偶像の国
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イケニエとして残った私とファイと、ウサギの小人さん達は先程から焚いていた火の側でゆっくりしていた。イケニエといっても、今はやることがない。小人さん達は基本的に無害そうで、牙はないし爪は何かを攻撃できるほど鋭くもない。抱かせてもらったが、表面の毛皮も硬くないし、害がある毒もなさそうだ。
このナリでは、魔物が一体であれど、太刀打ちできないだろう。強いっていってたし。不安そうに食べ物を口に運んだり、ぬいぐるみみたいに動かない子が多い中、私とファイも同じように座って待っていた。
『小狼達大丈夫かしら』
「……」
『サクラが行くっていったの、驚いたわね』
「……」
『あ、この木の実美味しい』
「……」
『ジャムにして、スコーンと一緒に食べたいわ』
「………」
『……もお!!なんか反応しなさいよ!!』
何も言わないファイに思わずキレて、ギロリと睨むとウサギの小人さん達が制止してくる。仲間は喧嘩しない!喧嘩だめ!という可愛い声が聞こえた。可愛い、冷静になれる。
ただ、喋りもしないし何もないしコイツ本当になんで残ったんだ、と疑問にしか思わない。すると、先程まで開かなかった口からねぇ、といつもより低い声が聞こえた。
「なんで、メイリンちゃんはイケニエとして残ったのー?」
『それはさっき言ったでしょ』
「あれ、本心じゃないよねぇ」
全てを見透かすような、綺麗な瞳。思わず見惚れてしまいそうになりながら、私も薄く口を開く。
『一人で、考えたいことがあったの』
「考えたいこと?」
『ええ。桜都国の事とか、この国の事とか、サクラ達の事とか、ーーあなたの事とかね』
「……………」
一瞬だけ目を見開いて固まるサファイアブルーの瞳は、それだけで宝石のように思えた。もふもふしているウサギの小人さん達の頭を撫でさせてもらいながら、色々言葉を選んで、紡いでいく。
『ファイ、私に言ったでしょ?
好きだよ、みたいなこと…。結局うやむやになっちゃってるから』
「…そういえばそうだねぇ」
なんだか怯えてた色を顔に出しながら、ファイは恐る恐る私に相槌をする。そんな顔、させたいわけじゃないのに。変に笑わないで欲しいのに。
ふつふつと、怒りが芽生えてくる。
「……んーーーあれね、やっぱり忘れて。
オレは君を好きになっていいような奴じゃない。そんな余裕、オレにはなかった」
『………は?』
怒りの防波堤を崩すような核爆弾を投下された気分だ。思わず拳を硬く握ってしまい、手のひらの傷に触れる。が、今はそんなことどうでもいい。
忘れろって、言った? 自分から告白しておいて? 余裕がないというのは理解できるが、忘れろとは何様のつもりだ。握っていた拳を近くの切り株に叩きつけた。すごい音がしたが、そんなの知らない。
『……私のこと好きだの嫌いだのは、この際どうでもいい。あんたの気持ちは嘘かもとか疑ってたし。けど、私の中でこれだけははっきりしてる。
あの夜ファイからもらった言葉は、ぜーーーったい忘れてやらない!!!』
「……」
『あれは私がもらった言葉なんだから…!!!』
「……」
拳から血が滲んできたので思わず眉をひそめて、あの蒼い瞳と向き合う。悲しそうな、悔しそうな表情だ。そんな顔するなら、忘れてなんて言わなきゃいいのに…。
すると、ファイは私の硬く握った拳を取りゆっくりと開かせて、いつもとは少しだけ違った様子で諦めたようにへらと笑いかける。
「…わかった。でもごめんね、オレの言葉を忘れなくてもいいから“いつも通り”で、ね?」
『随分と我儘ね』
「……ふ、オレわがままなんだぁ」
いつも通り、意識もしない。
いつも通り、軽口を叩きあう仲で。ーーーなんて。変わらないなんて無理だ。
だって私はあなたの事を綺麗だと思ってしまったから。瞳も髪も、声や仕草だって。今では全て目が離せないでいる。
桜花国で再確認してしまった。自分でもバカだなぁとは思うが、惚れた方の負けとはよく言うものだ。それでも、そんな気持ちをぐっと飲み込んでこの話を終わりにする。どれだけいっても平行線のような気がしたから。
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この国がいくらか亜熱帯と言えども、日が落ちればそれなりに肌寒く感じる。焚き火のそばに近づき、辺りを見渡す。
『ねぇ、お家とかも全部潰されちゃったの?』
「あれ、すごくつよい」
「おおきくてつよい」「全部つぶして去っていく」
『ふーーん…』
その言葉も踏まえて見渡すが、やはり家らしきものや他の民族の影すらない。破片さえ。
小人さん達を執拗に撫でるが、もふもふで肌触りがいい。無意識のうちに可愛いとすら思ってしまう。
「みんな今頃何してるかなーー」
『モコナが騒がしくて黒鋼がキレて、小狼とサクラはおろおろしてるに一票』
「うわー想像できるーー」
「あれ、すごくつよい」「そばにいけないくらい」「いけないくらいつよい」
「で、そのあれって、どんな感じなのー?」
『さっきからだいぶ抽象的だし、見た目は?』
「あれは……」
1人の小人が、深刻そうな面持ちでつぶやく。
自分たちを襲った、魔物の正体を。
(こわい魔物)