阪神共和国
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「お前仕事だろ、アイドルだろ!コンサートどうしたんだよ」
「だってーー!笙悟君全然遊んでくれないんだもんーーー!!それに!まだ時間も大丈夫だもん!会場そこの阪神ドームだし!」
「それにしたってなに文化財壊してんだよ」
「笙悟君のほうがアチコチ壊してるじゃない!何よーーーぅ!」
あんなに遠いところからよく会話出来るなぁと、なかなか感心してしまう。けれど、あれが所謂ケンカップル、というのだろう。可愛い。
一難去って。ファイはもういいのか、プリメーラの元からふわりと風に乗って帰ってきた。
それと同時に、どこからともなく男の泣き声が複数聞こえた。
…いや、意識的に無視してたのは間違いなんだけれど、それももう無理だ。啜り泣きにしては人数もボリュームも大き過ぎる。
「あれぇ、みんな何泣いてるのー?」
「プリメーラちゃんはあのリーダーが好きなんだ!けど、リーダーは遊んでくれなくてさびしいんだ!」
『なんでみんな知ってるの?ストーカー?』
「プリメーラちゃんが公表してるからだ!」
各々プリメーラを想い、泣く姿は本当に鬱陶しい。というか、あれはあれでプリメーラも楽しんでるのだからいいんじゃないの?ケンカップル可愛いじゃん。
プリメーラのファンが見てくれと投げてきた漫画雑誌を黒鋼は受け取って、中を開き読んでいた。漫画なんて久しく読んでないから、私も読みたい。高い位置にある袖をちょいちょい引っ張っても貸してくれず、むしろ振り払われてしまった。けちンぼめ。
「俺は学校と実家の手伝いで忙しいんだよ!近所に住んでるんだから知ってるだろ!今も配達中だったんだぞ!」
「でもさびしいんだもーーーん!
だから笙悟君が気に入った子をチームごとうちのファンクラブにいれたら、その子に会うついでに遊んでくれるかなーって!」
「あほか。ていうか、ソイツ違うし」
「わーーーん!!」
なんだかんだで仲のいい二人に和んでしまった。幼馴染かー、可愛いなぁ。私の幼馴染はちっとも可愛い事言ってくれなかったけど。
側にある同じ顔をちらりと見た。こっちの方が素直で真っ直ぐで、まだ可愛げがあるんじゃないかしら?
突然、その幼馴染と同じ名前を呼ぶ声がした。モコナだ。君たち声おっきいね。小狼はやっと、モコナの目がめきょっとなってることに気がついたらしい。
ーーーつまり、近くに羽根がある。
「ある!羽根がすぐそばにあるー!」
「どこに!?誰が持ってる!?」
「わかんないーーーー!でも、さっきすごく強い波動を感じたのー!」
「やっぱり巧断の中に取り込んでるのなかぁ」
「しかし、強くなったり弱くなったりするってなぁどういうことだ?」
『本当よね。嵐さんの話だと、羽根はただのドーピング剤みたいなものなのに』
「巧断は憑いている人を守るものだと、空汰さんは言っていました。だから、一番強い力を発するのはその相手を守るため」
「つまり、やっぱり戦ってみないと分からないってことだね」
結局戦うのか。この戦いは、被害こそ出ないものの、“羽根”以外は得られない。まぁ、こんなこと“知ってる”私だから言えることなんだろうけれど。それでもこれは意味がない。だから手伝わないし、助けないし、壊さない。
「俺が余計なこと言っちまったせいで迷惑かけて悪かったな、シャオラン」
正直言うと、本当に迷惑だ。この人のせいで私とモコナと正義君は誘拐されたし、黒鋼も喧嘩を売られたし、ファイも戦う羽目になった。そして、小狼も。
必要な手順だっていうのは分かってる。それでもここ数日見てきて思った。私も柊沢君同様に、あまり怪我はして欲しくない。
なんて、今もずっと傍観してた奴が言うセリフじゃないのも分かってる。だから今回は見守る。私が“在る”だけで関わらなければ、どうなるのか。
「けど気に入ったってのは本当だぜ、おまえ強いだろ。腕っ節が強いとかじゃなく、
