霧の国
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辺りを見渡すと、森、湖、霧でした。
「で、どこなんだここは」
「おっきい湖だねぇ」
『あーー…、人影もないわね』
「モコナどう?サクラちゃんの羽根の気配するー?」
「強い力は感じる」
「どこから感じる?」
モコナが指し示すのは、目の前の大きな湖だった。
これは、あれだ。久しぶりにゆっくりできる世界だ。羽根もなければ争いもない。
みんなには悪いが、先の世界で疲れてしまったので少し休憩させてもらおう。
「潜って探せってのかよ」
「待って!
私が行きま……す、」
「おっと」
探す探さないなどと言う問題でもなく、疲れが溜まりお姫様は眠りについたようだ。
『完っっ璧、寝てるわね』
「春香ちゃんの所で頑張ってずっと起きてたからねぇ」
とりあえず、小狼は湖を、私、ファイ、モコナ、黒鋼はその他周りの探索をすることになった。そして、探索もどうせなら反対周りから、ということで黒鋼&モコナ、私&ファイに分かれることになった。
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ザクザクと歩く私の後ろを、いつもの数億倍静かにファイが歩く。
なんだかそれがとても居心地が悪くて、耐えきれず後ろを振り向く。
『何か、言いたいことがあるんならいいなさいよ』
「…足はもう大丈夫なの?」
足、とはこの前の高麗国での戦いの最中の怪我のことだろう。気を抜けば痛いくらいなので折れてはいないし、春香のお母さんの薬のおかげで腫れもだいぶ引いてきた。
『大丈夫よ。
けれど、話はそれだけなの?』
「……」
やけに暗い顔をしている。
気になって、顔を覗き込むと、両手をキュッと掴まれた。
「……オレ、あの戦いを通して、メイリンちゃんがどれ程強いかわかったよ。…けど、黒さまがメイリンちゃんの怪我を見抜いた時、すこーし心臓が痛くなったんだ。君が、怪我をする所見たくないのかなぁ…」
『け、怪我といっても挫いただけだし、そこまで大げさなものじゃ』
「でも、もしまた戦いがあって、メイリンちゃんが怪我をするタイミングがあったら----オレは迷わず止めると思う」
その言葉とは裏腹に、迷いの多い瞳が、私を見つめる。サファイアブルーの綺麗な瞳が戸惑い、揺れ動いている。
なんと、情けないツラだろう。
私はファイの手を振り払い、近くにあった手頃な岩を、------思いっきり砕いた。
「……………」
『情けない面するな!
私は黙ってホイホイ護られるばかりのお姫様じゃない!!
自分の身くらい、自分で守れるわ!』
「……でも、」
『今回怪我したのは私のミスよ。しかも軽傷。…それでももし、私が怪我をするのを見たくないと目を逸らすなら、それなりの覚悟と言葉を持って言いなさい。そうすれば考てあげる』
ふぅ、と息をつくと、そこにはファイの戸惑いの瞳はなかった。
代わりに、いつものようなへらへらとした笑みが張り付いてあって、これもこれで嫌だなぁという気分だ。
「ひゅー、メイリンちゃんおっとこまえー」
『うるさい。…あ、でもあなた、びっくりすると黙るタイプなのね』
そこには私も驚いたわ、とにやにやしているとまたファイは固まった。今度は何に驚いたのか。
そんなことをしているうちに、湖のあたりが眩しいほど光をあげているのがわかった。
行ってみよう、とファイと二人で元来た道を戻った。
湖に行くほど光は大きく眩くなっていく。
すると、分かれ道で分かれた二人も戻ってきたようで、小狼とお姫様とも合流を図ろうとお姫様を寝かせた所まで戻ることにした。
戻ってみると、お姫様は湖のそばで寝ていて、小狼はいない。
きっと、光を放っていたから見に行ったのだろう。
「あの光なんだったのかなー?」
『……鱗よ』
「あぁ?鱗?
つか、なんで知ってんだ?」
それはもう見たから、としか答えるしかなかった。ファイも黒鋼も私の先読み、今は夢見と伝えている能力のことだとすぐにわかったようだ。
「なら、なんでさっき教えてやらなかったんだ」
『…今、見えたから』
「オレは夢見なんて能力ないから分かんないけど、色んなことが出来るんだねー」
「あ!モコナいいこと思いついた!」
その言葉と同時に湖から小狼が上がってきたのを確認した。
私の読み通り、光る大きな鱗のようなものを持って上がってきていた。
その小狼へモコナが冷や汗を流しながら駆け寄る。
「小狼!!サクラが!サクラがーーーー!!!!!よく寝てるのっ♡」
モコナの嘘に騙された小狼は、お姫様の安否を確認すべく走って、そのまま勢いよくこけた。
「驚いた?驚いた??これ、モコナ108の秘密技のひとつ、超演技力!!」
『ハイハイ、悪ふざけしない。小狼固まってるでしょー』
「ほんとにびっくりしたみたいだねぇ。
けどねぇ、きっとこれからもこんな事いっぱいあると思うよ。
サクラちゃんが突然寝ちゃうなんてしょっちゅうだろうし、もっと凄いピンチがあるかもしれない。---でも、探すんでしょうサクラちゃんの記憶を」
先程とは打って変わって、諦めた人のような表情で小狼に話すファイ。
「もっと気楽にいこうよー。
辛い事はね、いつも考えてなくていいんだよ。忘れようとしたって、忘れられないんだから」
諦めて、逃げて、それでも覚えてて、忘れたくても忘れられなくて。だから、それからは逃げない。ファイの記憶。
黒鋼もその言葉に、何かあるのは明らかだった。
じゃあ、私は…?私は生まれ変わる前は、何か辛い事、あったんだろうか。
〈李苺鈴〉になる前に、何が…?
「君が笑ったり、楽しんだからって誰も小狼君を責めないよ。喜ぶ人はいてもね」
「モコナも小狼が笑ってるとうれしい!」
「もちろんオレも!黒ぴょんとメイリンちゃんもだよねー」
「俺にふるな」
『そう、ね。笑っててほしいわね』
そうこうしているうちにお姫様が起きて、一行は次なる世界へと旅立った。
(アナタを探す、物語)