このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

ホクサイくんの心臓は落ちやすい

【うちのマスター肝太すぎん?】



「ムクとぱるめよ。仲良くしてあげてね」
マスターは最近召銃したばかりの貴銃士二人を引き連れ、ホクサイの研究室を訪れる。二人をホクサイに紹介し、柔らかな微笑みを浮かべてみせた。
「ムク、ぱるめ。彼はホクサイ。貴方たちの大先輩よ。ご挨拶なさい」
「こんにちは!」
「……はじめまして」
元気に挨拶をするぱるめと、所在無げに呟くムク。対照的な人格の彼らに、「ふ〜ん」とホクサイは目を細める。
「ラブワンクンたちの時も思ったけど、キミが召銃する貴銃士は、なんだか小綺麗だね」
「あら、当然よ。私がモーゼルから貰った称号、貴方知らないの?」
「称号? 聞いたこともないね」
「なら教えてあげる」彼女はふふんと得意げに笑い、胸に片手を添え、堂々たる出で立ちで答えた。
「『イケメン召銃士』よ」
「…………へ〜〜〜」貼り付けた笑顔の裏で、心底どうでも良い、とホクサイは思った。
マスターはモーゼルから貰った称号と自慢げだが、中身が無いにも程がある。こんな称号を与えるなんて、あの秘書官も意外と茶目っ気があるようだ。
「私の手にかかれば、美化120%の貴方たちを召銃することも可能よ。一度壊れて生まれ変わってみない?って89を誘ってみたのだけれど、断られちゃった」
「マスターは恐ろしいことを言うね〜」そうまでして、貴銃士の顔を良くしたいのか。
「まあ、ホクサイは今でも十分可愛いから、問題無いわね」
「はは。ありがと〜」良かった。ボクが破壊されることは無いようだ。この容貌で生まれてきたことに感謝だね〜。
「ああ、そうだわ。貴方の心臓、また落ちてたわよ」
そう言って、彼女はすっと片手を差し出す。衛生面の問題で薄手のゴム手袋をはめた左の手のひらに、不気味な塊が鎮座している。
「ひえっ!?」ぱるめが怯えた声を上げ、ぞぞっと背筋を震わせた。「マスター、いつの間にそんなもの拾ったの!?」
「心……臓……?」理解が追いついていないのか、ムクはどこか遠い目をして、首を傾げた。「それって……落ちるものなの……?」
「わああ、助かったよマスター! なかなか見つからなくて困ってたんだ!」ぱあっと満面の笑みを浮かべるホクサイ。「最近頻繁に落っこちちゃうんだよね〜。ナインティクンに食べられる前に、マスターに見つけてもらえてラッキーだったよ〜」
「貴方の心臓って正直ね」彼女は、手のひらの上で鼓動する心の臓器を見つめ、目を細める。「ほら、こんなに脈打ってる。私に会えてそんなに嬉しい?」
「うん!」躊躇のない全肯定。
「まあ嬉しい。貴方の心臓食べちゃおうかしら?」
「わあ〜! アントロポファジ〜!!」
アハハハハ、とホクサイの可笑しそうな笑い声が、研究室に響き渡る。
「…………世界帝軍やばいね。むっくん」
「…………うん」
片手に貴銃士の心臓を乗せたままお喋りする彼女を見つめ、うちのマスター肝太すぎん?とぱるめは思う。





3/3ページ