高麗国
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あの後、屋根の修理を終わらせた黒鋼とファイはこの国の囲碁?みたいなものをしていた。
私はというと、お茶を飲みながら黒鋼のマガニャンを読んで、各々ゆっくりしている。…さっきの話で気分も悪いし。お互いやりずらい。
すると、十数分後、荷物を多く抱えた小狼達が帰ってきた。
「おかえりーどうだった?
黒たんとずっと言葉が通じてたってことは、あんまり遠くには行かなかったのかな?何か、…あったみたいだね」
俯いている春香と頭を怪我して血がでてる小狼、そして心配そうに2人を見ているお姫様から察するに、またあの大男が嫌がらせに来たことが把握できた。
「そっかー、また領主とかの風にヤラレたんだー」
「しかし、そこまでやられてなんで今の領主をやっちまわねぇんだ」
「やっつけようとした!何度も、何度も!領主が住んでる城には秘術が施してあって、誰も近寄れない!」
「それがモコナの感じた不思議な力かー」
「不思議な力がいっぱいで、羽根の波動がよく分からないの」
『領主があんだけバンバン秘術を使ってればね』
秘術も魔術も私にとっては同んなじ様なものなんだけれど、モコナからしたら何かが違うらしい。けれど、不思議な力、とくくってしまえば皆同じ、なんだとか。
『じゃあさ、』
「あの息子の方はどうなの?人質にとっちゃうとかさー。だよねぇ、メイリンちゃん?」
「…お前ら、今さらっと黒いこと言ったな」
「ん?」
ニヤリと、それでいてさらりとこちらに話を振って来る。コイツ、あえてさっきのやり辛い空気をぶち壊してきやがった。
「だめだ!秘術で領主は蓮姫の町中見張ってる!息子に何かしたら…」
『昨日や今日みたいに、秘術で攻撃されちゃって二の舞になるのね』
「1年前、急に強くなったって言ってたね、その領主。
それって、サクラちゃんの羽根に関係ないかなぁ」
ファイのその一言に、小狼が固まった。直にその力を受けたのは小狼だけだから、きっとその言葉にピンときたのだろう。
「辻褄があわねぇだろうが。記憶の羽根とやらが飛び散ったのは、つい最近の話だろうが」
「次元が違うんだから、時の流れも違うのかも」
そんな話にいてもたってもいられなくなったのか、小狼はすくっと立ち上がった。
「確かめてきます。その領主の元に、羽根があるのかどうか」
「待って!
小狼君、怪我してるのに…」
「大丈夫です」
「でも…」
「大丈夫です。羽根がもしあったら取り戻してきます」
「小狼君……」
お姫様がいくら縋っても、止めても
、その歩みを止めようとしない。それが、今の小狼。危うくて、とても険しい茨の道を、痛みなど感じる暇もないと、何の気なしにずんずん進んでるのを見てる気分だ。
そんなの、お姫様じゃなくても止めたくなる。
そんな無謀な小狼に、ファイは問題提起した。
「ちょっと待ってー。ん、安心して、止めるわけじゃないから。
でもね、あの領主の秘術、結構すごいものみたいだからねぇ。ただ行っただけじゃ無理でしょう。せめて、城の入り口にかかってる術でけでも破らないと」
「おまえ、なんとか出来るのかよ」
「無理」
「って、いかにも策あり気な顔で言うなー!!」
『あの自信に満ち溢れた物言いはなんだったのよ…』
暢気な否定により、モコナが「侑子に聞いてみよう!」と言った。
まぁ、ここでは一番得策かもね、と思ったがしかし待て。私、彼女に会うの初めて、なんじゃない?夢に出てきたあの気に入らない蝶々は、本人かどうかも分かってないのだし、本当にこれが初顔合わせなんじゃないの?
そう思うと、私の体に思わぬ緊張感が走る。ごくりと、固唾を飲み込み、いざ向き合う。
原作通りにモコナは映写機の代わり、の様なものにもなれるらしい。
これも〈モコナ秘密技108〉の一つなのだろうか…?
パァアとモコナの額の石が映し出したのは、一人の黒髪の女性だった。
あぁ、懐かしいなぁ、なんて思ったのは会ったこともないのに変なのかな?
