サンストーンのあなた
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
情緒がめちゃくちゃな瑞月など無視して、再び吞気な機械音声が再生された。
『さぁ、お待ちかねだよ。いよいよ新郎新婦のご入場だ』
『君たちは結婚してもいいし、しなくてもいい』
『君たちは自由意志によって、永遠の愛を誓うことにした』
『さぁ、2人で扉を開けたまえ!』
「…………はぁ?」
地を這うような低音が、瑞月の喉から絞り出された。
鳴上悠、君は花村を横抱きしただけでは飽き足らず、陽介との伴侶の座まで攫ってゆくのか? いや、そうではない。この結婚を許可した下郎はどいつだ。
嫉妬と憤懣 のどす黒い焔が、瑞月の身体を突き動かす。
そもそも、陽介と結婚? そんなこと、瑞月が認められるはずもない。陽介の伴侶として隣にいたいと欲深く望んでいるのは瑞月だ。たとえ誰であろうが、そのただ一つの立場を諦める気は、ない。瑞月は遠くから好きな人の幸せを願う、清らかで奥ゆかしい人間ではなかった。他でもない、瑞月が陽介を幸せにしたいし、共に幸せになりたい。
結婚は人生の墓場? 上等である。夫婦とは、同じ墓に入るものであり、結婚とは墓場まで共に過ごすという誓いなのだから。愛する人との思い出を納めて、同じ墓の中で眠れるのなら、これほど幸せな終わりはない。瑞月の持論であった。
瑞月は即断した。陽介を、瑞月の花婿を最速で奪還すると。
瑞月は斧槍を構えなおす。
そもそも、瑞月が陽介を追ってきた理由は、彼を一人にしたくない──失いたくないからだ。そのためならば、瑞月は地の底だろうが向かうし、氷の刃を持って陽介と己に立ちはだかる全てを切り伏せてみせる。
——ごめんな、瀬名。
陽介の優しい声が聞こえた気がした。瑞月の最愛の人は、どこか切なく哀しい音で自分を呼んでいる。暴力的なまでの庇護欲がこみ上げて、瑞月は瞳をかっ開いた。
照準を教会に固定し、ペルソナを召喚する。あぜ道の一部が氷の鏡面で覆われた。
助走をつけて、瑞月は氷の上へと飛び乗る。摩擦の少ない氷の面を滑走すれば、ただ走るより移動速度はずっと速い。氷の滑走路が途絶える直前、瑞月は斧槍を地面に向けて振りかぶった。反動とアイススケートによる加速が、瑞月の身体を宙高くに跳ね上がる。
『病める時mooo! 健やかなる時mooo! 変わらない愛を誓いナ・サーイッ!!』
『さぁ、愛を誓いナ・サーイ!』
「もう誓っているッッッ!! 伏せろッ!!」
放物線を描く瑞月の行く先は、陽介たちがいる教会の扉。加速度的に落下する中、瑞月は斜め上段に斧槍を構える。
隕石の勢いをもって、教会の入り口が吹き飛ばされた。背後に控えていた瑞月のペルソナが、氷の杭を射出する。瑞月はぶち抜いた扉の上に着地した。噴煙が上がる中、2対の双眸が驚きと歓喜の入り混じる視線を瑞月に向けている。悠と——陽介だ。
破壊された教会の壁から差し込む光が、陽介を照らしだす。繊細にきらめくキャラメルブラウンの髪と、光がさして大きなヘーゼルの瞳は、彼そのものを宝石のように輝かせる。
いや、実際瑞月にとって彼は宝石のような人だった。どんな暗闇でも、瑞月は陽介を見つけ出してみせるだろう。
一瞥して彼らに大きな怪我はない。瑞月はつかのま安堵に微笑んで、二人の奥にいる異貌の神父を睨みつけた。