「…分かりました。その申し出、受けます」
轟々とあがる炎と唸る獣の巧断が、いつの間にか小狼の隣にいた。まるで、一心同体だ。
「お前ら、手出すなよ」
「「「「FOWOOO!!!」」」
「夢で答えたように、俺は力が欲しい。一緒に戦ってくれるか?」
スッと寄り添う獣の巧断は、飼い主に懐く可愛らしい犬のようだった。夢、という単語にここに最初に来たときの夢をぼんやりと思い出した。
小狼との容赦ない攻撃が始まった。両者一歩も引けを取らない。しかし笙悟の攻撃パターンは多彩で小狼にバラバラと瓦礫の雨が降ってきた。危ない、なんて誰かの声がしたけれど、小狼はそんな瓦礫をものともせず軽々と足技でそれを砕いた。
『…すごい』
「ヒュー、かっこいー小狼君」
「素直が取り柄のバカじゃあねぇようだ。
お前がただのふざけたヤロウじゃねぇってのも見抜いてたみたいだしな」
『概ねふざけたヤロウで合ってるじゃない』
「酷いなぁ、メイリンちゃん。
けど、遺跡発掘が趣味の男の子ってだけじゃないね。まだ子供だけど色々あったのかもね、彼にも」
色々、あった。もう本当にぼんやりとしか覚えてないし、明確なことは言えないけれど、それでも、“知ってる”からこれだけは言える。小狼も黒鋼もファイも色々あったんだ。
ふと、夢で蝶々が言っていたことを思い出した。そして、私はそれを今肯定する。
失ったものは皆一定だ。誰が多いも悲しいもない。大切なものを失って、新しいものも大切にしたきた。そして、今がある。
『………私は失ってから、何かを大切にしてきたんだろう』
「メイリンちゃん?」
『ううん、なんでもないわ』
目の前で続く炎と水の戦いを網膜に焼き付ける。どちらも相性が悪いのか打ち消しあって、なんだかノーガードの殴り合いを見ている気にすらなる。しかし徐々にすり減るスタミナに、押し負けた笙悟が大きく飛ばされた。なんとか自分の巧断で衝撃を和らげて上手く着地をしていた。喧嘩慣れしてるんだなぁ。そして、自分の
「すげーー。ここまで吹っ飛んだの初めてだぜ、俺」
「笙悟君ーー!!」
「だーいじょうぶだから叫ぶなって!喉イかれんぞ、コンサート前に」
「し、心配なんてしてないもーーん!何よーーぅ、やっぱり壊すんじゃないーー!」
顔を赤らめてジタバタするプリメーラは、女から見ても可愛らしい。さすがアイドル、否恋する乙女だ。
「まじで強いな、シャオラン。
巧断は心で操るもの、なんでそんなに強いんだろうなぁ」
「やらなくちゃいけないことがあるんです」
「…なるほど」
小狼のこの言葉に何かを理解したのか、笙悟は大きな声で避難を警告した。後ろにいた仲間達は当然のようにさっさと警告を聞き入れて、その場から去った。
「SET!GO!!」
掛け声と共に、巧断から大量の水がそこらを埋め尽くした。まるで自然災害のレベルだ。だから仲間に警告したのか。
私とファイと黒鋼の立っている高い位置はギリギリ大丈夫だけれど、小狼は違った。私達よりも下に立っていたから、もしかしてと嫌な予感が頭を過る。が、ファイは「小狼君なら大丈夫だよ」とふわりと優しく笑った。私はなにも言ってないのに、やっぱり魔術師は伊達じゃないみたいだ。
視界が黒い波でいっぱいだったけれど、渦になっているところから湯気が上がった。中からは炎で自らの周りを囲んでその攻撃を回避した小狼の姿が。立ち上がった小狼に、そっと胸を撫で下ろす。そんな安堵も束の間、破壊されてバランスの取れなくなった阪神城がバキバキと壊れだした。その瓦礫は、今まで無防備だった正義君とプリメーラのところが落下地点だった。
「危ない!!」
「きゃあ!」
「だめだ!一人で逃げちゃ!守らなきゃ!!強くなるんだーー!!!」
正義君の咆哮で、辺りは一瞬眩い光に包まれた。その光と共に現れたのは、阪神城よりも大きな正義君の巧断。みんな驚愕の中、モコナだけは瞳を開きそれを凝視していた。
「あった!羽根!!この巧断の中!」
(失うモノと、得たモノ)