けれど、彼女を見たのはとても古い記憶の一つなのだから、しょうがない。
〈あら、モコナ。どうしたの?〉
「しゃべったーーー!!!」
「本当にモコナは便利だねー」
「便利にも程があるだろ!!」
これって、そんなに皆を震撼させる出来事だったっけ?モコナに何が出来てももう驚かないが、さしもの私もあの杖丸呑みシーンは心の準備をしないと。
閑話休題。
次元の魔女は状況を把握したらしい。
〈なるほど。その秘術とやらを破って、城に入りたいと〉
「そうなんですーー」
〈…でも、あたしに頼まなくても、ファイは魔法使えるでしょ?〉
「あなたに魔力の元、渡しちゃいましたしー」
〈あたしが対価として貰ったイレズミは、「魔力を抑えるための魔法の元」。貴方の魔力そのものではないわ〉
次元の魔女がそう言うと、ファイはまた隠す様な笑みを作る。寂しさや、辛さを殺した笑み。…やっぱり、この人嫌いだ。
「まぁでも。あれがないと、魔法は使わないって決めてるんで」
そのファイの執拗に拘ることに違和感を感じたのは、なにも私だけではなかったらしい。
〈いいわ。城の秘術が破れるモノを送りましょう。ただし、対価を貰うわよ〉
「おれに何か渡せるものがあれば…」
「これでどうですかー?魔法具ですけど使わないし」
ファイが取り出したものは、身の丈ぐらいある杖だった。
〈……いいでしょう。モコナに渡して〉
あ、くる。
モコナがあーーんと大きく口を開けて準備していた。そして、そこに遠慮なく杖を突っ込むファイ。
一度入れたら止まることを知らないのか、ずんずんずるずると入っていく。そりゃ春香ちゃん泣くわ。初見だったら私ですら涙目だよ。
ついに、モコナはあのファイの身の丈程あった杖をごっくんと飲み込んでしまった。
その代わりに、モコナの口から飛び出してきたのは、黒くて禍々しい玉だった。
「これが、秘術を破るもの…」
手がかりの手がかり程度の物だけれど、小狼にとってそれは一縷の光に見えるのかもしれない。しかし、そんな小狼は、自分の大切なお姫様が心配そうに顔を曇らせるのが見えないのだろう。
ーーーーーー
「いやだ!!私も領主の所へ行く!」
「領主の城には秘術が施してあるしね、危険だよー」
「承知の上だ!一緒に行く!!」
「んー、困ったなぁ」
こいつの困ったなぁは、本当に困ってるのかどうかさえ怪しい。しかし、当のファイは後ろにいる黒鋼に助け舟を求めるように振り向く。けれど、黒鋼は知らんぷりで押し通す。
「俺ぁ、ガキの世話は出来ねぇからな」
「照れ屋さんだからー?」
『まぁ、そんな顔してるもの。どうせ将来は、オムツも替えれないたじたじパパになるわよ』
「お前らは仲良いのか悪いのかどっちかにしろ!!」
『痛い痛い!!なんで私だけ頭ぐりぐり!?いたいいたいいたい!』
「あはははははー」
騒がしいのがいいのか悪いのか、私たちは今から領主を倒しに行くというのに、気分はピクニックのそれだった(主に白い人が)。
しかし、春香ちゃんはまだ諦め切れていなかったのか、小狼に連れて行ってと頼んでいた。
「行って領主を倒す!母さんのカタキをとるんだ!!
絶対一緒に行くからな!いいだろ!?小狼!!」
それでも、春香の掴む腕をするりと離し、春香を突き放すように断った。
「ここでサクラ姫と待っていてください」
『じゃあね、お姫様。手当できるものとかあれば用意してて頂戴ね』
春香とお姫様に別れを告げた後、小狼は振り返らずに、歩みを止めずに羽根を求め領主の元へ向かう。
「言えばよかったのにー。
春香ちゃんを連れて行かないのは、これ以上迷惑かけないダメだって」
『私達みたいな、よく分からないよそ者をうちに泊めて、一緒にいる所も見られてる。その上、春香ちゃんも連れ立って殴り込みに行ったら、領主のクソを倒せなかった時に春香ちゃんがどんな目にあうか分からないものね』
優しいこの子が考えそうなことだ。
私の余計な補足に、小狼は無言を通すがファイと黒鋼はにやりと笑っている。
「なぁに弱気言ってんだ。兎に角、その領主とやらをやっちまえばいいんだろ」
「で、サクラちゃんの羽根があれば…」
「取り戻します」
『そういうことよ』
皆、志は違えど殺る気満々といった所だろう。私は私の気持ちのまま、戦うのみだ。
そう、決意を新たに拳を握る。
「でもさー、メイリンちゃんは残らなくてよかったのー?」
「そうです!戦いになるかもしれないのに」
『あ、の、ねぇ!私は非戦闘員じゃないの、自分の身くらい護れるわよ!』
「足手まといだけは御免だぞ」
『ハッ、上等じゃない!』
上から降ってくる圧力をうるせぇと跳ね除ける。こっちこそ護られるのだけは、御免だ。
私は、その為にこちらにやってきたのだから。
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城の門までは、難なく到着できた。
が、入ろうとしても門の中は秘術がかかっており、そのままでは侵入すらできない。
「そこで!次元の魔女さんにもらったモノの出番だよーー」
「どうやって使うんだよ、それ」
『洗ってないソフトボールみたいね』
ソフトボール、といってもこの人たちには通じないようだが。
「投げてー!できるだけ遠くに投げて!あのお城に届くくらい!」
そう言ってモコナが短い手で指さすのは、門を抜けて遠目に見える、おそらく領主が居るであろう城だった。
……あそこまでソフトボール投げをするの?
中学生の平均記録じゃ難しくない?
呆然としていると、モコナと小狼は何かの相談をしていた。
すると、小狼は汚い玉を高く投げ、---足で思いっきり高く遠く蹴り当てた。
その玉の行方を無意識に眺めていたら、城の寸前でナニかにぶち当たり、玉は破裂。
結界を、破ったのだった。
(鬼が出るか、蛇が出るか)