新世界編
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バタバタとのびた敵が山になってる。覇王色の覇気で半分も減ったらしい。死屍累々の光景にゾロさんは減らしすぎだと苦情を入れるが、ルフィは悪びれるコトなく山の頂点に立ってわりぃと口だけ謝る。
「5万人ってことは、11人で割ると、えーーっと……??」
「1人大体4600人くらいだけど、人間なんだから割れない事もないわ」
「ロビンさん、それってもしかして怖い話ですか?」
「おれが3万いくぞ、おいマリモ!」
「黙れMr.鼻血」
「あァ!?」
いくらルフィが強かろうがこんな誰から見ても逆境だろう状況でもわたし達が一切怯えないどころか楽しそうな様子にホーディは痺れを切らし、しらほし姫に攻撃する。が、ジンベエさんが同じ技で相殺した。たしか、海の森で同郷と言っていたし魚人空手の技なのだろうが、ジンベエさんの方が強そうに見える。
ホーディの部下達はジンベエさんが魚人初の七武海だとか、4億超えの賞金首だとかザワザワしていた。
「ゴチャゴチャ言ってらんとかかってこい!
姫の命を取れる時は、わしらを全員倒した時じゃ!!!」
ジンベエさんの言葉に十分だと思ってた気合いが更に入った。しらほし姫はたくさん傷ついたんだから、もう傷付けない。
ホーディは準備していた狙撃部隊に号令を出したけど、引き金を引くより先に前に出たのは我らが音楽家。新しい技で敵を翻弄し標準を変えさせた。
「おい!姫を狙えと言ったたんだボカン!!」
「え?だってドスンさん、今日は楽しい祭りの…」
「ハイ、もう斬っちゃいました!!“キントーティアス”、“
「「ギャァァァアア!!!!」」
かっこいい新技に思わず拍手を送ると、ブルックさんは綺麗な一礼をくれた。
「おい、ぼーっとンなよ」
「あ、はい!」
甲羅部隊と呼ばれる集団がしらほし姫の近くにいたわたし達に襲いかかる。鉄みたいに重そうで硬そうな甲羅の盾にがっしりした魚人達だ。流石にわたしの羽根の弾は通らなさそう。
武装色を纏った拳を見てゾロさんは少しだけニヤッと笑って(そんな気がする)、すぐに刀を口に咥えた。
「“三刀流”……、“黒縄・大龍巻”!!!」
「ぎゃあああああ!?!」
「鉄の甲羅が果物みたいに斬れた!?」
「なんだ今のでけェ斬撃!!死神の鎌かなんかか…!?」
ゾロさんの放った斬撃は大きな竜巻となって、勢いを殺す事なく敵をどんどん巻き込んでいく。
「逃げろ斬られる〜〜〜!!」
「どこまで追いかけてくるんだ!?」
「地獄の、果てまで」
冗談ではない威圧感に、わたしも敵も肩を飛び上がらせた。顔も声も怖いんだよなぁ。サスサスと己の肩を撫でていると後ろに棘のある気配を複数感じるよりも前に、反射的に飛び退くとやはり武器を持った魚人海賊団だ。頬を上気させて少しニヤついてる。
「へへ、弱そうなお嬢ちゃんもいるぜ」
「油断するなよ、槍部隊いくぞ!」
「む、弱そう…?」
心外である。わたしが睨むよりも前に先に槍の切先がこちらを向いた。360度囲まれるほどの敵は久しぶりで、拳が震える。少し離れたところにいるサンジさんと目が合った。不安そうに歪む眉も、こちらに伸ばした手も笑顔で制止する。
届くような声量ではないけど、きっとサンジさんなら気付いてくれるだろう。わたしはもう貴方に抱き抱えられて守られるような“アンリちゃん”じゃないってところ。
「見ててね」
*
魚人海賊団の槍部隊と呼ばれた男達は年端も行かぬ少女を360度取り囲み槍を向け、一斉に躊躇なく突き刺した。
麦わらの一味に海侠のジンベエを加えた少数精鋭。カフェで話すような笑顔の少女はまさに“異物”だ。先の剣士達があれほどの実力を見せられた後なら尚更、警戒すべき敵である。
