スキマの国
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
(ジェイド国⇔桜都国の間ぐらい)
風邪を、ひいた。
意識が朦朧とする中、私はやってしまった、と自責の念に駆られていた。
小狼、お姫様、モコナが寝込んでいる私を心配そうに覗き込むが、真っ赤な顔でマスク越しに笑顔を見せるしか今の私にはできない。
安心させたくてみせた笑顔だったが、サクラはより心配になったようだった。
「メイリンちゃん、大丈夫…?」
『…大丈夫だから。移るといけないし、あっち行ってなさい』
そういうと、3人(二人と一匹?)は、しょんぼりとしながらも頷き、部屋から出て行く。
しかし、備え付けのソファからまだ動かない人が1人。黒くて、大きい、よくわからない奴。
『ゴホッ…、あなたもさっさと部屋から出て行きないよ。移っても知らないわよ…』
「俺ぁそんなヤワじゃねぇよ」
ソファに寝転びながら、マガニャンを読んでる黒鋼をベッドから横目に見る。
いや、出てけよ。人が折角気い使ってんのに。移っても知らないぞ。
「…まだあいつ戻ってきてねーから、なんかあったら呼べ」
『ハハ、黒様ちょー優しいじゃん。どったの?』
「うるせーよ!寝てろクソガキ。そんなひょろっこいのに足出してっから風邪なんてモン引くんだよ」
黒鋼は照れ隠しなのか濡れタオルを絞り、グリグリと私の頭へ押し付ける。いや、痛い痛い。
黒鋼が言っていたアイツ、とは。白いあの魔術師のことだ。今はどこに行ってんだか。
そんなことを考えていると、思考は途中で途切れ、私はふわふわと夢の扉をあけていた。
数分か、数十分か、もしかしたら数時間後、目がぱっちりと開いた。
なにやら寝る前より体が軽い気がする。
『………あーーー、モコナがいっぱいで、モコナ料理をモコナと食べる夢を見た…』
ちょっと、いや、かなり嫌な夢だった。
なんだよモコナ料理って。モコナ108の秘密技にも多分ないよな。
「あれ?メイリンちゃんおはよー」
『…ファイ、おはよう』
遅かったのね、と言うと、連絡を受けて薬師の所を訪ねてたんだーと返ってきた。
素直に嬉しいが、そんなことしなくていいのに…と反応に困ってしまった。
「風邪っぴきのメイリンちゃんも真っ赤で無防備で可愛いけど、元気で強いメイリンちゃんが好きだからねー。
まぁ、最近ちょっとおてんばが過ぎたからその影響で寝込んじゃったのかもねー」
『この前のことは反省してるから。目が笑ってないのよ怖い』
この前、ジェイド国での事だろう。あの時は私なにもしてないんだけれど…。まぁ、幽閉されてた所を助けてもらったり、泣きついたりしたから、ここで反論ができないのが苦しい…!!
「そーいえば、あの時のお仕置きがまだだったっけー?」
『お姫様抱っこという羞恥心へのダイレクトアタックを貰ったわよ!!なかったことにするな!』
「あれは怪我人を丁寧に運んだだけでしょー」
んー、そーだなーと思考するファイは、さながらいたずらっ子のような表情を浮かべる。
いや、そんな可愛いもんじゃない。すごく嫌な予感がする。
「あ、罰にもならないけど、じゃあクイズ出してあげるよー」
『へ…?』
「これの答えがわかったら、メイリンちゃんの質問に一つ答えてあげる。ね?」
『まぁ、いいけど』
風邪で暇だということもあり、ファイの挑戦にあっさり乗った。そうすると、いつものにやにやした顔から、さらに笑みを深めて唇に人差し指を当て、ファイは低く呟いた。
「寝てるメイリンちゃんに、オレがさっきした悪戯はなんでしょーか」
『え"…?』
「ヒントはなし。制限時間はメイリンちゃんの体調が改善するまでー、はいスタートー」
そう言うと、私の頭をひと撫でしてファイはこの部屋から出て行ってしまった。
寝てる間に起こったことなんて分かるわけない。こんなクソみたいなゲームやーめた、…ん?
