ピッフル国
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私たちがあれやこれやをやっている間に、参加者は第三チェック地点まで到達したらしい。私とファイは待合室で、3人の安否と羽根の行く末を見守ることしかできない。
〈はーい!こちらは第三チェック地点です!第三チェック地点さこの渓谷です!ここは我がピッフル国が誇る自然の迷路!迷路といえば一番最初に迷路を作ったのはメイロさんという人だというのは皆さんご存知ですよね?〉
……なんだろう。この実況の人、物凄く知ってる。なんだか友枝小学校でしばしクラスメイトだった、糸目のとても楽しい嘘が得意な、あの子を彷彿とする。その嘘に、素直な小狼と木之本さんはよく引っかかっていた。
あと、横に座ってへらへらしてる奴とちょっと似てる。
『………』
「なぁーーにー?」
『なんでもない。ていうか顔近い』
ぐぐぐっと顔を寄せてくるファイの頬を一つまみし、遠ざける。顔が赤くなってしまうなんてヘマはしないが、出来ればやめていただきたい。
ふと、ある事を思い出したが、迷路といえば。その昔、クロウカードの〈迷路〉のカードの時は苦労したなぁ。月峰神社で巨大迷路が発生したと思ったら私だけはぐれちゃって。魔力もクソも分からないから、いつ小狼や木之本さんが迎えにくるのかってハラハラヒヤヒヤしながら待ったものだ。……ここの渓谷もはぐれたら大変だろうなぁ。
〈メイロさんは訪れる人が誰も自分の寝室にたどり着けないよう自宅を改造し、それが世界初の迷路と…、と行ってる間に先頭集団が到着しました!!この渓谷を通り抜けた所にバッジがあります!〉
「ここ黒さまニガテそーだねぇ」
『第一チェック地点でもガンガン当たってたわよね?もっと機体を大事にして欲しいものだわ』
ちなみに、この渓谷を通らず上を進むとセンサーに引っかかり失格になるらしい。まぁ、ここをチェック地点に選ぶくらいなので、あの鬼畜策士のクライアント様だったらこれくらいするだろう。
〈現在トップのイエロータイガー号と黒たん号はほぼ同時に渓谷に入りました!
少し遅れてスノーホワイト号!それをガルーダ号が追い上げてきました!更に中盤集団が続きます!後続も渓谷に入ります!ここで順位が大きく入れ替わるか!?〉
『…サクラ、大丈夫かしら』
「んー、難しい操作はあんまり得意じゃないだろうけど、信じて待ってよう」
『そうね、』
この渓谷でも何か起こるかもしれない。
バッジの入ったボールが破裂したり、ドラゴンチューブはまだ柔らかくて、怪我もなかった。
けれど、この渓谷は違う。自然でできたものだ。何か良くないことが、起こるかもしれない…そんな不安が拭えない。
〈ここでは第一チェック地点以上の操作技術を要求されます!おぉーっと、黒たん号ちょっと強引ですねーー!〉
『ってあぁあー!やっぱり羽部分擦ってるし!!もぅ!黒鋼のおバカ!』
「まーまーメイリンちゃん落ち着いてーー」
『ボディや飛翔パーツが破損したら飛べないんだから!分かってんのかしらあのゴリラ!』
しかし、あの操作技術でもトップは未だ黒鋼なのだ。無駄にスペック高くて嫌になる。
〈中盤集団も追い上げて来ました!トップとの差が縮まっています!
しかし混戦模様!狭い中に5機がひしめく形となっていますが、大丈夫でしょうか!?
ここで龍牙号仕掛けてきました!2機抜きましたーー!〉
モニターに映し出されたのは、龍王さんだ。
やっぱりここでも負けず嫌いなんだろう。こんな狭い道でもかなりのスピードで飛ぶ龍牙号をハラハラしながら見る。
〈しかし、抜きます龍牙号!もう一機抜きまし…危なーーーい!!〉
龍牙号の羽部分が、抜こうとしていたドラゴンフライに衝突した。
衝突した機体の選手は無事、パラシュートが開き、事なきを得た。
しかし、が龍牙号は体勢を崩してしまい、ひっくり返った。その先には、小狼がいる。
『しゃおらっ…!!』
〈龍牙号とモコナ号衝突ですーー!!〉
岩壁に向かってエンジンを全開にし、風力を噴射する事で衝突の勢いを殺し、モコナ号特有の長い羽を使い、龍王さんも乗せたモコナ号はずるずると岩壁を降る。出っ張っている部分で威力は落ち着き、他に被害を出しつつも死傷者はゼロのようだ。
『……よかった』
「流石にびっくりしたねーー。あそこで避けるって選択肢もあっただろうにー」
『…小狼は、そんなことしないわ』
「うん、そーだねー。あそこで避けちゃ、小狼君じゃないよねぇ」
〈5機リタイアです!優勝候補のひとり、龍牙号とモコナ号と共にリタイアー!!〉
小狼はそんなことしない。考えつくだろうけれど、絶対やらないんだ。賢いが、それ以上に優しいのだから。これは希望でも、私情でもなく、ただの事実。
ーーーーーー
着々とリタイアが増えていき、待合室も人が多くなり出した。こちらをチラチラみてくる輩もいるが、この際無視だ。
その中からファイが何かを見つけ、手を振る。
「小狼くーーん」
『小狼っ!?』
下ろしていた腰を勢いよく持ち上げ、小狼の所へ駆け寄る。隣に居た龍王さんが私をみて「えっ!?メイリン!?」と少し顔を赤らめていたように見えたが、今はどうでもいい。
「メイリンさん!どうしてここに?」
『心配してきたの!それより、怪我はない?掠ったり打ったりしてない?』
「おれは何ともありません」
『そう、ならよかった』
「お、おい!知り合いなのか!?」
「うん、一緒に旅してる人だよ」
「だ、だったらまた後でなっ!!」
ばっ!と遠ざかる龍王さんに、怪訝な顔をしていると、小狼はははは、と乾いた笑い声を上げていた。なんだってんだよ。
「小狼君もメイリンちゃんもこっちこっちー」
『って、なんで手を握ってるわけ?』
「えへへーー、なんでだろー?
こうしたらいい虫除けになるかなーって」
『はぁ?この国、虫とかあんまり見ないわよ?』
「あはははーー」
何を言っているかイマイチ要領を得ないファイは置いといて。モニターを見る小狼の顔が強張っている。
『羽根が、気がかり?』
「……はい」
賞品の羽根を瞳に写し、眉を寄せる小狼。気持ちは、痛いほどよく分かる。
「でも、あそこで避けちゃ小狼君じゃないでしょーー。それに、あの二人が頑張ってくれるよ」
〈第三チェック地点、現在1位は黒たん号!2位イエロータイガー号!3位スノーホワイト号!4位ガルーダ号!5位フライングレディ号!6位レジェンド号!7位蓮姫号!そして8位ウィング・エッグ号!
3つ目のバッジをゲットし、優勝するのは誰だーー!?〉
(自然の迷路)