽介が、驚いて胸を逸らしていた。瑞月は慌てて口をつぐむ。しかし、陽介には瑞月の独り言がしっかり聞こえてしまったらしい。
「やってみたいのぉ!?お姫様願望っつーか、パートナーに抱き上げてもらいたいとか、そういうオンナノコの夢みたいなのはないわけ?」
「たしかに、私にも好きな人に抱き上げられたいという願望はあるとも。けれどそれより、私は大切な人を抱き上げてみたいな」
あっけらかんと、瑞月は陽介の問いに答えた。そして意中の人——陽介を抱き上げた自身を想像する。愛しい人の体温や、それまで生きてきた証である重さを、余さず己の腕の中で受け止められるというのは、きっと素敵な体験になるはずだ。叶うなら、瑞月は陽介を横抱きにしてみたい。というより、陽介しか横抱きにしたくない。
「だそうだ陽介、良かったじゃないか」
「え、俺が瀬名に抱き上げられる流れになってんのっ?」
「他に誰がいるんだ?」
「いや、この写真みたいに悠とかさ……」
「言っておくが花村。私が横抱きにしたい異性は花村だけだ。それ以外は担ぐか小脇に抱えるかのどちらかとなる」
意味ありげなにこやかさで、悠が陽介の肩へと片手を置く。頬を赤く染めながら渋い表情をつくった陽介は感情の行き場を失ったらしく、ウェディングボードに恨めし気な目線を向けた。
「あー、なんだよ!新郎と新婦が逆だったら、こんなややこしい話になんなかったっての!ふつー、ウェディングドレスつったら女の子が着るもんだろうがっ」
「つまり、陽介は瀬名のウェディングドレス姿が見たかったのか」
「なんと」
「あいぼう!?事態をややこしくしないでもらえますっ?」
陽介は唇を引きつらせた。青さと赤さが入り混じる奇妙な顔色は、急所を突かれた反応に似ている。そして、陽介は『瑞月のウェディングドレスを見たい』との悠の指摘は否定していない。2つの事実から瑞月は1つの結論に至る。ゴーンゴーンとチャペルの鐘が瑞月の脳内で鳴った。
「花村」
瑞月は隣にいる陽介との距離を詰めた。羞恥に染まった陽介の愛らしさに、瑞月の唇は自然と上向きになる。陽介のヘーゼルの瞳を捉えると、瑞月は清々しく宣言した。
「花村、結婚写真を撮るときの衣装は一緒に選ぼう。私もおまえさまのウェディングスーツ姿が楽しみだ」
「展開が早すぎんだよっ!つかマジでどうした瀬名ちょっとテンションハイになってんぞ!?」
「陽介、おまえは手の温度がハイになってるぞ」
「ほおっといたげて!?」
周りの気温を上げるほど熱くなった陽介から、悠は静かに距離を取った。
「写真とか自分が花婿側なこととか、すんなり受け入れちゃってる!?」
アベコベなウェルカムボードを前に、何かを砕かれた表情で男2人が立ちすくむなか、一貫して瑞月は冷静であった。
陽介一途な瑞月には、鳴上との雑コラペア写真なんて取るに足らない嫌がらせでしかないのである。悠は力なく首を振り、瑞月に感心の声を漏らす。
「さすが瀬名だ。女子に持ち上げられる立場の俺とは違って、立ち直りが早い……」
「……相棒はなんで落ち込んでんだー?」
「自分の花嫁衣装が怖いくらい似合ってて、しかも……瀬名に……女の子に抱き上げられるなんて……、俺は男なのに、女の子になりきる才能が——」
「「いやそれはない」」
陽介と瑞月のツッコミが重なる。悠は肩幅も広いし、それに見合うだけの体つきをしている。雑コラだから何とかなっているが、悠が実際にウェディングドレスなんぞを着たら骨太の花嫁が誕生してしまう。
なぜ、文化祭の女装も似合っていたのに。とうろたえる悠に対し、ジライヤとヨナガヒメまでもが困惑をあらわにオロオロする。ペルソナすら動揺する悠の天然はいかがなものか。
瑞月はもう一度ウェルカムボードに注目する。何度見ても、悠にウェディングドレスは似合わない。気品があり恵まれた体躯を持つ彼には、ノーブルなスーツがきっとお似合いだ。
陽介の言うとおり、本来は花婿と花嫁の立場は逆だ。しかし、瑞月はスーツを身にまとった写真の中の自分に、羨ましさを覚えた。
「……私も、パートナーを持ち上げてみたいな」
「は?」
「んん?」
隣の陽介が、驚いて胸を逸らしていた。瑞月は慌てて口をつぐむ。しかし、陽介には瑞月の独り言がしっかり聞こえてしまったらしい。
「やってみたいのぉ!?お姫様願望っつーか、パートナーに抱き上げてもらいたいとか、そういうオンナノコの夢みたいなのはないわけ?」
「たしかに、私にも好きな人に抱き上げられたいという願望はあるとも。けれどそれより、私は大切な人を抱き上げてみたいな」
あっけらかんと、瑞月は陽介の問いに答えた。そして意中の人——陽介を抱き上げた自身を想像する。愛しい人の体温や、それまで生きてきた証である重さを、余さず己の腕の中で受け止められるというのは、きっと素敵な体験になるはずだ。叶うなら、瑞月は陽介を横抱きにしてみたい。というより、陽介しか横抱きにしたくない。
「だそうだ陽介、良かったじゃないか」
「え、俺が瀬名に抱き上げられる流れになってんのっ?」
「他に誰がいるんだ?」
「いや、この写真みたいに悠とかさ……」
「言っておくが花村。私が横抱きにしたい異性は花村だけだ。それ以外は担ぐか小脇に抱えるかのどちらかとなる」
意味ありげなにこやかさで、悠が陽介の肩へと片手を置く。頬を赤く染めながら渋い表情をつくった陽介は感情の行き場を失ったらしく、ウェディングボードに恨めし気な目線を向けた。
「あー、なんだよ!新郎と新婦が逆だったら、こんなややこしい話になんなかったっての!ふつー、ウェディングドレスつったら女の子が着るもんだろうがっ」
「つまり、陽介は瀬名のウェディングドレス姿が見たかったのか」
「なんと」
「あいぼう!?事態をややこしくしないでもらえますっ?」
陽介は唇を引きつらせた。青さと赤さが入り混じる奇妙な顔色は、急所を突かれた反応に似ている。そして、陽介は『瑞月のウェディングドレスを見たい』との悠の指摘は否定していない。2つの事実から瑞月は1つの結論に至る。ゴーンゴーンとチャペルの鐘が瑞月の脳内で鳴った。
「花村」
瑞月は隣にいる陽介との距離を詰めた。羞恥に染まった陽介の愛らしさに、瑞月の唇は自然と上向きになる。陽介のヘーゼルの瞳を捉えると、瑞月は清々しく宣言した。
「花村、結婚写真を撮るときの衣装は一緒に選ぼう。私もおまえさまのウェディングスーツ姿が楽しみだ」
「展開が早すぎんだよっ!つかマジでどうした瀬名ちょっとテンションハイになってんぞ!?」
「陽介、おまえは手の温度がハイになってるぞ」
「ほおっといたげて!?」
周りの気温を上げるほど熱くなった陽介から、悠は静かに距離を取った。