『……体調、改善、…薬師、体が軽い。薬飲んだの?…え、ちょっと待っていつ?私、さっきまで、寝て…』
ある一つの思考にたどり着いたが。…いや、いやいやいやいや、いやいや!!!!!ないない!く、くち、くちうつ、し…?とか、あり得ないでしょ!!!そんな少女漫画みたいな展開あってなるものか!
『……ぁんのっ、魔術師!!!取り敢えず殴る!!』
熱が上がって、顔が真っ赤になったんだ。だから心臓も早い。それだけ。それだけだ。
(この早鐘を鳴らすのはあなた)
肩で息をするほど早く、早くと思ったのはつい先日もあった。しかし、あの時の焦燥感はなく、今頭を占めているのは一刻も早く薬や水を、彼女に届けたいから。
これは、なんなんだろう。
そんなことを考えながら、借りてる宿にたどり着き、扉を開けるとサクラちゃんたちが不安げにおれを見た。
「ファイさん!おかえりなさい」
「ファイ!メイリンがね、今とーってもつらそうなの!おくすりある?」
「ただいまー。ちゃんと貰ってきたよー」
そう言うと、サクラちゃんもモコナも、小狼くんもどこかホッとした様子だ。
「メイリンちゃん、わたし達にお風邪移っちゃいけないからって今お部屋閉めて寝てて…。あ!でも黒鋼さんが看病してくれてて!」
「……あの黒ぷーが?珍しいこともあったもんだねぇ。じゃあ、お薬飲ませてくるねー」
サクラちゃんにありがとうと声をかけると、微笑んでくれた。
隣接された部屋のドアを開けると、ソファに寝そべって雑誌を読む黒ぴっぴがそこにいた。
「ただいまー黒様〜、…メイリンちゃんの調子はどう?」
「熱は高ぇが、飯食って薬飲みゃ下がるだろ」
「そっかー。看病ありがとーね〜」
「別にお前に礼言われることでもねぇだろうが。早く治せと、その小娘が起きたら伝えておけ」
そう言うと、黒ぴょんは部屋から去って行った。相変わらずいじり甲斐があるのに空気感が読める人だ。
備え付けの椅子をベッドの横に移動させて、メイリンちゃんの寝顔をそっと覗き込む。
顔を真っ赤にさせて、呼吸をするたび肩が動く。額は心なしか汗ばんでいる。
取り敢えず、顔や腕をタオルで拭いてあげよう。そうすると起きるだろうし、そのあと薬を渡せばいい。
さっと行動に移す。顔や両腕をそっと濡れたタオルで拭いて、少し体を動かしても、予想外にピクリとも起きない。
「…わー。そういえば、メイリンちゃん寝起きあんまり良くないんだっけー?」
苦笑い、するしかない。
さて、どうやって起こすか。このまま寝かせておくのもいいが、せっかくだから薬を飲んでから寝てほしい。
メイリンちゃんの額に手を当て、熱を測るととても熱い。まじまじと彼女の顔を見ると、ある一つの方法がオレの脳内を横切る。
…が、バレたらめちゃくちゃ怒られそうだ。
湖の国で怒られた以上の反応が返ってくるかも知れない。だが、当分起きそうにはないし、やるしかないな…。
「これは不可抗力だよ。許してね…」
そう呟き、貰ってきた薬を自らの口に入れ、コップに残っていた水を含む。メイリンちゃんを抱き起こして、そっと彼女の唇へオレのを落とす。
含んでいたものを流し込むと、メイリンちゃんから少し声が漏れた。
何故だか心がキュッと締め付けられた感覚があったが、今は関係ないだろう。
「……ふぅ、やっちゃったー。って、これでも起きなんだねぇ」
まだ顔が赤い君は、起きてこの事を知るとどんな風に怒るだろう。これ以上顔を真っ赤にして、オレを怒鳴りつけるかな?それとも目が泳いで…と考えているとなんだか楽しくなってきた。
メイリンちゃんを再びベッドへ寝かせて、肩まで布団をかける。
彼女が起きるまで、本棚にあった適当な小説でも読もう。確か、ここの国の文字は多少読めるし、小狼くんに読み方の確認もした。
唇に残る感触と、彼女のリアクションの予想が心を占める。
