阪神共和国
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『で、こーなるのよね』
「す、すみません!うぅ、高い…」
「きゃー!ぷらんぷらーんっ」
捕まった、というか誘拐された私たちは、阪神城?のてっぺんにあるシャチホコ?に三人ともくくり付けられとしまった。
『ねぇ、正義君。あなたの巧断でここを逃げ切る…、いや、せめてこの縄を解くことって出来るかしら?』
「む、む、む、無理です!!そんなことしたら見つかって…! それに、僕の巧断は、弱いし…」
『……あーーもうっ!!そうそれ!ずっと思ってた!!! そう思うからずっと弱いのよ!』
「ひぃっ!?」
正義君は礼儀正しくて、私達みたいな余所者にも優しく親切でとってもいい子だ。しかし自分の弱さを理由に諦めて上ばかり見るその根性が垣間見えるたび、心のどこかで私は毎回気に入らなかった。年上のおねーさんとしてやってはいけないが、しかし!昨日から感じていたモヤモヤをとうとう本人にぶちまけてしまった。
『自分を弱いと思ったままなら、そんなの一生弱いままなんだわ!だって弱い事を容認してるんだもの!そんなの私はイヤ!
…だから私は絶対に自分が弱いから無理、だなんて思いたくないし、他人にそう思われたくない!!』
「…メイリンさん」
「私は誰かを守れるほど、強くありたい!」
またピリピリと頭痛が襲う。耐えられないほどの痛みに目を瞑ると瞼の裏には夢に出てきた黄金の蝶々が浮かんだ。
目を瞑っているのに眩しく輝く蝶々に、無理やり目を開けると、私の目の前にひらひらと飛んでいる淡い色の蝶が現れた。「力を貸しましょう」って言われてるみたいだ、と思ったのは何故だろう。ひらひらと蝶々が足のつま先に留まり、私の心は一つに決まった。
電気が走ったように足に力が溜まるのが感じる。いける、と確信してブランコの要領で遠心力を高めて、シャチホコの尾の部分まで足をのばし、思いっきり蹴る。するとクッキーのようにボロボロと壊れた、ってえ、私、こんなに脚力あったっけ…?
「そ、それ、巧断ですよ!」
「メイリンすごーーーーい!」
『え、あ、うん…??』
正直驚きを隠せない。まだこの建物が全部お菓子で出来てると言われた方が納得する。なんせ、ずっとこの身一つで戦ってきたのだから無理もない。
どうせもうすぐ小狼たちも来るだろうし、ここで待っててもいいが、飛ぶ、なんてこともできない人類からしたら、とりあえず地に足をつけたい。
『と、とりあえず、今すぐ降ろすから』
「ありがとうございます!」
「ぷぷぅ〜!下、なんだかうるさいねー」
『そうね。あ、あれ小狼たちじゃない?』
「本当だーーー!小狼ーー!」
『わっ、わ!モコナ暴れないで!』
豆粒ほどの小狼達を発見したモコナはそれはもう夏祭りのヨーヨー風船の如く暴れ回った。
そのせいで重心が後ろへ、気が付いた時にはもう私の体はふわりと宙に投げ出されていた。そりゃあ急斜面だったらね!そうなるよね!! というか、なんでこんなに冷静なのかも、さっきの巧断がどうして今出ないかも分らなかった。
重い、ドスンという落下音で気づくと、どうやら私が落ちたところは誘拐犯のプリメーラ、という女の子のいる場所だったようだ。
「アナタ!さっき縛り付けた子じゃない!どうやって逃げたのよーぅ!」
『あ、ははは。こんにちは』
「…まぁいいわ。アナタは別に笙悟くんと関係ないしーぃ」
そうか、確かこの人浅黄笙悟が好きなだけの人なんだっけ。誘拐されて若干腹が立ってたけれど、なんだかんだ言って可愛いところもあるじゃないか。ちょっとハタ迷惑だけれど。
なんて思っていたら、真下から小狼の大きな声が響いた。
「この手紙を書いたのは誰ですか!?」
「あら、やっと来たのね」
私のことをスルーして、プリメーラは桟の上に座り、小狼の問いに名乗りを挙げた。そしたら、上も下も地を這うような男どものプリメーラコール。
「モコナと正義君とメイリンさんを降ろしてください!」
「………ねぇ、そこのアナタ。アレ、“シャオラン”じゃないの?」
『小狼はあっちの下の、三人の中で一番性格良さそうな顔の子。あなた達が誘拐して来たのは正義君』
私がそう言うと、プリメーラはどこから出したのか分らないハリセンで近くにいた誘拐仲間さんを叩いた。
「ばかぁーーー!思いっきり間違えてるじゃないのよぉーーー!」
「用があるならおれが聞きます!早く3人を降ろしてください!!」
「だめよ!」
とん、と桟から少し下の屋根へ飛び乗ったプリメーラ。小狼は私がまだ縛り上げられてると思ってるらしい。あんな遠ければ見えないか。
「返して欲しかったら、あたしと勝負しなさい♪」
プリメーラの人気は絶大な様で、その一言で多くの歓声が割れんばかりに響いた。
目を凝らしてよーく小狼たちの方を見ていると、なにやらファイの後ろに大きな鳥が現れた。もう一目で分かる様になったけれど、あれは間違いなくファイの巧断だ。大きな鳥はファイを覆う様に風を生み出し、まるで飛んでいる様にこちらへ向かって来た。
「あれー?メイリンちゃんがいるーーーやっほー」
『あんた、ほんっとウザいわね』
ん、と言って手を出すとファイは躊躇なく私の手をとり、その場から連れ出してくれた。
気が付くと所謂お姫様抱っこ状態になっていた。全く、どんな時もキザな男だ。腹立つ。
「メイリンちゃんかるーーい。
落ちないように、しっかり抱き着いててねぇ」
『誰が抱き着くか!』
「え?オレに力の限り抱きしめて欲しいってー?メイリンちゃん、大胆だなぁー」
『都合よく解釈するな!』
仕方なくファイの首へ腕を絡める。不可抗力だ。やむを得ないことなんだと、自分に言い聞かせた。
「むっ!さらっと人質救出とかずるいっ!あと飛べるなんてずるいずるいーー!あたしだってできないのに!」
プリメーラは、マイク型の巧断のようで、ガチャガチャと音を立てながらそれは現れた。
あれ?これ私ファイと一緒にいたら危ないやつじゃない…?
「マイ巧断ちゃんカモーーンッ♪
あたしの巧断の攻撃、受けてみなさーーーいっ!!」
『ファイ、これ危ないから避けてね』
「…どうしてそれをメイリンちゃんが知って」
「『みんな!!元気ーーーーー♪』」
ファイのセリフは、プリメーラの攻撃によって遮られた。
(攻撃と砲撃)