しかしそう思ってるのは多く見積もって数名、あとはせいぜいあの細腕や綺麗な瞳を見て嬲り殺す事しか考えてないだろう。
だから少女が居なくなってることに気付かなかった。
全ての槍が宙を刺し、一瞬でいなくなった事に気がついた。その次に視界の横にいた仲間も消えていることには、衝撃音を聞くまで気付かなかった。鉄がぶつかったような音と、顔から地面へ倒れる仲間。その背に乗るように先ほどの少女が不敵な笑みを浮かべていた。少女が仲間を1人沈めたらしい事は火を見るより明らかだった。自分たちの身の丈半分ほどしかない体で、小枝のような腕で、白魚のような足で。
瞬間、今まで感じていた警戒心を解く彼女の容姿や仕草その全てが恐怖へと変わった。槍を握る腕は手汗で滑り、耳鳴りが頭を揺らす。それでも魚人海賊団からすればホーディよりも怖いものがないのか、目を細めて笑う少女・アンリへともう一度槍を向けた。
ガキィン、今度は切先が空振る事はなかったが、真っ白の何かに阻まれた。真っ白の“何か”はその見た目じゃ決してあり得ない鉄のような音を鳴らしながら槍を防いだ。魚人海賊団は見る機会がないからか、真っ白の“何か”が身を包むほど大きな羽であることに気付かなかった。
「なん、だコリャ…」
誰かが呟いたのが引き金のように大きな羽は開くと同時に突風を生み出し、槍を持った魚人海賊団は次々にその身を風に攫われていく。転げ回ってダウンしている者もいた。辛うじて意識と戦意がまだ残っているのは数名。こんなんじゃ後からホーディに殺される、と思い無理やり立ち上がったのかもしれない。
だが彼らの目に映った光景は微かな戦意さえも吹き飛ばした。突風を生み出した翼は彼女の腕の2倍はあるほど大きく、その羽を広げて海賊頭上高くを飛んでいる。真白の翼は陽樹イブの光を浴びて七色に輝いていた。
「“
放たれたのは雪に見紛う程白の羽根。ふわふわと漂いながら落下するはずのものが、なぜかナイフのように降り注ぐ。瞬間、魚人海賊団の槍部隊は汚い悲鳴を上げながら赤い血潮を散らせた。
*
「「「ぎゃああああ!!!」」」
羽をしまって地面に降り立てば、すぐさまぐるん!と何かに捕まった。見れば肌色の熱を帯びたゴム、…間違いなくルフィだ。顔が歪んでしまったが、ルフィは気が付いてないのか、屈する事なく目をキラキラさせてる。
「アンリ!!!お前飛べるなら早く言えよ!!」
「やっぱりそこなんだ〜…。一応聞くけど、なんで?」
「乗せてくれ!」
「い や だ 」
「なんでだよーー!!!」
「だってルフィめちゃくちゃ動くでしょ、危ないじゃん。そもそもわたし背中に羽あるんだから邪魔でしょ」
だからダメ、と手でバッテンを作って訴えかけると唇を尖らせて文句を垂れる船長。ちょっと離れた所にいたゾロさんがこちらを見ていたので早く引き取ってくれ、と目で訴える。
「…おまえ、魚の次は鳥か。ウチの奴らはどいつもこいつも面白人間ばっかりだな」
「ゾロさん、デリカシーって知ってます?」
否、知らないだろう。きっと産道で迷子になってる途中に落としてきたに違いない。煩いルフィをべりっと剥がしてサンジさんを探す。サ、サンジさんのかっこいい新技見たいっていうのも勿論あるけど、さっき心配させちゃっただろうしね、ついでにね。うんうん。
襲いかかってくる敵を千切っては投げ千切っては投げ、やっと見つけたサンジさんは戦場の真ん中で立ち尽くしたまま紫煙を燻らせている。
「サン、!?」
呼び掛けようとした時、頭上から魚人海賊団の雄叫びが降ってきた。この島の魚人達は特殊なサンゴで浮き輪のようなものを作って空も泳ぐ。どうやらそれを利用して空からしらほし姫を狙うつもりらしい。空から奇襲だなんて呆れた。もう一度背中から羽を広げてしらほし姫の前へ出ようとした時、黒い閃光が視界の端から駆けていく。突然のことに思わず足を止めて見入ったそれは、空を飛ぶサンジさんだった。
