阪神共和国
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「…びっくりしたー。あれも巧断かー、本当にすごいねぇこの国は。モコナが喜びそうだねあの攻撃ー」
『だから危ないって言ったでしょ!』
「メイリンちゃんがどうしてそれを知ってるかは後で聞くとしてー」
『あ…』
こ、これは少々まずったかもしれない…。プリメーラの攻撃を私を抱えながら避けたファイは、空を飛びなから悠々と喋っていられるくらいには余裕だったようだ。
それが気に食わなかったのか(分かる、私も腹立つ)、プリメーラは次々と巧断から声を具現化した攻撃を繰り出す。けれどファイはまた紙一重でくるくると避ける。
「もーーー!!なんで当たらないのよーーーぅ!」
「だってー、当たったら痛そうだしぃ、メイリンちゃんも居るからねぇ」
『別にテキトーなところに降ろしてくれて構わないわよ』
「それはだーめ。近くだと攻撃が流れて来ちゃうかもでしょーー」
「もーー!!『となりの"カキ"はよく"きゃく"くう"カキ"だ』!」
呑気に話していると、また容赦ないプリメーラの攻撃が飛んできた。って、プリメーラ噛み方が怖すぎる。なんだ客を食うカキって、モンスターか。
「『ナマムギナマ"ゴミ"ナマタマゴッ!』」
「『あかまきがみあおまきがみきまき"まき"』」
「『あめんぼあかいなあいうえおっ』」
次々と飛び交う少しズレた文字の攻撃。いや、攻撃自体は避けてくれるからそれはいいんだけど、このずっと貼り付けられてる余裕の笑みが頭にくる。確かに、紙一重でずっと避け続けるって普通に躱すより難しいのは分かるし、ファイの身のこなしは“昔読んだ”時より、今の方が痛いほど感じる。
この人は、戦いに慣れている。ーーー私なんかよりも、ずっと。
猛攻を続けてたプリメーラは甲高い声を上げると、まさにライブ会場のように周りのファンが雄叫びを上げる。
「こうなったらチェンジよ!!」
四方を取り囲むファンからのプリメーラコールに、私は思わず耳を塞いだ。
「マイ巧断ちゃん変身!」
ギュルンギュルンとプリメーラの巧断は姿を変えて、ハンドマイクからスタンドマイクへと変身を遂げた。マイクの形が変わっただけじゃん、と侮る事なかれ。これはファイと私にとって危険なサインだ。しかしそのことをまだファイは知らない。
「『みんなあたしに夢中~~~♪』」
さっきと同じように出てきた文字の攻撃を、ファイはさっきと同じように紙一重でよける。
『だめ!!ファイ!』
「え、」
「~~~~いぇい!!」
スタンドマイクを振り回し、出てきた文字もそれに伴い起動に回転が掛かった。そんなことになるなんて、知りもしないファイは為す術もなく、私を庇いながら攻撃を受けた。
ドォォオンと大きな音を立てて被弾した私達は、幸運にも木の上が落下地点だったため、それがクッションの代わりを果たし、ダメージは軽減された。
『…ん、』
「いたたたー、大丈夫?メイリンちゃん」
「私は平気、…あなたが庇ったからね」
「あはは、オレも大丈夫ー」
よしよし、と私の頭を撫でるこの男は本当に腹が立つ。私の気も知らないで、勝手に庇うんだから。
「ファイさん!」
「あー、小狼君だー。オレもメイリンちゃんも大丈夫だよー。…でも、これ以上はメイリンちゃんが危険かなぁ」
そのセリフから取れることは、私が足手まといだということ。鬱陶しいことこの上ないが、私自身それは一番よくわかっている。
だから木の上から、黒鋼のところへ飛び降りた。
「え、お、おいっ!!」
「メイリンさん!?」
『しっかり受け止めてよ!』
誰もが予想外だったらしく、けれど黒鋼はなんなく私を受け止めた。所謂、俵持ち、という形で。こいつもこいつでブレないなぁ。
『はは、さすが黒鋼』
「おい小娘!!俺がいなかったらお前っ」
「黒ぽんナイスキャッチーー。
そのままメイリンちゃんが逃げない様に捕まえててねー」
『げっ』
「…なにしたんだよてめぇ」
私達にそれだけを言い残し風のように飛び去った。これは後で色々聞かれるなぁ、大変めんどくさい。プリメーラの巧断の実力が分かったからなのか、ファイは先程よりも真剣な顔つきだ。
「彼女が巧断で戦ってもモコナが反応しないってことは、彼女はサクラちゃんの羽根を持ってないみたいだし」
「うふふ、どう?もう降参?」
「降参したらどうなっちゃうのかなぁーー?」
「次の相手は“シャオラン”よっ♪」
「困ったなぁ、小狼君には大事な用があるんだよー。できたらオレで、済ませたいなぁ」
ワーワーと騒ぐ観衆。対峙しているファイとプリメーラを見て、私は思った。これで彼女との勝負は決まる。
「だったらあたしに!!『勝たなきゃだめねーーー!!』」
一直線に飛んでくる文字の攻撃。さっきみたいに間一髪で避けていては、またプリメーラが曲げてファイは攻撃を食らってしまう。けれどそんな心配はいらなかったようだ。
ファイは空いた両手でその攻撃をいなし、そのまま文字の上を駆け上がり、いつの間にかプリメーラの元へ。
「可愛い女の子に怪我させたくないから、やめない?」
「…く、『くやしいーー!!!』」
そりゃ悔しいだろう。自分は必死だったのに、こんな避けてばかりの奴にあっさりと組み敷かれては。実際私を担いでいた時よりいい動きをしていたのだから腹も立つ。
けれど、困ったことにプリメーラの巧断は組み敷かれても関係ない。プリメーラの意思に関係なく、声量の豊かなアイドルの声を
「危ない!!」
「Calling!」
瞬間、何かが正義君とモコナを空中でキャッチした。目で捉えると、そこには呆れ顔の浅黄笙悟と、数名の仲間が居た。
「ったく、何やってんだ?プリメーラ」
「笙悟くん!!」
涙ながらに浅黄笙悟を見る正義君と、めきょっと開眼するモコナも、そこに居た。
(羽根は近くに)