いつの間にかオレの口角はあがっていた。
(自身の早鐘は聞こえないフリ)
風邪を、ひいた。
意識が朦朧とする中、私はやってしまった、と自責の念に駆られていた。
小狼、お姫様、モコナが寝込んでいる私を心配そうに覗き込むが、真っ赤な顔でマスク越しに笑顔を見せるしか今の私にはできない。
安心させたくてみせた笑顔だったが、サクラはより心配になったようだった。
「メイリンちゃん、大丈夫…?」
『…大丈夫だから。移るといけないし、あっち行ってなさい』
そういうと、3人(二人と一匹?)は、しょんぼりとしながらも頷き、部屋から出て行く。
しかし、備え付けのソファからまだ動かない人が1人。黒くて、大きい、よくわからない奴。
『ゴホッ…、あなたもさっさと部屋から出て行きないよ。移っても知らないわよ…』
「俺ぁそんなヤワじゃねぇよ」
ソファに寝転びながら、マガニャンを読んでる黒鋼をベッドから横目に見る。
いや、出てけよ。人が折角気い使ってんのに。移っても知らないぞ。
「…まだあいつ戻ってきてねーから、なんかあったら呼べ」
『ハハ、黒様ちょー優しいじゃん。どったの?』
「うるせーよ!寝てろクソガキ。そんなひょろっこいのに足出してっから風邪なんてモン引くんだよ」
黒鋼は照れ隠しなのか濡れタオルを絞り、グリグリと私の頭へ押し付ける。いや、痛い痛い。
黒鋼が言っていたアイツ、とは。白いあの魔術師のことだ。今はどこに行ってんだか。
そんなことを考えていると、思考は途中で途切れ、私はふわふわと夢の扉をあけていた。
数分か、数十分か、もしかしたら数時間後、目がぱっちりと開いた。
なにやら寝る前より体が軽い気がする。
『………あーーー、モコナがいっぱいで、モコナ料理をモコナと食べる夢を見た…』
ちょっと、いや、かなり嫌な夢だった。
なんだよモコナ料理って。モコナ108の秘密技にも多分ないよな。
「あれ?メイリンちゃんおはよー」
『…ファイ、おはよう』
遅かったのね、と言うと、連絡を受けて薬師の所を訪ねてたんだーと返ってきた。
素直に嬉しいが、そんなことしなくていいのに…と反応に困ってしまった。
「風邪っぴきのメイリンちゃんも真っ赤で無防備で可愛いけど、元気で強いメイリンちゃんが好きだからねー。
まぁ、最近ちょっとおてんばが過ぎたからその影響で寝込んじゃったのかもねー」
『この前のことは反省してるから。目が笑ってないのよ怖い』
この前、ジェイド国での事だろう。あの時は私なにもしてないんだけれど…。まぁ、幽閉されてた所を助けてもらったり、泣きついたりしたから、ここで反論ができないのが苦しい…!!
「そーいえば、あの時のお仕置きがまだだったっけー?」
『お姫様抱っこという羞恥心へのダイレクトアタックを貰ったわよ!!なかったことにするな!』
「あれは怪我人を丁寧に運んだだけでしょー」
んー、そーだなーと思考するファイは、さながらいたずらっ子のような表情を浮かべる。
いや、そんな可愛いもんじゃない。すごく嫌な予感がする。
「あ、罰にもならないけど、じゃあクイズ出してあげるよー」
『へ…?』
「これの答えがわかったら、メイリンちゃんの質問に一つ答えてあげる。ね?」
『まぁ、いいけど』
風邪で暇だということもあり、ファイの挑戦にあっさり乗った。そうすると、いつものにやにやした顔から、さらに笑みを深めて唇に人差し指を当て、ファイは低く呟いた。
「寝てるメイリンちゃんに、オレがさっきした悪戯はなんでしょーか」
『え"…?』
「ヒントはなし。制限時間はメイリンちゃんの体調が改善するまでー、はいスタートー」
そう言うと、私の頭をひと撫でしてファイはこの部屋から出て行ってしまった。
寝てる間に起こったことなんて分かるわけない。こんなクソみたいなゲームやーめた、…ん?
