サンストーンのあなた
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教会などによく見られる、オーク製の白い扉を斧槍で叩き壊す。壁に大穴が開いたが、瑞月は気にも留めずに扉の内側へ足を踏み入れた。
色とりどりの可憐な花が咲き乱れる穏やかな平地だ。花畑を縦に2分するあぜ道は、ハートの先端を地面に突き立てたようなフラワーアーチで囲われている。花畑全体と合わせて、質素で品の良い庭園を思わせる土地だ。
「穏やかな空間に油断させて、2人を襲う気か。なんて卑劣な……。おのれシャドウ、氷像にして骨も残さず砕いてくれる」
しかし、陽介を見失って苛立つ瑞月としては、花を愛でる余裕などない。むしろ穏やかな場所で相手を惑わせてだまし討ちを企むシャドウへの敵意が増した。殺意が高まった瞳で、瑞月は前方を睨みつける。
あぜ道の先には、石造りの素朴な教会があった。風花と瑞月の見立てと照らし合わせると、悠と陽介、それから強力なシャドウは、教会の近くにいる。
(であれば、最短の直線で駆けるまで)
瑞月の足が土を抉る。踏み込みの衝撃で、無残にも花弁が散った。疾走する瑞月とは裏腹に、吞気な機械音声のアナウンスが耳に入る。
『すると突然、ご列席の皆様がたにお知らせがあるぞ』
『前方に見えてきたのは、幸せに包まれた、新郎新婦の愛のメモリアルフォトグラフだ』
『君はご覧になってもいいし、ならなくてもいい』
「ご覧にならんわっ! 障害物など叩き切る!!」
突っ走る瑞月にとって陽介と悠、他の仲間以外は全てが排除する障壁でしかない。一喝し、瑞月は上段に斧槍を振りかぶり——その腕を硬直させた。
「セイッ!」
瑞月は小手をひねり、刃の軌道を急激に転換する。勢いよく土埃が舞った。瑞月は障害物を切れなかったのである。何故ならば、その障害物に守るべき陽介の姿があったから。
瑞月は恐る恐る顔を上げた。目の前には、豪華な植物で装飾されたウェルカムボードがあった。そして、その中央に映るのは、純白の衣装に身を包んだ陽介の姿。
ウェディングドレスを着た陽介がいた。
ウェディングドレスを着た、陽介が、いた!
「きゃ、きゃぁぁああああああああああああああ!?!?」
『瀬名さん、どうかしましたか!?』
あまりの可憐さに、瑞月は黄色い奇声を発した。シャドウに対する怒りや2人への想いやらが、己の秘めたる欲望を前に焼却されたのである。
動転して乙女となった瑞月の悲鳴に、ナビ担当の風花が動揺する。風花には申し訳ないが、瑞月から言わせれば叫ばない方が無理な話だ。瑞月にとって、陽介は世界一可愛い人なのだから(陽介自身が気にするので、普段は様々な言葉に置き換えている)。
女子高生の制服だろうが、メイド服だろうが、魔法少女のドレスだろうと、彼は可憐に着こなすだろう。そんな最高にプリティーチャーミングな人(注:瑞月基準)が、この世で最も楚々として無垢なウェディングドレスなんて着たらどうなるか。
瑞月にとっては目の前の写真が答えだ。最強無敵の花嫁が爆誕してしまった。この世で最も眩しい生き物が降臨してまった。
——本当に何なんだ花村のキャラメルブラウンの御髪が純白のサテンに反射して 後光で目が潰れる ハレルヤ そして鳴上羨ましいな! ウェディングドレス姿の花村を横抱きにして あまつさえ共同作業でハートのポーズまで取るなんて
——私だって花村をお姫様抱っこしたいっ!!