「……飛ん、でる」
「すげーーー!!サンジも空飛べんのか!」
「アレは、CP9の……」
空を蹴るように飛ぶサンジさんは“颯爽”という言葉通りしらほし姫の前に現れた。
「よお、おめェら。しらほしちゃんに話があるなら、まずおれを通してもらおうか!」
「サンジちん様!」
「“悪魔風脚
「「ギャァ〜〜〜!!!!」」
逃げられない空中での連続蹴りに、魚人海賊はなす術なく全ての蹴りを受け地に落ちた。サンジさんの温度に肌がひりつくのと同時に、2年間の修行が身になってるのも感じる。わたしなんかが追いつけないくらい強くなってる。かっこよくて、頼もしくて、少し寂しい。いつになったらサンジさんの隣で役に立てるだろう。胸元で握っていた拳を、またきゅっと締め付ける。
綺麗に着地したサンジさんはしらほし姫に一声かけた後、何故かこちらを向いてすたすた歩いてくる。本当に歩いてるか疑わしいくらい早い。反射的に足が後退りした時、胸元で握りしめてたはずの手をサンジさんに捕まえられた。喉の奥の方で小さな悲鳴のような声が出た。
「アンリちゃん!」
「ひゃ!は、はい、」
真剣なブルーの眼差しは、どこまでもわたしを見つめている。さっきまであった不安を全部掬うみたいに。優しく掴まれた手が、あつい。
しかしあっさりと手は離され逆に呆気に取られていれば、突然サンジさんは自身のジャケットをわたしの肩に掛けた。ふんわりと煙草の香りがする。そのままジャケット越しにわたしの両肩に手を置いたまま固まるサンジさん。ベタだけれどジャケットの温もりも相まって、抱きしめられてるみたいだ。きっと今のわたしは見てわかるくらい挙動がおかしいし顔も赤いし汗もかいてることだろう。一体何なのか、そう問う前にぽつりぽつりとサンジは語るよう喋った。
「…さっきの羽、悪魔の実かい? ンンあーー月並みだが、…すげー、綺麗だった」
「あ、ありがとう」
サンジさんにしてはシンプルな褒め言葉に、緊張で強張っていた頬がゆるゆるとほぐれる。
わたしの能力は本来とんでもなく獰猛で本当に化け物に近い。足は鉤爪だし気を抜けば腕がおっきな翼になっちゃうし、頭からも腰からも羽が生えてきて目は猛禽類みたいになる。前述の通り、それではあまりにも“可愛くない”。こんなんじゃ、サンジさんの隣に立てない。大きな力を全部出すだけじゃ、みんなの役にも立てない。そう思って蛇姫様達に修行をつけてもらって、腕ではなく背中から羽だけを生やすことになんとか成功した。だからサンジさんから綺麗だと言われると、とても嬉しい。
「……」
「?」
「アンリちゃん、よく聞いてくれ。君はレディだ」
「はい、嫌と言うほど知ってますが…」
「いいや!君は分かってねェ!!女の子が空を飛ぶという意味を!」
「どういう、」
「……………スカートで、飛ばないでくれ…!!!」
放たれた最後の言葉は、とても小さく。近くにいたわたしでさえも周りの喧騒でかき消えそうなほどだった。かろうじて聞こえた言葉は、聞き間違えかも知れない。
「……え?」
「…君が空を舞う姿、優雅に微笑む様はまさに“天使”そのものだ。一瞬、おれァ死んで天国にきちまったのかと思ったくらいだ。見上げた羽は陽を浴びて七色に反射してて、間違いなく地上のモンとは思えない。神が作った最高傑作と言われても納得する。むしろそう言われねェと納得できねェ程神秘的で美しい光景だった」
「あ、ありがとう…」
「だが!!飛んでるっつー事は見上げるだろ? おれがそうなんだから敵の奴らだって見上げるさ。す、すると、その…スカートの中が、ちらりちらりとッグハ!!」
「サンジさん!?」
喋ってる途中に鼻血を出してぐらぐらと揺れている。どうやら倒れない一歩手前で耐えてるらしい。マーメイドカフェの時より免疫がついたみたいでよかった。これならチョッパー先生のドクターストップも解禁かもしれない!
