スキマの国
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お風呂。
それは心を癒す場所であり、この集団生活の中での唯一とも言ってもいい、自分だけの時間。いや、実際には自室があてがわれる場合があるが、ほとんどサクラと一緒か、一つの大部屋だ。
そんな中、お風呂がある国は、わたしの中でとても有難い国である。
バスタブの時は、お風呂に入浴剤を入れたり、バスボムがあれば入れてしまう。
泡風呂だって好評だった(黒鋼以外)
そんな充実バスタイムの順番はジャンケンで決めるのが通例である。ほとんど私とサクラが最初ではあるが、今日は小狼達が汚れて帰ってきたため、小狼達が最初に入ることになった。
『最後はあれだったけど、いいお湯だった〜』
タオルドライもそこそこに、お風呂からあがり、ルームウェアに着替える。
お風呂から上った時には、もう誰もいなくなった。リビングで飲み物を一つ持ち出し、ベランダへ出て星を眺めた。最後のひとの特権だろう。カシュ、と小気味のいい音を立てながら炭酸飲料の缶をあけ、一口飲む。
こんな旅で、ゆっくり出来る時間なんてそう無い。
「あれあれー、メイリンちゃんお風呂上がっ………」
『?何よ、どうしたの?』
突然やってきたファイが、何故か私を見つめて固まっている。何かおかしなことをしていただろうか?
そう思っていると、私の首にかけていたタオルを奪われ、頭をふわふわと撫でるように拭いてくれる。え、本当に急に何?
『ど、どうしたのよ』
「あー…、いやぁ、お風呂上がりのメイリンちゃん可愛いなぁと思ってー」
『かわっ?!』
少しその言葉に気恥ずかしさを感じるが、この程度の軽口はいつものことだ。
ただ、ファイの雰囲気がいつもとは違うだけ。
顔まで覆いかぶさるタオル越しに、ファイの手の暖かを感じる。それだけで心地よくて、わずかに瞼が重くなるのを感じる。
『あ、あの、もう大丈夫だからっ、』
「えぇー、メイリンちゃんとのふれあいタイムがぁー」
へにゃへにゃと、まるでいつもの様にふざけた笑顔を下げるファイは、少しすると鋭く、艶やかな目つきになり、私の頭を今度は直接撫でる。
「---…でも、こんな可愛い姿、誰にも見つからないように、早くお休み」
『え、と…』
「オレ的には嬉しいけど、男としてはちょっと毒が強すぎるかも、だからー」
特に、その濡れた髪と甘い匂いとか。と、耳元で囁かれ、撫で付けていた髪にそっと何かが触れた。
ファイはベランダから出て行き、「また明日ねー」といつもの笑顔で手を振り自分の部屋に戻っていく。
『な、なんなのよ……』
まだ私を撫でるファイの手の感触が、まだ髪に残っている気がして、耳まで赤くなってしまう。
毒ってなんだよ、教えてから去りなさいよ。
そんな声は届かず、まだしっとりと濡れている髪が、やけに熱く感じる。
(シャンプーと、入浴剤の誘惑)