高麗国
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「誰かれ構わずちょっかい出すな!このバカ息子!」
「春香!誰がバカ息子だ!!」
「お前以外にバカがいるか?」
塀の上から大男を見下ろす少女。あ、思い出した。ここ、高麗国だ。
確か、秘術がどうとかいう話だったような…。
あのあと、
「この無礼の報いを受けるぞ!覚悟しろよ!!」
雄叫びのように叫んで、大男は兵を引き連れて去って行った。
「怪我は?」
「大丈夫です、ありがとう」
お姫様のありがとうで、小狼の眉がハの字になるのを私は見逃さなかった。…辛い、んだろうな。
けれど、それにつられて私も辛くなるのはわけが違う。だから、私は気丈に振る舞うことに決めたのだ。
「んだありゃ」
「やー、なんか到着早々派手だったねー」
「小狼すごい!飛び蹴りー!」
『今度手合わせお願いしようかしら』
「えー、メイリンちゃんの手合わせなら、オレが手取り足取りーーー」
『結構よ!』
「あ」
小狼が突然変な声を上げて固まったと思えば、そこには私達がこの世界に到着した時に散らかしてしまったであろう果物や野菜があった。
「すみません売り物なのに!」
「モコナもお手伝いするーー!」
『まぁ、散らかしたのは私達だものね。ほら、お姫様それ持ってうつらうつらしないで』
「うん…」
「黒ぴんも拾ってーー」
「あーーー?めんどくせーなー」
大きくドカドカと足音を立てて近づく黒鋼。というか、まだ手にマガニャンを持ってる辺り、本当にあれが気に入ったんだなぁ。今度本当に読ませて貰おう。
散らかっている果物を拾って顔を上げると、ふと町の人の声が聞こえた。
「あいつらっ、また市場で好き勝手して!」
「この街にも
また新しい単語が聞こえた。もうこれ以上変な単語を増やさないでくれ!私今も昔も英語と古典だけは無理なんだから!
頭を抱えながら、苦い顔をしていると、さっきの少女がこちらを向いて、バチリと目があってしまった。
「ヘンな格好」
…分かってはいた。これを渡された時に、おいおい私これ着るのかよって思った。
けど、そりゃそうじゃん。私〈李苺鈴〉だもん。着るよ。でも、なんだろう…。このクサイものに蓋を占めて置いてたら、その瓶を割られて中身ビシャーっと、みたいな。
「あははははーヘンだってーー黒りんの格好ーー!!」
「黒鋼ヘンーーー」
『そ、そうよ。黒鋼の格好がヘンなのよね!よかったー』
「俺がヘンならお前らもヘンだろ!」
「お前達、ひょっとして!!来い!!」
そう言って、少女・
「あ!待ってください!」
「なんかいそがしいねぇ。おじさんごめんねー」
「めんどくせーー!」
『って、ファイ手離しなさいよ!うわっ、指を、指を絡めるなーー!!』
ーーーーーーー
連れて来られたのは、歴史がありそうなお家だった。そこの一室に連れてきた春香は、自分の目の前にお姫様と小狼を座らせて、雰囲気は事情聴取、って感じだ。
後の私達3人は、は各自自由にマガニャンを読んだり、辺りを見回したり、部屋にあった人形で遊んでいたり。すると、春香は神妙な顔つきで2人に問いた。
「お前達、言うことはないか?」
「え?え?」
「ないか!?」
「いや、あの、おれ達はこの国には来たばかりで、君とも会ったばかりだし…」
「ほんとにないのか!?」
「ない、んだ…、け……ど」
「がんばれ!小狼!」
『フレーフレー』
ずいずいと前へ進む春香に、小狼は気押されし、後退っていく。
しかし、小狼が弱々しくも否定すると、神妙な顔つきだった春香は一気に力を抜いて、ため息を吐いた。
「はぁー、良く考えたらこんな子供が暗行御史なわけないな」
「あめんおさ?」
「暗行御史は、この国の政府が放った隠密だ。それぞれよ地域を治めている領主達が私利私欲に溺れていないか、圧政を強いてないか。それを監視する役目を負って諸国を旅している」
それを聞いて、ふとあるテレビ番組を思い出した。なんだっけ、ほらあの…、なんて考えているとモコナの「水戸黄門だーー!!」という声が聞こえた。
「みと??」
『そうそう、それそれ。
この紋所が目に入らぬかーってやつ』
「メイリン知ってるんだー!
侑子は、初代水戸黄門が好きなんだって!」
『いや、詳しくは私も知らないけどね』
「さっきから思ってたんだけど、なんだそれは!?」
小狼の頭から一瞬私の手元に来たけれど、春香の言葉に「モコナはモコナー!」とウサギのように飛び回っていた。
「まぁ、マスコットだと思ってー。
…それより、オレ達をその、暗行御史だと思ったのかな?えっと…」
「春香」
「春香ちゃんね。オレはファイ。で、こっちが小狼君で、こっちがサクラちゃん。それで、あっちで人形遊びしてるのがメイリンちゃん。で、そっちの黒いのが黒ぷー」
「黒鋼だっ!!」
なんとなく、この人は人の懐に入るのが上手い、というか話の切り口を分かっているみたいだ。対人スキル、が高いのかな?
俗称で言うと「コミュ力分けろ」の部類なんだろうな。
「つまり、その暗行御史が来てほしいくらいここの領主は良くないヤツ、なのかな?」
「良くない、なんてもんじゃない!最低だ!!それに、あいつはお母さんを…」
春香が言い終わる前に、突然部屋の隅がミシミシと音を立て始めた。
ラップ音のようなギシギシと軋む音と、外の大きなゴォォォオオオという音が聞こえた。
その音に、春香は血相を変えて声を張り上げ言った。
「外にでちゃダメだ!!」
瞬間、窓が風で開いて、突如竜巻が春香の家を襲った。その被害は、もちろん私達にも被った。
飛ばされそうになる体を固めたけれど、やはりジリジリと飛びそうになる。ふわりと、足が離れた瞬間、何かが私の手を掴み、思いっきり引いてくれた。
『うわっ!?』
「メイリンちゃん、軽いんだから危ないよー」
『あ、ありがと…』
尋常じゃない風の攻撃は数秒後に止み、残ったのは吹き抜けになってしまった天井と、春香の悔しそうな悲痛の叫びだけだった。
(復讐の為に)