レコルト国
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尚も火炎を放射する番犬は、想像以上に脅威だ。黒鋼も応戦しようとするが、モコナの口からは刀が出てこない。
「ぴゅー♪
武器にも防除魔術は有効かーー」
「言ってる場合か!
小娘!!足!」
『アイアイ、サーー!!』
黒鋼はバッとこちらを振り向き、私にも指示を出す。緊急事だから仕方がないんだろうが、頼むのにその口はどうなんだ、とか言葉足らずだとか色々文句はあるが、それ以前に私への信頼を感じ、少しだけ口角が上がる。
駆け足で番犬へ近づき、心の中でいつもそばにいるあの黄金の蝶を呼び起こす。
番犬は前足で私を軽く受け止めるつもりだったようだが、飛び蹴りをする私の足に付加されたベルの力の前では、そんなもの関係なかった。
思いのほか吹っ飛んだ番犬を見届けて、くるりと回転し小狼達の元へ着地する。
「走れ!!!!!」
黒鋼の合図と共に4人で走り去る。
館内には脳が反応するほどの警報と、記憶の本の略奪者である私達へのアナウンスが流れた。見つかってしまった。
こうなって仕舞えば捕まらなければ勝ちだ。
次は番犬、ではなく、羽根の生えた乗り物にのる魔女や魔術師が逃げる私達の背中を追跡、攻撃してくる。
人数の多さと未知の攻撃へ戸惑いながらも、走る足は止めない。
「外だ!!!」
誰かの声に、やっとか、と思い図書館から出ると、その光景に唖然とした。先ほど登ってきた階段の途中から、駅までの道が、全て海のようになっていたのだ。
しかし、固まっていてもどうしようもない。後ろには追跡し、私たちを捕縛しようとする魔女達が追いかけてきている。
「飛び込むぞ」
「駄目だよ」
『……っ…』
ファイの声に、また頭痛が襲う。
ファイは帽子を脱ぎ、目の前の海へと放り投げる。すると、帽子はみるみるうちに溶けていった。
「これも防除魔術だよ。ぴゅー」
『…ファ、イ』
王手をかけるように、上からまた番犬が現れて、私たちへ炎を吐き出そうとしている。これじゃ、八方塞がりだ。どうする、どうする。痛む頭を必死に回していると、横で余裕そうに口笛が軽快な音を奏でる。
あ、そうだ。ここ、知ってる。
前まで口で言っていた男だと思えないほど、口笛を吹く。ピュー、ピー、ピューーーと。
するとファイの周りに風が集まり、私たちを包む大きな球体が出来上がる。
その球体は、番犬の炎さえも通さない。
「「!!?」」
『……そんな…』
「モコナ、次元移動を」
「でも、魔法陣が」
「この中なら大丈夫だよー」
ファイの絶対的な自信の通り、モコナは大きな羽根を広げ、その下には見覚えのある魔法陣が現れた。
「でたよ!魔法陣!」
ファイが魔法で一部だけ、防除魔術とやらを無効化したのだろう。私は、“知って”いた。
ファイの少し下がった口角も、小狼の驚きの表情も、黒鋼の目を疑う様子も。
『……こんなの、今思い出しても意味ないよ…!!』
私達に風がまとい、モコナへと吸い込まれ、レコルト国を逃げるように去っていった。
(揺蕩うフローライト)