ジェイド国
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私達はサクラの言葉により、もう一度北の城周辺へやってきた。
先程まで寝ていたサクラは、エメロード姫を探すように、キョロキョロとあたりを見回している。
「…だめ。エメロード姫、どこにもいない……」
「前に、侑子言ってた。心配事がなくなったら、霊はどこかへ行くんだって」
「成仏するってことか」
「よっぽど子供達が心配だったんだねぇ、金の髪のお姫様」
遠くを見つめるサクラに、なんて声をかけるべきか迷った。あの表情はきっと、質問ができなかったということもあるのだろいけれど、私にはどうしてもエメロード姫がきちんと成仏出来ているか心配なんじゃないかと、思ってしまった。
エメロード姫が見えなかった私には、どう声をかけるのが正しいのか、分からない。
「けど、エメロード姫がサクラちゃんに教えてくれた、「誰かがずっと視ている」っていうのは、どういう意味なんだろうー」
「もう一つ、分からないことがあるんです。カイル先生はどうして、あの城の地下に羽根があると知ったんでしょう」
「本にあったとかじゃねぇのか」
そうとしか考えられなかった仮定を、小狼はあっさり否定した。
「グロサムさんに聞きました。羽根がエメロード姫の亡くなったあと、どこにあるか書かれた本はないそうです。…それに、伝承もないと」
察しのいい面々は、小狼の言葉とエメロード姫の言っていた「誰かが視てる」という発言が即座に繋がった。まるで、点と点が、一つの線になったような感覚だ。
「この旅にちょっかいかけてるのがいるってことかー」
「〈誰か〉が」
誰か、それが誰なのか分からない。
人物像も、背景も、思惑も。
それに、小狼達には話していない私だけの疑問点があと三つある。
一つは、私がここへ来た途端、この世界の〈お話〉を、いや、〈その先〉も忘れてしまったということ。高麗国の頃までは覚えていた気がするのに…。
もう一つは、この〈スピリット〉へ来る前の店員の話のスムーズさ。いかにも私達をここへ連れてこさせるような、誘いのテンポだった。
あれがどうも引っかかってならない。
そして最後は、カイル先生の行方。
結局死体も上がらず、死亡ではなく行方不明の扱いになったという。溺死や出血死、その他であっても流されない限りあそこに死体が留まっているはずなのに。
ああいった人は、他の人に根強い何かをーーいや、私達に根強い印象を与えた。もしかしてただの咬ませ犬だったのかもしれないけれど、警戒しておいて損はなさそうな人物だったのは間違いない。
あの時、エメロード姫が見えて、警戒すべきはサクラだけだった。なのに私を殴って気絶させるだけじゃなく、両手足拘束して、幽閉した男。注意するだけ、していてもいい。…こんな注意や警戒は、杞憂に終わるのが一番いいのだけれど。
一抹の不安を握りしめながら、私達はこの雪の国〈ジェイド国〉を後にした。
(不安を照らす光が欲しい)