しかし、ぐらぐらしたままでは敵に狙われかねない。この状況を打破するには、要は安心してもらえればいいのだ。少し恥ずかしいけれど。
決意を固めてサンジさん、と呼び掛ければ意識を取り戻し反応する。それを見てわたしはスカートを少しだけたくし上げた。それでも恥ずかしいから、サンジさんにだけ聞こえるように小声で。
「大丈夫だよ、下に見えてもいいの履いてるから!」
そう、わたしもこの能力を得て思わないはずない。なんたって前世も今世も立派な女の子。むしろこちらの世界の方が露出は激しい(その分凹凸も激しいが)。飛行能力は珍しいらしく、さらにアマゾンリリーの人たちは女性しかいない環境で育つ。下着なんて見えても困らないでしょ?と変な子を見る目を向けられた。しかし女ヶ島の知恵袋こと、ニョン婆様は島の外で暮らしていた経験もあるらしい。そこで相談してみれば、見えても問題ないスパッツを手渡されたというわけだ。
「ぶへぼらっ!!」
「ええーー!?サンジさん!??」
水鉄砲のように出た鼻血の勢いに押されサンジさんはまた倒れてしまった。さすがにわたしのドヤ顔もすぐ引っ込んだ。どうやら何かがいけなかったらしい。
「ンぐ…ありがとう、神よ……」
「うわーーチョッパ〜〜!!」
「遊ぶなお前ら!!!!」
*
やはりルフィは2年間の修行で大きなものを得られたようだ。大きな体でいきり立っているホーディでは手も足も出ないといった様子だ。
これなら時間はかからかいだろう、そう思っていた矢先、視界に大きな影が落ちあたり一面が夜になった。上を見上げると、大きな、木…?
「えええ〜〜〜!??!」
「…あ、あれは、魚人街の、“ノア”!?」
「上空になぜノアが!」
「明らかにこっちに向かってないか!??」
「島のシャボンを突き破ろうとしてるぞ!!」
「シャボンが割れたら…!!“ノア”が衝突する前に水圧で居住区なんて吹き飛んじまう!」
「あんな舟がぶつかれば島ごと砕けるぞ!!」
「いったい誰が動かしてるんだ!?」
“ノア”と言われて思い浮かぶのは確かに方舟だが、それにしたって舟と認識する事も難しい大きさだ。魚人街出身の敵もなんでどうしてと騒ぎ立てる中、わたし達はなんだこれ、と危機感よりも先に疑問の方が尽きない。
広場にいた全員が空を見つめる中、一つぽつりと黒い何かが叫びながら落ちてきた。さっき海底で会ったバンダーデッケンの仲間の大入道だ。
「バンらーれっケン船長〜〜!!! おれが落っこっちまったらー!!舟止めてくれ〜〜!! まだ死にたくないろォ〜〜〜!!!」
大入道は舟にいるらしいバンダーデッケンに手を振りながら必死な抵抗を見せる。しかし、内容が内容なだけに周りにいた魚人海賊団もザワザワし始める。ルフィのパンチで遠くに飛ばされたホーディはボロボロになりながらもノアを見上げながら恨み言を叫んだ。
「バホホホ!ワダツミィ〜〜!!お前を助けることはもう不ギャ能!!この能力で飛ばしたものは何かに激突するか標的を仕留めるまで止まらねェ!! この魚人島と共に!しらほしの死に供えられる生贄となれェ!!!」
「そ、そんなーーーー!!」
自暴自棄、というよりもさっき港で言ったように“自分に靡かなければ死ね”というのが最優先なのだろう。魚人海賊団もなぜあんな奴と手を組んだのか、理解に苦しむ。
