ジェイド国
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「メイリンー、起きてー!」
『んぅ、…あれ、モコナ?』
まだぼけぼけな瞼を力無く開けると、そこには最近見慣れてきた白い超生物がいた。
「もうサクラ以外起きてるよ!」
『ん、それはいけない…。起きなきゃね』
ゆっくりと体を起こすと、まだ起きたくないのか、腕と足が張り付いてるみたいにぴっとりベッドから動かなかった。全く、我が体ながらなんとも怠惰な。眠い目をこすりながら、隣を見るとわたしが居たところ以外シワもなく綺麗だった。…あれからファイはちゃんと寝たのだろうか。
モコナに急かされながら、備え付けられていた瓶の水で顔を洗い、櫛で何時でいつもとはちがうゆったりとした三つ編みを一つだけ作り、右方肩から垂らす。こうすれば少しは首元が寒くないだろう。
私が身支度をしている間に、モコナは「サクラも起こしてくるー!」と元気に飛び出して行った。
ここの人に見られないといいけど…。
部屋を出て、ふと窓の外に目をやると一面真っ白の銀世界で、思わず声にならない歓喜の声が飛び出した。
『~~っ!!』
「おはようございます、メイリンさん」
『おはよう小狼!雪積もったわね!』
「昨日、随分冷え込んだしな」
「あれぇ?嬉しそうだねー、メイリンちゃん寒いの苦手じゃなかったっけー?」
『それとこれとは別なの!』
小狼と黒鋼ももう起きていたらしく、3人で外を眺めているところを発見した。
雪がこんなに綺麗に積もっているのは、久しぶりに見る。
『お姫様は砂漠出身なんでしょ?なら、雪なんて見るの初めてなんじゃない?』
「そうですね」
そんな話に花を咲かせていると、お姫様の寝室の扉が開いた。どうやら起きてきたようだ。
「サクラちゃん、おはよー」
「おはようございます」
「おう」
『おはよう』
「…おはようございます」
きっと雪について興奮気味だろう、という私の予想は外れ、なんだか微妙な顔をしたお姫様。それは小狼も感じたらしく、「どうしました?」と聞いた。
「昨日…、夢をみたんです。
雪の中を……」
お姫様が言い終わる前に、外から大きな声で「子供がーーー!!」という悲痛な叫び声が聞こえた。
慌てて私達も外へ飛び出すと、そこには昨日の自警団らしき男の人に泣きすがっている女性がいた。
「ちゃんと鍵も掛かっていたのに!!」
「壊されたのか!?」
「中から開いてるんです!あの子には絶対に鍵は開けちゃいけないと教えてあるから、あの子のはずないわ!!」
金の髪の姫が子供を攫ったのかと嘆く女性に、どうしようもない同情心が生まれた。母になったことがないから、その悲しみがどれだけのものかは分からないけれど、きっと身体を抉られるより辛いはず。
お姫様もどうやらこの状況に、何かしらのショックを与えられたのだろうと見ていたが、またもや私の見当違いだったようで。ポツリと、けれどハッキリと、言葉を呟いた。
「じゃあ、あれは夢じゃない?」
あれってなに?と問おうとした瞬間、自警団の男の人が噛み付くよう「あれってなんだ!?」と、お姫様に迫った。男の人とお姫様の間に、割ってはいるように小狼はお姫様を守った。相対する2人に、これは告げなければいけないと思ったのか、お姫様は昨日見たことを、語り始めた。
「昨夜雪の中を、金色の髪をした白いドレスの女の人が、黒い鳥を連れて歩いて行くのを見たんです」
それを聞いた町の人々は、悲鳴や罵声、恐怖からの憶測を各々言い、騒ついた。
「いい加減にしないか!」
そんな町の人々に喝を入れ、睨みを効かせたのはグロサムだった。
睨み、なんてことは私達にしかしなかったけれど。
この騒動を聞き、カイル先生も駆けつけた。
「また子供がいなくなったんですか!?」
「昨夜、この余所者達は家から出なかったのだろうな」
「いつ急患が来てもいいように、私の部屋は入り口のすぐ隣です。誰かが出て行けば分かります」
「…こ、ここにいても仕方ない!さぁ!子供たちを探そう!」
町長さんの号令と共に、グロサムも町の人も帰って行った。
しかし、先ほどお姫様に噛み付いて来た男の人はなにも私達にもガンを飛ばしてから帰った。
「わー、なんか睨まれたねぇ」
『…ガン飛ばすってことは、喧嘩売ってるってことなのかしら?』
「怪しまれてるだけだろ」
「さぁ、私達も戻りましょう。朝食の準備が出来てます」
この人子供の件ほっぽり出しといて、朝食の準備とか…、怪しさMAXなんだけど。しかし、ファイや黒鋼、お姫様や小狼はそれに気がついていないのか、それともスルーしているだけなのかなにも言わないでいる。
私だけでも気をつけないと、思い遠くの空を見ると私の心を表しているのか、どんよりと曇り空だった。
用意された暖かなスープと飲み物、フワフワのパンを食べながら、お姫様はさっき町の人に話した内容をもう一度、カイル先生にも話す。
「……金の髪の姫を見たんですか?」
「ごめんなさい、わたしがあの時外に出ていれば…」
『謝ることないわよ。
あなた寝ぼけてたんだから』
「そうです。雪の中を歩いてるドレスの女性なんて、現実じゃないと思うのは当然です」
「町の人はそう思ってないみたいでしたけどー」
嫌な笑顔をカイル先生に向けるファイ。私はその隣で最後のワンスプーン分のスープを飲み干す。しかし、左隣の黒鋼はまだ洋食器に不慣れなのか、スプーンですらぷるぷると震えながら使っている。その光景がなんだかあの美人の町娘と野獣が恋をするアニメーション映画と被ってしまい、思わず吹いた。が、カイル先生の一言でまた現実へ戻ってくる。
「『スピリット』の人達にとって、あの伝説は真実ですから」
(伝説へのプロローグ)