謎の敗北感に瑞月は片膝をつく。斧槍の柄を地面に突き立てなければ立っていられなかった。シャドウを蹴散らした気合いが、たかだか男のウェディングドレス姿で骨抜きにされたのである。訳が分からない。
『瀬名さん!? 本当に大丈夫ですかッ?』
「ぐっ、すまない山岸さん。敵の罠にはまった。行動を封じてくるとは……小癪な相手だ」
『……! 瀬名さんの体力は減っていない……、ということは、遠距離でも封じやバステを扱う、搦め手が得意な相手なんですね! わかりました。りせちゃんを通じて、結城くんたちに急ぐよう伝えます。だから、瀬名さんは持ちこたえてください!回復は……』
「まだ、必要ないっ。結城くんへの連絡、よろしく頼む」
『はい!』
視界が共有できないため、優秀なナビである風花はペルソナによって瑞月の状況を冷静に分析するしかなかった。瑞月のかかった罠とやらが、野郎2人のウェルカムボードであることなど知る由もない。しかし会話は成立している。意図しないアンジャッシュであった。
とりあえず、瑞月は震える足で立ち上がった。痙攣を起こした手で何とかウェルカムボードを裏に伏せる。後光すら射すほど可愛い陽介の姿を、他の誰かに見られたくない。
色とりどりの可憐な花が咲き乱れる穏やかな平地だ。花畑を縦に2分するあぜ道は、ハートの先端を地面に突き立てたようなフラワーアーチで囲われている。花畑全体と合わせて、質素で品の良い庭園を思わせる土地だ。
「穏やかな空間に油断させて、2人を襲う気か。なんて卑劣な……。おのれシャドウ、氷像にして骨も残さず砕いてくれる」
しかし、陽介を見失って苛立つ瑞月としては、花を愛でる余裕などない。むしろ穏やかな場所で相手を惑わせてだまし討ちを企むシャドウへの敵意が増した。殺意が高まった瞳で、瑞月は前方を睨みつける。
あぜ道の先には、石造りの素朴な教会があった。風花と瑞月の見立てと照らし合わせると、悠と陽介、それから強力なシャドウは、教会の近くにいる。
(であれば、最短の直線で駆けるまで)
瑞月の足が土を抉る。踏み込みの衝撃で、無残にも花弁が散った。疾走する瑞月とは裏腹に、吞気な機械音声のアナウンスが耳に入る。
『すると突然、ご列席の皆様がたにお知らせがあるぞ』
『前方に見えてきたのは、幸せに包まれた、新郎新婦の愛のメモリアルフォトグラフだ』
『君はご覧になってもいいし、ならなくてもいい』
「ご覧にならんわっ! 障害物など叩き切る!!」
突っ走る瑞月にとって陽介と悠、他の仲間以外は全てが排除する障壁でしかない。一喝し、瑞月は上段に斧槍を振りかぶり——その腕を硬直させた。
「セイッ!」
瑞月は小手をひねり、刃の軌道を急激に転換する。勢いよく土埃が舞った。瑞月は障害物を切れなかったのである。何故ならば、その障害物に守るべき陽介の姿があったから。
瑞月は恐る恐る顔を上げた。目の前には、豪華な植物で装飾されたウェルカムボードがあった。そして、その中央に映るのは、純白の衣装に身を包んだ陽介の姿。
ウェディングドレスを着た陽介がいた。
ウェディングドレスを着た、陽介が、いた!
「きゃ、きゃぁぁああああああああああああああ!?!?」
『瀬名さん、どうかしましたか!?』
あまりの可憐さに、瑞月は黄色い奇声を発した。シャドウに対する怒りや2人への想いやらが、己の秘めたる欲望を前に焼却されたのである。
動転して乙女となった瑞月の悲鳴に、ナビ担当の風花が動揺する。風花には申し訳ないが、瑞月から言わせれば叫ばない方が無理な話だ。瑞月にとって、陽介は世界一可愛い人なのだから(陽介自身が気にするので、普段は様々な言葉に置き換えている)。
女子高生の制服だろうが、メイド服だろうが、魔法少女のドレスだろうと、彼は可憐に着こなすだろう。そんな最高にプリティーチャーミングな人(注:瑞月基準)が、この世で最も楚々として無垢なウェディングドレスなんて着たらどうなるか。
瑞月にとっては目の前の写真が答えだ。最強無敵の花嫁が爆誕してしまった。この世で最も眩しい生き物が降臨してまった。
——本当に何なんだ花村のキャラメルブラウンの御髪が純白のサテンに反射して 後光で目が潰れる ハレルヤ そして鳴上羨ましいな! ウェディングドレス姿の花村を横抱きにして あまつさえ共同作業でハートのポーズまで取るなんて
——私だって花村をお姫様抱っこしたいっ!!
謎の敗北感に瑞月は片膝をつく。斧槍の柄を地面に突き立てなければ立っていられなかった。シャドウを蹴散らした気合いが、たかだか男のウェディングドレス姿で骨抜きにされたのである。訳が分からない。
『瀬名さん!? 本当に大丈夫ですかッ?』
「ぐっ、すまない山岸さん。敵の罠にはまった。行動を封じてくるとは……小癪な相手だ」
『……! 瀬名さんの体力は減っていない……、ということは、遠距離でも封じやバステを扱う、搦め手が得意な相手なんですね! わかりました。りせちゃんを通じて、結城くんたちに急ぐよう伝えます。だから、瀬名さんは持ちこたえてください!回復は……』
「まだ、必要ないっ。結城くんへの連絡、よろしく頼む」
『はい!』
視界が共有できないため、優秀なナビである風花はペルソナによって瑞月の状況を冷静に分析するしかなかった。瑞月のかかった罠とやらが、野郎2人のウェルカムボードであることなど知る由もない。しかし会話は成立している。意図しないアンジャッシュであった。
とりあえず、瑞月は震える足で立ち上がった。痙攣を起こした手で何とかウェルカムボードを裏に伏せる。後光すら射すほど可愛い陽介の姿を、他の誰かに見られたくない。