ジェイド国
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この国の服は重いし動きにくいし下手したら裾踏んじゃいそうだから嫌だったけれど、これだけ寒ければ納得がいく。これ着てなかったら今頃死んでいるだろう。ドレス様様だ。
そんなことを考えていると、追い打ちのように風が頬にあたる。
「いい感じにホラーってるねぇ。この気の曲がり具合がまた…」
「そりゃどうでもいいが、冷えてきたな」
『うん、本当にどうでもいい。
本当にファイどうでもいい』
「うわー、さらっとひどーい。でも、メイリンちゃん本当に寒そーだねー。オレのマントの中入る?」
『入る』
「え」
自分で言っておきながらなにを固まっているのかは分からないが、ファイのお言葉に甘えて入ることにした。見た目二人羽織みたいで面白い事になってそうだけれど仕方ない。全て寒いのが悪い。まあ、ファイの方がずっと背も高いしあまり滑稽になってない事を祈ろう。あったかいし。
「雪が降りそうですね。姫、大丈夫ですか?」
「平気です。この服、暖かいから」
「………あー、そっかー、サクラちゃんの国は砂漠の真ん中にあるんだっけ」
「はい。でも、砂漠も夜になると冷えるから」
「黒るんのところはー?」
「黒るん言うな!!…日本国は四季があるからな。冬になりゃ寒いし、夏になりゃ暑い。そこの小娘も大概一緒なんじゃねぇか?」
『…え?私?』
思ったよりもファイのマントの中がぽかぽかしてて反応が遅くなってしまった。
「確か果物の文化は一緒だったもんねー。黒ぴっぴとメイリンちゃんはー」
『そうだったわね。
でも、私の地元自体は亜熱帯だったから、冬はとても短いの。四季なんてあってないようなものだったわ』
「だからメイリンこーーーんなに寒がりさんなんだー!ファイの所はどうだったの?」
「寒いよーー、北の国だったから。これより寒いかなー」
『…これより、寒いとか』
そ、それは普通に人が死ぬのでは?
香港は基本外は暑かったから、この寒さが異常気象に思えたのに、これより寒い国とか…。
だからファイは今こんなにあったかいのか、なんてマントの中で暖を求めて身じろぎながら思う。
「小狼君は?」
「おれは父さんと色んな国を旅してたので」
「なら、寒い国も暑い国も知っているのね」
私の視界の遠くでお姫様がふんわりと笑った。小狼は、それにまたハの字に眉を歪める。
辛いよね、昔と今が重なるのは。
その今が魔女の対価によって絶対昔のようにはならない事が確定しているから尚も残酷だ。
少し馬で歩いた頃、モコナが遠くにある小さな看板を発見した。
「みんな!あれ!」
そこには“SPIRIT”の文字が。来てしまった…。ここには他の国とは違う“何か”があったはずなんだけれど、どうも靄掛かったみたいに思い出せない。なんだったかな。
「……スピリット、って読むんだと思います。前に父さんに習った言葉と同じ読み方なら」
『うん。多分あってると思うよ』
「すごい!メイリンちゃんも小狼君も読めるのね」
「すごいねー」
文化圏が違うのに読める小狼は素直にすごい。私は学校で習ったし、読めなければ逆においおい、ってなる場面だからね。
わいわいとはしゃいでいる私たちに釘を打つように、黒鋼はぶっきらぼうに声をかけた。
「おい、はしゃいでる場合じゃねぇみたいだぞ」
その黒鋼の言葉に身を正した。町に入り、町の人達は私たちを見るなりすぐに窓や扉をしめる。これでは伝説の話を調べるどころか聞くことすらもままならないだろう。
「なーんか、歓迎されてないって感じがビシバシするねぇ」
「されてねぇだろ、実際」
パカパカと小気味のいい馬の足音を聞きながら、あることを考える。
ここに来る前に、居た食堂の店員さん。なんとなく、あの人はとても形式じみた、ゲームで言うところのノンプレイヤーキャラクターのような会話をする人だった。
私達をあえて北の町へ行かせるような、そんな会話を繰り広げていた。まるで、ここになにかがあるような…。と、考え込んでいると気が付いたらバタバタと大人数の足音が一斉にこちらに向かってくる。黒鋼が構えるのと同時に、小狼はお姫様を守り、ファイは私をマントの奥へと隠した。
『ちょ、ファイっ』
「しーっ」
にっこりと笑いながら、子供を静かにさせるように唇の前で人差し指を立てるファイ。いや、しーじゃなくて。状況がイマイチ見えないけれど、多分さっきの大勢の足音の中の一人が止まれ!と私達を声をかけた。チャキという機械みたいな音とこの緊張感からして、きっと拳銃かそれに近いものを私達は今向けられているんだろう。
「お前達何者だ!?」
「旅をしながら各地の古い伝説や建物を調べているんです」
「そんなもの調べてどうする!」
男の人が激昂しているのが、声から聞いてとれる。ていうか、いい加減ここから出して欲しいんだけど、私がいつもより抵抗しないのは寒いから。どうするか考えあぐねていると、小狼が突拍子もないことを言い出した。
「本を書いているんです」
『は?』
「本?お前みたいな子供がか!?」
「いえ、この人が」
「そうなんですー。で、その女の子がオレの妹で、一緒の馬に乗ってるのが助手くんでー、こっちの黒いのが使用人」
「誰が使用人、がっ!?」
なんだか、とんでもなく盛大な嘘をついてるなぁ。あと、黒鋼になにがあった。
「それで、この子がオレの可愛いハニーですーー♡」
『はぁ?』
ばさりとマントが開いたと思えば、なにをこいつは言ってやがるんだ?あと、寒いんだが??本当に頭が沸いてるんじゃないのか?
さすがにファイにガン飛ばして文句を言おうとしたその時、「やめなさい!」と大きな声を誰かが荒げた。
男の人が達が先生と呼ぶ人は、それなりの発言権を持っているようで、さっきの人よりも物腰柔らかく、私達を歓迎してくれるそうだ。
しかし、私の本能がこの胡散臭い笑顔を「怪しめ」と叫んでいる。
「失礼しました、旅の方達。
ようこそ、『スピリット』へ」
(霊が蠢く町)