七章、新たな光
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メルコールが起こした悲劇から数週間後。エルミラエルはクルニーアと肩を並べながら、いつものように書物を読んでいた。ふと、彼女は顔を上げて隣で難解な書物を読んでいる友を見た。
「……何じゃ。急にどうした」
エルミラエルは微笑むと、首をかしげているクルニーアにこう言った。
「……ありがとう、クルニーア」
その言葉を聞いて、彼は書物を閉じた。それから、頬を少しだけ赤らめて笑った。
「どういたしまして、メルロン」
エルミラエルとクルニーアの視線が重なる。これからきっと、素晴らしい友情を育んでいけるはず。エルミラエルもクルニーアも、そう信じて疑わなかった。そしてお互い、この数千年後に夫婦として生活をしていることなど、夢にも思いはしなかったのである。
ふと、エルミラエルは窓から空を見上げた。既に夜空には星が現れる時間になっていた。だが、空には別の光も輝いていた。クルニーアはそれを見て、感嘆の声をあげた。
「これもなかなか、悪くないな」
「ええ。月って、綺麗ね」
エルミラエルはヤヴァンナが新しく創った「月」を見て、その美しさにため息を漏らした。クルニーアは隣にいる友をちらりと見ると、気恥ずかしさを乗り越えてこう言った。
「……そなたの髪も、綺麗だ」
「あら、いつからお世辞が言えるようになったの?」
「世辞ではない!……もう良い。今のは忘れてくれ」
はぐらかそうとするクルニーアが面白かったのか、エルミラエルは自分の毛先で彼の頬をくすぐり始めた。
「これ、くすぐったいぞ。止めんか。これ!聞いておるのか!?エルミラエル!おい、こら!」
「だって、嬉しいもの」
はにかみながら笑うエルミラエルに心ときめかせたことを隠すように、クルニーアはそっぽを向いた。
「全く……二度と褒めん」
「えぇ!!酷いわ!クルニーアったら!ねぇ!」
エルミラエルは、無視を決めるクルニーアの肩を叩いた。意外と痛くて、彼は驚きのあまりに飛び上がった。
「痛いぞ!叩くでない!老人は労るべきじゃ」
「老人なら、夜道は危ないんじゃない?早く帰らないと」
絶妙な返事に、クルニーアは口をへの字に曲げた。それから、両眉をゆっくり上げてこう言った。
「……そうきたか。お嬢さん、夕食くらいご一緒させてくれんかな?」
「いいわよ。そのあとは、大人しく帰ってね」
「冷たい奴じゃな」
エルミラエルは少し考えると、こんな提案をした。
「客間を用意させましょうか?」
「それは有り難い。では、詩でも一つ読もうか」
「やったぁ!あなたの声、大好きなの!」
それから、部屋にはクルニーアの朗々とした優しい声が響き始めた。エルミラエルは微笑みを浮かべながら、椅子の肘掛けに頬杖をついている。
二つの木の時代は終わりを迎えようとしていたが、確かに二人の時代は始まろうとしていた。丁度、互いが決して追い付くことはない、月と太陽が生まれたように。
「……何じゃ。急にどうした」
エルミラエルは微笑むと、首をかしげているクルニーアにこう言った。
「……ありがとう、クルニーア」
その言葉を聞いて、彼は書物を閉じた。それから、頬を少しだけ赤らめて笑った。
「どういたしまして、メルロン」
エルミラエルとクルニーアの視線が重なる。これからきっと、素晴らしい友情を育んでいけるはず。エルミラエルもクルニーアも、そう信じて疑わなかった。そしてお互い、この数千年後に夫婦として生活をしていることなど、夢にも思いはしなかったのである。
ふと、エルミラエルは窓から空を見上げた。既に夜空には星が現れる時間になっていた。だが、空には別の光も輝いていた。クルニーアはそれを見て、感嘆の声をあげた。
「これもなかなか、悪くないな」
「ええ。月って、綺麗ね」
エルミラエルはヤヴァンナが新しく創った「月」を見て、その美しさにため息を漏らした。クルニーアは隣にいる友をちらりと見ると、気恥ずかしさを乗り越えてこう言った。
「……そなたの髪も、綺麗だ」
「あら、いつからお世辞が言えるようになったの?」
「世辞ではない!……もう良い。今のは忘れてくれ」
はぐらかそうとするクルニーアが面白かったのか、エルミラエルは自分の毛先で彼の頬をくすぐり始めた。
「これ、くすぐったいぞ。止めんか。これ!聞いておるのか!?エルミラエル!おい、こら!」
「だって、嬉しいもの」
はにかみながら笑うエルミラエルに心ときめかせたことを隠すように、クルニーアはそっぽを向いた。
「全く……二度と褒めん」
「えぇ!!酷いわ!クルニーアったら!ねぇ!」
エルミラエルは、無視を決めるクルニーアの肩を叩いた。意外と痛くて、彼は驚きのあまりに飛び上がった。
「痛いぞ!叩くでない!老人は労るべきじゃ」
「老人なら、夜道は危ないんじゃない?早く帰らないと」
絶妙な返事に、クルニーアは口をへの字に曲げた。それから、両眉をゆっくり上げてこう言った。
「……そうきたか。お嬢さん、夕食くらいご一緒させてくれんかな?」
「いいわよ。そのあとは、大人しく帰ってね」
「冷たい奴じゃな」
エルミラエルは少し考えると、こんな提案をした。
「客間を用意させましょうか?」
「それは有り難い。では、詩でも一つ読もうか」
「やったぁ!あなたの声、大好きなの!」
それから、部屋にはクルニーアの朗々とした優しい声が響き始めた。エルミラエルは微笑みを浮かべながら、椅子の肘掛けに頬杖をついている。
二つの木の時代は終わりを迎えようとしていたが、確かに二人の時代は始まろうとしていた。丁度、互いが決して追い付くことはない、月と太陽が生まれたように。