偶像の国
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不気味な森からドコドコと太鼓の音が広がり、飽和する。炎揺らめく中、何かを祝うような音だけが響く。その情景がなんともミスマッチで首をかしげるというよりも、心がざわつく、という方が正しいような気がする。
私もその不快なダンスと太鼓に誘われたが、思わず断った。キャンプファイヤーやマイムマイムは見ている方が好きなのだ。切り株に座り、そのよくわからないサークルを眺めるだけでお腹いっぱいだ。お祝いだからーと言われたが、不可解なことだけが能を支配している。
考え事をまとめている中、遠くからファイさん!メイリンちゃん!と鈴のような声が聞こえる。帰ってきたか。
思っていた通りの人物達が帰ってきて、早々にファイの姿を見てズッコケている。
気持ちは、分かる。
「あ。お帰りーーー」
「何やってんだてめぇ…」
「教えてもらってたのー」
『お祝いのダンス、なんですって』
「いいないいなー!モコナもダンスするー!
けど、どうしてお祝い?」
ほらーとさっきまでダンスに興じていたファイは預かっていたものを、小狼達に見せる。それは、魔物が持っていると思われていたーーサクラの羽根だった。
モコナは羽根にあっさり反応し、黒鋼は骨折り損のくたびれ儲けというようにため息を、サクラは単純に驚き、小狼は納得したような表情を浮かべていた。
「この子達が持ってたんだー。落ちてたの拾ったんだってーー」
「それって魔物が現れた頃じゃないですか?」
「そう?」「そうかも」
「魔物は竜巻だったんです」
小狼のその言葉に、今度は私とファイが納得する番だった。
『やっぱりそうだったのね』
「あ、メイリンちゃんも思った? この子達の話聞いてたらオレもそうかなぁって」
「生贄よこせなんて竜巻が言ったのかよ」
「それがねぇ」
『はい、じゃあさっきのもう一回。よーい、どん!』
「あの恐ろしいもの強い!」
「すごく強い」「住んでる所飛んでった!いっぱい倒れた!」
「戦っても勝てない…」「勝てないならイケニエを出すのはどうだろうか」
「いいかも」「いいかも」
「美味しそうなイケニエ渡したら、もう大丈夫かも」
「きっと大丈夫!」「大丈夫だ」
「大丈夫だって言った」
「誰が?」「だれ?」
「あの恐ろしいものかも」
「あの恐ろしいものだよ!」
「「「「「「魔物が美味しそうなイケニエ渡したらもう荒らさないっていった!!!」」」」」」
「言ってねぇだろ!!!!」
黒鋼のツッコミが冴え渡る。うん、伝言ゲームなんてするもんじゃないね。
羽根は、小狼の手からサクラに返された。すると、糸が切れたようにサクラは再び眠りにつく。サクラの眠りと同時に、森がざわざわ轟々と鳴り、頬を掠める風が次第に強くなっていくのを感じる。
「竜巻だーーーー!!」
『確かに魔物ではあるか』
自然災害ほど、怖いものはないだろう。悪意や善意なく、言葉は通じないし、ここより優れた科学をもってしても防ぎようがない。地震雷火事親父とはよくいったものだ。いや親父は違うか。なんて思っていると、竜巻の風圧で足が地面から離れる。
『わ、ぉ、とと…』
「メイリンちゃん!!…黒様に捕まってー」
『うん』
「わーーーー!!」「きゃーー!」
ファイは私の手を掴み、一瞬何かに迷った風に、私に黒鋼の外套を掴むように言う。
風はすぐさま止み、空から大量の花が舞い落ちてくる。
『綺麗ね』
「そうだねぇ…」
桜色の南国の花は甘い香りと、声なきものの気持ちを代弁したサクラへの感謝の気持ちを運んできた。花を一輪手に取り、尚も想いを馳せる。
どうかこの旅が報われますように、と。
かの者の願いに負けないように、と。
(やさしい願い)