【お陰でライたんが心を開いてくれたよ〜ん！ ッフゥ★】



「紹介するわ。ラブワンとライクツー。私が呼び覚ました貴銃士よ」
マスターは最近召銃したばかりの二挺の兄弟銃を引き連れ、ホクサイの研究室を訪れた。
「さ、二人とも。彼にご挨拶して」
「こんちわ」ライクツーが素っ気なく口を開く。人見知りなのかしら、と彼女は思った。
「オイラはラブワン！ ホクちんって呼ぶね！ ヨロシクゥ〜！」ッフゥ★とハイテンションでラブワンが口を開く。こっちは馴れ馴れし過ぎるわね、と彼女は思った。
「へえ〜。キミたちが新しい貴銃士か〜」
よろしく〜、とホクサイはにっこり微笑む。
彼の愛想の良い微笑みを一瞥し、「ホクサイさんって、案外普通だね」とライクツーは感想を漏らした。
「研究室に篭りっきりな変態貴銃士だって聞いてたから、もっと尖ってるのかと思ってた」
「誰がそんなこと言ったんだい？」
心外だね〜と言いつつも、ホクサイはにこにこと微笑んだままである。見た目は少々奇抜だが、間伸びした話し方と人の良さそうな笑みのせいで、幾分かまともな人格に思える。この時のライクツーは、そう判断した。
「貴方もまだまだね。ライクツー」
マスターは片手を口元に添え、うふふと意味深な微笑みを向ける。
「マスターさん？」彼女に笑われて、ライクツーは眉を顰めた。「それ、どういう……」
ドチャッ、と妙な音がした。
「は？」足元に転がる謎の肉片を、呆然と見下ろすライクツー。「何？ この塊。グロいんだけど」
「うわあ〜！ ボクちゃんの心臓が〜っ！！」
そう言ってホクサイが戯けてみせると、ライクツーは驚愕して目を見開き、ひくりと頰を痙攣させた。
「へっ？」肉片を見下ろし、ラブワンが声を張り上げる。「ホクちん、心臓落としちゃったの！？」
「まあ、ホクサイったら」
腕を上げたわね、とマスターは微笑む。彼女はホクサイの心臓落としを見慣れているので、その上達ぶりが分かるようだ。
「とっても自然な落としぶりよ。Sehr gut」
「Wirklich⁉︎」
「Ja, Natürlich」ホクサイの嬉しそうな様子に、自然と彼女の唇も綻ぶ。「Super!」
「心臓落ちてる時点で不自然極まり無いから！！」
感極まって母国語が飛び出した二人に、ライクツーはいやいやと首を横に振る。「てゆーかドイツ語で会話しないで！」と不満を漏らした。
「ホクちんそれカッコイイ〜！ オイラにも教えて！！」
「馬鹿なの？」ホクサイに憧憬の目を向けている兄に、弟はピシャリと言い放つ。
「お兄ちゃんはただでさえジャムって鼻血出しやすいのに、その上心臓まで落ちやすくなったら、僕でも面倒見きれないから」
「う〜ん、これボクちゃん秘伝の一発芸なんだよね〜。タダでは教えられないな〜」
「一発芸！？ スゲーですね！？」混乱で口調がおかしくなっているライクツー。「やっぱアンタ変態貴銃士だよ！！」
「ライクツーったら、すっかりホクサイと打ち解けちゃって……」我が子の成長を喜ぶ母親の顔で、彼女は満足げに頷いた。
「この子の心臓落としが、貴方の心を開いたのね」
「ライたんの心はアイアンメイデン級に堅牢なのに、ホクちんってばやるじゃ〜ん★」
「アハハ、ありがと〜」心臓を仕舞いながらホクサイは応える。何やらやりきった顔だった。
「これでライたんクンの掴みはバッチリだね〜！」
「もうアンタら黙れ……」
常識人枠の弟の気苦労は、増すばかり。