「ゆえに、私の花婿殿・花村とその親友・鳴上を返してもらおうかッ!」
「は、はなむこぉ!?」
瑞月いわく、花婿殿——花村陽介は素っ頓狂な様子で身体を反らした。
『さぁ、お待ちかねだよ。いよいよ新郎新婦のご入場だ』
『君たちは結婚してもいいし、しなくてもいい』
『君たちは自由意志によって、永遠の愛を誓うことにした』
『さぁ、2人で扉を開けたまえ!』
「…………はぁ?」
地を這うような低音が、瑞月の喉から絞り出された。
鳴上悠、君は花村を横抱きしただけでは飽き足らず、陽介との伴侶の座まで攫ってゆくのか? いや、そうではない。この結婚を許可した下郎はどいつだ。
嫉妬と
そもそも、陽介と結婚? そんなこと、瑞月が認められるはずもない。陽介の伴侶として隣にいたいと欲深く望んでいるのは瑞月だ。たとえ誰であろうが、そのただ一つの立場を諦める気は、ない。瑞月は遠くから好きな人の幸せを願う、清らかで奥ゆかしい人間ではなかった。他でもない、瑞月が陽介を幸せにしたいし、共に幸せになりたい。
結婚は人生の墓場? 上等である。夫婦とは、同じ墓に入るものであり、結婚とは墓場まで共に過ごすという誓いなのだから。愛する人との思い出を納めて、同じ墓の中で眠れるのなら、これほど幸せな終わりはない。瑞月の持論であった。
瑞月は即断した。陽介を、瑞月の花婿を最速で奪還すると。
瑞月は斧槍を構えなおす。
そもそも、瑞月が陽介を追ってきた理由は、彼を一人にしたくない──失いたくないからだ。そのためならば、瑞月は地の底だろうが向かうし、氷の刃を持って陽介と己に立ちはだかる全てを切り伏せてみせる。
——ごめんな、瀬名。
陽介の優しい声が聞こえた気がした。瑞月の最愛の人は、どこか切なく哀しい音で自分を呼んでいる。暴力的なまでの庇護欲がこみ上げて、瑞月は瞳をかっ開いた。
照準を教会に固定し、ペルソナを召喚する。あぜ道の一部が氷の鏡面で覆われた。
助走をつけて、瑞月は氷の上へと飛び乗る。摩擦の少ない氷の面を滑走すれば、ただ走るより移動速度はずっと速い。氷の滑走路が途絶える直前、瑞月は斧槍を地面に向けて振りかぶった。反動とアイススケートによる加速が、瑞月の身体を宙高くに跳ね上がる。
『病める時mooo! 健やかなる時mooo! 変わらない愛を誓いナ・サーイッ!!』
『さぁ、愛を誓いナ・サーイ!』
「もう誓っているッッッ!! 伏せろッ!!」
放物線を描く瑞月の行く先は、陽介たちがいる教会の扉。加速度的に落下する中、瑞月は斜め上段に斧槍を構える。
隕石の勢いをもって、教会の入り口が吹き飛ばされた。背後に控えていた瑞月のペルソナが、氷の杭を射出する。瑞月はぶち抜いた扉の上に着地した。噴煙が上がる中、2対の双眸が驚きと歓喜の入り混じる視線を瑞月に向けている。悠と——陽介だ。
破壊された教会の壁から差し込む光が、陽介を照らしだす。繊細にきらめくキャラメルブラウンの髪と、光がさして大きなヘーゼルの瞳は、彼そのものを宝石のように輝かせる。
いや、実際瑞月にとって彼は宝石のような人だった。どんな暗闇でも、瑞月は陽介を見つけ出してみせるだろう。
一瞥して彼らに大きな怪我はない。瑞月はつかのま安堵に微笑んで、二人の奥にいる異貌の神父を睨みつけた。
「ゆえに、私の花婿殿・花村とその親友・鳴上を返してもらおうかッ!」
「は、はなむこぉ!?」
瑞月いわく、花婿殿——花村陽介は素っ頓狂な様子で身体を反らした。