『……体調、改善、…薬師、体が軽い。薬飲んだの?…え、ちょっと待っていつ?私、さっきまで、寝て…』
ある一つの思考にたどり着いたが。…いや、いやいやいやいや、いやいや!!!!!ないない!く、くち、くちうつ、し…?とか、あり得ないでしょ!!!そんな少女漫画みたいな展開あってなるものか!
『……ぁんのっ、魔術師!!!取り敢えず殴る!!』
熱が上がって、顔が真っ赤になったんだ。だから心臓も早い。それだけ。それだけだ。
(この早鐘を鳴らすのはあなた)
肩で息をするほど早く、早くと思ったのはつい先日もあった。しかし、あの時の焦燥感はなく、今頭を占めているのは一刻も早く薬や水を、彼女に届けたいから。
これは、なんなんだろう。
そんなことを考えながら、借りてる宿にたどり着き、扉を開けるとサクラちゃんたちが不安げにおれを見た。
「ファイさん!おかえりなさい」
「ファイ!メイリンがね、今とーってもつらそうなの!おくすりある?」
「ただいまー。ちゃんと貰ってきたよー」
そう言うと、サクラちゃんもモコナも、小狼くんもどこかホッとした様子だ。
「メイリンちゃん、わたし達にお風邪移っちゃいけないからって今お部屋閉めて寝てて…。あ!でも黒鋼さんが看病してくれてて!」
「……あの黒ぷーが?珍しいこともあったもんだねぇ。じゃあ、お薬飲ませてくるねー」
サクラちゃんにありがとうと声をかけると、微笑んでくれた。
隣接された部屋のドアを開けると、ソファに寝そべって雑誌を読む黒ぴっぴがそこにいた。
「ただいまー黒様〜、…メイリンちゃんの調子はどう?」
「熱は高ぇが、飯食って薬飲みゃ下がるだろ」
「そっかー。看病ありがとーね〜」
「別にお前に礼言われることでもねぇだろうが。早く治せと、その小娘が起きたら伝えておけ」
そう言うと、黒ぴょんは部屋から去って行った。相変わらずいじり甲斐があるのに空気感が読める人だ。
備え付けの椅子をベッドの横に移動させて、メイリンちゃんの寝顔をそっと覗き込む。
顔を真っ赤にさせて、呼吸をするたび肩が動く。額は心なしか汗ばんでいる。
取り敢えず、顔や腕をタオルで拭いてあげよう。そうすると起きるだろうし、そのあと薬を渡せばいい。
さっと行動に移す。顔や両腕をそっと濡れたタオルで拭いて、少し体を動かしても、予想外にピクリとも起きない。
「…わー。そういえば、メイリンちゃん寝起きあんまり良くないんだっけー?」
苦笑い、するしかない。
さて、どうやって起こすか。このまま寝かせておくのもいいが、せっかくだから薬を飲んでから寝てほしい。
メイリンちゃんの額に手を当て、熱を測るととても熱い。まじまじと彼女の顔を見ると、ある一つの方法がオレの脳内を横切る。
…が、バレたらめちゃくちゃ怒られそうだ。
湖の国で怒られた以上の反応が返ってくるかも知れない。だが、当分起きそうにはないし、やるしかないな…。
「これは不可抗力だよ。許してね…」
そう呟き、貰ってきた薬を自らの口に入れ、コップに残っていた水を含む。メイリンちゃんを抱き起こして、そっと彼女の唇へオレのを落とす。
含んでいたものを流し込むと、メイリンちゃんから少し声が漏れた。
何故だか心がキュッと締め付けられた感覚があったが、今は関係ないだろう。
「……ふぅ、やっちゃったー。って、これでも起きなんだねぇ」
まだ顔が赤い君は、起きてこの事を知るとどんな風に怒るだろう。これ以上顔を真っ赤にして、オレを怒鳴りつけるかな?それとも目が泳いで…と考えているとなんだか楽しくなってきた。
メイリンちゃんを再びベッドへ寝かせて、肩まで布団をかける。
彼女が起きるまで、本棚にあった適当な小説でも読もう。確か、ここの国の文字は多少読めるし、小狼くんに読み方の確認もした。
唇に残る感触と、彼女のリアクションの予想が心を占める。
いつの間にかオレの口角はあがっていた。
(自身の早鐘は聞こえないフリ)