高麗国
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一行は結界を破り、その後難なく城の中まで侵入を許された。
が、城の中には入れた。そしてこの展開もなんとなく覚えがある。
「中に入ったはいいが、いつまで続いてんだよこの回廊は」
そう、覚えがあるし、ゲームなどではよくある展開。---ループしているんだ。
なんだがクロウカードの〈ループ〉のカード事件を思い出してしまい、気が滅入りそうだ。
あの時は本当に大変だったし、疲れた。
小狼は機転を利かせ、私と同じ思考にたどり着いたようで、他の2人にもその説明をしている。
しかし、碁を置いて道を正しく把握するって、ヘンゼルとグレーテル?チルチルとミチル?みたいだ。子供二人組が迷わないために森にパンくずを落として道しるべにする。童話ではよくある光景で、現実ではなかなかお目にかかれない状況だ。さすが小狼。
「「ひゅー」小狼くんすごーい」
「今、口でひゅーって言っただろ。吹いてなかっただろ」
「だって口笛ふけないんだもーーん。メイリンちゃんは吹けるー?」
『今は口笛関係ないでしょーが!!』
「ったく、あれだけ歩いたのに無駄足かよ」
「んーー、これ以上歩くのヤだねぇ」
『誰かさんが大股で歩くから、足パンパンだしねー』
「おめぇが!無理やりついてきたんだろうが!!」
無限ループをしてることが判明し、黒鋼が悪態を吐く。愚痴をこぼしたいのはこっちだ。
しかし、そんな雰囲気とは一変し、ファイは近くの壁に手を当て、何かを探っているようだった。
「うん。ここ、かなぁ…」
「何かありましたか?」
「この手の魔法はね、一番魔力が強い場所に術の元があるもんなのーー」
『へぇ…』
「この向こうに領主がいるのか?」
「分かんないけど、すごく強い力をこの向こうから感じる?かもー。
ささっ、黒鋼っち!ストレス発散にぶっ壊してー」
その返答に、黒鋼はお気に召さなかったのか、眉間にシワが刻み込まれている。
「……魔力は使わねぇんじゃなかったのかよ」
「今のは魔力じゃなくてカンみたいなもんだから」
にへらと笑うファイは、ひどく嘘つきの顔をしていた。
魔力のかけらもない私たちは、この男がどこまで本当のことを言っているかが分からない。
しかし、ゲームやアニメの定石を考えると、索敵や感知も魔法が必要だろう。
そう考えていると、上から小娘、と失礼な声が降ってくる。
「お前はそっち壊せ。俺ぁ、ここらをやる」
『あら?黒鋼ともあろうお方が私に協力しろと言ってるのかしら?』
「うるせぇ!このへらいのが穴は大きければ大きい方が良いっつーんだよ!!」
くわっ!と牙を剥かれ、やれやれしょうがないと言うように私はため息を一つこぼした。
黒鋼の柱を挟んで一つ隣へ移動し、深呼吸する。私はパワー系ではない。拳も軽いとよく偉に怒られていた。
だから、壁の一番脆いところを----突く!!!
合図なんてしていなかったのに、同じタイミングで黒鋼も壁を破壊した。爆発音のようなものと、埃が一気に舞う。
…アイツはゴリラか何かなの?
「あたりーーーー!」
黒鋼と私の壊した壁がガラガラと破片を零していく。すると、目の前には大きな部屋が広がっていた。
「誰かいます」
小狼の警戒した声により、再び一行は意識を張り巡らす。
煙の中から現れたのは、しゃなりと優雅に座っている妖艶な美女---
「よう来たな。虫けらどもめ」
「誰だ?てめぇ」
「たかだか百年程しか生きられぬ虫けら同然の人間達が口の利き方に気をつけよ。…と、言いたいところだが、久し振りの客だ。大目に見てやろう」
「何言ってんだ?」
怖いもの知らずとはお前のことである、とても辞書に書いてんのか?と言うくらい黒鋼は喧嘩腰だった。
「とりあえず、さっさと領主とかいうのの居所吐け。面倒くせぇから。」
「黒ぷん短気すぎだよー」
『こっちはお願いする立場なのよ。
脅迫はいざという時だけにしなさい』
「面白い童達だ」
ふふ、と秘妖がゆっくり笑みを浮かべ、黒鋼とファイの喧騒の中、先ほどまで無言だった小狼は確かな歩みで秘妖に近づいた。
「この城の中に捜し物があるかもしれないんです。領主が何処に居るか教えていただけませんか」
先ほどの黒鋼の態度とは打って変わり下手に出ていて、私から見ても好感がもてる。しかし、小狼の台詞の節々に決意が宿っている。
「……良い目をしている。しかし、その問いに答えることはできんな。それにここを通すわけにも行かぬ」
シャラリと音を立て、秘妖は立ち上がり全身を露わにする。
「えっと、それはーー。オレ達を通さない為には荒っぽいコトもしちゃおっかなーって感じですか?」
先ほども思ったが、この煙のような受け答え、絶やさぬ余裕の笑みが次元の魔女と重なる。
「その通り」