「しらほし姫……!? 手紙やオノのように、デッケンが“ノア”を投げたというのか!?」
「あ、あの大きな舟を!?」
「もうシャボンが保たねェぞ!!」
「おい!しらほし姫はどこ行った!?いねェぞ!!」
しらほし姫の行方を探して敵味方関係なく混乱に陥る中、鈴のような声が上空から降る。
「わたくしなら!!!こちらです!!!」
しらほし姫は両腕を伸ばしてめいいっぱいマトになろうとしている。魚人島の全てを守るために。
「おおしらほしそこにいたか!!おれの愛した女ァァ!!!!」
「あなた様のマトはわたくしの命ではございませんか!!!はぁ…はぁ…わたくし1人の命を奪うためだけに…!リュウグウ王国の皆様まで巻き添えにするのは!!おや!おやめ下さいませ!!! わたくしなら!!こちらに!!!」
今にも泣き出しそうな声と顔で、あれほど怖がっていたバンダーデッケンへ思いっきり啖呵を切った。その姿に心が震えて、固く拳を握る。島民も同じ気持ちなのかしらほし姫の言葉に涙を流してお助けできないか考えていた。
「おォなんと美しいんだしらほし!心までも!! その身一つにこの災害を引き受けて国を守ろうというのかしらほし!!」
マトであるしらほし姫が魚人島から離れてしまった為、必然的にノアの軌道が外れシャボンを圧迫する力が弱まった。
バンダーデッケンはそのまま死ね!と叫びながらしらほし姫に外れることのないナイフを投げつけた。咄嗟に走り出す足と飛び立とうとする羽が出るが、燃えるように熱い手に掴まれた。
「ルフィ、」
「大丈夫だ。サンジ、おれが飛ぶ!! お前らはこの広場の方を頼む!」
「わかった!!」「わかった…」
サンジさんの脚力でノアまで飛ばされたルフィをぼんやり眺める。水の中、血を流しながら1人で逃げるしらほし姫はさぞ不安だろう。ルフィがいってくれればきっと安心だ。
すると、視界の外にいた島民のひとたちが一斉にノアの大きな鎖にしがみつきに空へ向かった。
「みんなで引けェ!!止まらなくても!!姫様に追いつく速度を少しでも…!!
ほんの少しだけでも速度を落とすんだァァ!!!」
「引けーーーーー!!」
「ノアを行かせるなァ〜〜〜〜!!!!」
「姫様!今のうちに安全な場所へ!!!!」
「あの人たち…!!」
危ないと、本能が叫んだ。あそこの近くにはホーディがいる。彼を恐れてる魚人海賊団は沢山いたのだ、きっと…。悪い予想は当たっていたようだ。羽を広げて一気に飛躍すれば間に合ったようで、眼前には鬼のように顔を歪めて腕を振りかぶってるホーディがあった。
「“矢武鮫”ェ!!!」
「ふんぐッ!」
背中の羽を大きく広げて盾のようにしてやれば、飛んできた鋭い水飛沫も受け止められた。よかった、ちゃんと守れたんだ。こちらを振り返った島民の人たちは呆然としてわたしを見た。
「ね、ねーちゃん!アンタ血が…!!」
「…大丈夫!あなた達の大事な方は、ルフィが守るから…!!」
羽がじわじわと赤く染まっていく。結構血が出てるらしくて、島民の人たちの顔が真っ青になってる。下に帰ったら怒られそうだな、と乾いた笑いが出るのと同時に力がふっと抜けた。ホーディがなんか言ってたみたいだが、あんまり耳には入ってこなかった。けど、ルフィがわたしを呼ぶ声はしっかり聞こえた。
「へへ、たのんだ」
優しい魚人のおじさんに抱えられながら、上空にいるルフィに親指を立てて笑ってみせた。