気がつくと足場は細長い柱に、辺りには不穏な気配漂う珠が、そして、秘妖は中華を思わせる庭のような囲いの中にいた。
一瞬の場面展開に、幻かと黒鋼が疑うも秘妖から否の声が上がった。
「これは秘術だ。幻は惑わせるだけだが、私の秘術は…、ただ美しいだけではないぞ」
ピシ、と秘妖が弾いた珠は一直線に小狼へと向かう。
『小狼!それ避けて!!』
私の声より先に小狼へ向かった珠が弾け水になり、小狼の服を痛々しい音と共に溶かした。
3人の意識は張り巡らされ、尚も秘妖の艶々しい声は続く。
「その
私の秘術によって出来た傷は、全て現実のものだ」
「ってことは大怪我をするとー」
「死ぬ」
秘妖の秘術によって、無数の珠が四方八方から私たちに牙を剥く。
足場も限られている中、飛び回り逃げ惑う。
小狼もアグレッシブに石柱に足を置き、回避したが、ここは彼女の魅せる世界。
その足場はすぐになくなり、小狼は下の池に足を入れてしまう。
「!!…ぐ!足が!」
『小狼!!』
「この池もこの珠と同じもので出来ている。そして、この中のめに見えるもの全てが本物とは限らない」
悲鳴にも似た私の声は届かず、小狼の足を溶かし焼いた。
交戦の中、ファイは灯篭に登りなにかが思いついたように黒鋼に壊せと言った。
「あぁ!?なんでだ!」
「素手じゃいつまでも避けるしか出来ないでしょ?」
『それ!私も欲しい!』
「お前ら…!!自分でやれ!」
ストレス発散その二である。黒鋼は何でもないように灯篭を一撃で壊した。ワンパンだ。
コイツやっぱりゴリラなんだよ。
丁度いい長さの棒が三つでき、有り難くそこから掻っ攫うことにした。
「これで触らずに珠こわせるよ」
『棒術、あんまり得意じゃないんだよなぁ…』
コイツらは何でもできるのか、と言うくらい、黒鋼もファイも先程とは変わり珠の猛攻を軽々と阻止している。
苦手、とか言ってる場合じゃないな。
「さて、ここでずっと玉遊びしてても仕方ないよねー。小狼君。モコナと一緒に先に進んでー」
「まだ決着は付いていません」
「うん、でも人数いっぱいでかかってもあんまり効果なさそうだしー。それに、足が動くうちに進むべきでしょう」
先ほどの落ちてしまった小狼の足は、長くもたないだろう。それを危惧して戦力を分散させるのだ。
「小狼君にはやるべきことがあるんだから」
やるべき事、というファイの言葉が、私の胸に深く突き刺さった。
『…そうよ、小狼!ここはファイと黒鋼が何とかするから大丈夫!』
「また俺かよ!」
「えぇーオレもー?
メイリンちゃんからの熱いエールがあれば頑張れるけどー」
「有り難う、ございます」
再び、信念の炎が小狼の瞳に宿った。
「あの上の方が魔力が薄い。小狼君なら出られるよねー」
「すごく高いー。小狼、届く?」
心配したモコナが小狼の懐から顔を覗かせる。しかし、その心配の答えはファイが用意していたものだった。
「それも大丈夫だよー。あのねー」
「何の相談かは知らないが、私をあまり退屈させてくれるな。童達」
『ごめんなさい、もうそろそろ終わるから!
それであそこまで行けるならそれでいいから、早くしなさいよ黒鋼!』
行きます、と合図し小狼が少し高い位置の石柱から飛び降りる。と、そこに黒鋼の棒を準備し、飛び乗る。
その飛び乗った小狼もろとも、黒鋼が高く高く力強く---振り上げた。
天井まで届いた小狼は蹴りで壊し、無事1人だけ脱出できたようだ。
『よかった…』
「二人ともカッコいいーー!ひゅー!」
「だから口で言うのやめろ!」
「一人、逃してしまったのだな…。仕方ない、残った童に少々灸を据えるとするか」
秘妖は集めた珠を私達の上で破裂させ、酸性の雨を大量に降らせた。
『雨にしては凶暴ね』
「この水痛いねぇ…」
「当たったら服も体も溶けちまうみてぇだからな」
私の服もじわじわと溶け出し、露わになった肌は火傷のように熱い。
『ここの服装、布量が多くて助かったわ』
「女の子には厳しい戦いだねー」
「先ほどの童と同じ方法では逃げ出せんぞ」
秘妖は舞いのようなしなやかさで手を大きな珠を私達の石柱へ放つ。
ファイがそれを先程と同じ要領で弾こうと棒を薙ぐと、---珠は見計らったようにその形態をくねらせ直前で弾けた。
驚き身を固めてしまったファイは黒鋼に棒で弾き飛ばされ、私も投げ飛ばされた。
「黒むーひどいーー」
『ゴホっ、…き、急に投げ飛ばすバカがいるかー!!』
「ああしなきゃお前ら今頃仲良く解けてるぞ」
「そうなんだけどー。もうちょっと優しく移動させて欲しかったよぅーー」
文句はないが、一言物申したいほどの衝撃だった。ゴリラは手加減を覚えて欲しい。
「中々やる童共だ。
これは、久しぶりに退屈せずに済みそうだ」
けたたましい音と共に這い上がってきたのは、先程と比較にならないくらいの大きな珠だった。
(死亡フラグは折るためのもの)