シャボンディ諸島編
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説明すると長くなるのでだいぶ端折るが、わたしは今、サウザンドサニー号でたこ焼きを頬張っている。……あれ、端折りすぎ?
トビウオライダーズを片付けた後、ハチさんを救出し、ナミと旧知の中ということもあり約束通りタコ焼きをご馳走してくれることに。
……そして、お約束の展開としてハチさんもわたしが龍神族だということに腰を抜かすほどびっくりしていた。母を含めた歴代龍神族は、どれだけ俗世と関わらなかったのか。
人数が多いということで、ハチさん達のタコ焼き屋さんの屋台船とサニー号をロープで結び、屋台船でいっぱい食べたい人と、それ以外で分かれていた。わたしは、初陣後ということもあり、サニー号に残ってゆっくりとタコ焼きを味わっている。
きっと、わたしがあっち行ったらハチさん達も落ち着かないだろうし。
「ぅうんんんめぇ〜〜〜〜〜!!!」
「んふふ、ルフィたちにぎやかですね」
「アンリはアッチに混ざらなくてよかったのか?」
「わたしはヘトヘトなので、あの元気にかこまれて食べるよゆうはないです…」
一緒に食おう!とルフィやチョッパー、果てにはサンジさんからも手を引かれたが、上記の理由からご遠慮させてもらった。いや、ヘトヘトなのは本当に本当。
終わってみれば、初陣ってだけで色んなプレッシャーやストレスがあったみたい。こんな事口にすると、ゾロさんあたりから「そんなコトで海賊やってけんのか」とか言われそうだからお口チャックである。
サニーに残ったのはロビンさん、フランキーさん、ゾロさん。このメンツであれば、大抵のことには声を荒げることもないだろう。
各々お酒やコーラを飲みながら、離れた場所から聞こえる賑やかな声に耳を傾けながら、わたしもしゅわしゅわのサイダーをこくんと飲み込んだ。
それにしても、この世界にもタコ焼きなんて文化が存在する事に、驚きを隠せない。
名前が一緒の別の食べ物かと思っていたが、正真正銘前世と同じフォルム、同じ香ばしいソースの香り、そして外はカリカリで中はとろっとしていて美味しい…!!すごい!タコ焼きだ!
まさか、生まれ変わってもタコ焼きが食べれるなんて思ってもみなかったので、少し涙目になりながら完食してしまった。
「おいしかったぁ…(その上懐かしさもプラスされているもんだから余計にだ。本当に海から出て、いろんなの食べてるなぁ)」
「それ、タコに言ってやりゃ喜ぶんじゃねェか」
「はい!あとでキチンとお礼言いにいきます。
あ、ゾロさんこのさかびんカラだったら持っていきますね」
「おう」
食べ終わったしお皿とか片付けておこう、と立ち上がると、ずいぶん遠くの方からオ〜〜〜〜〜イ!!と声がきこえてきた。
「オ〜〜〜〜〜〜イ!!若旦那ァァ!」
「……誰だ?」
「さっきの人達の声じゃない?」
「エッ!?」
そう言われて脳裏に思い描くのは、どうあがいてもあのモサモサなサンジさんもどきの顔と、わたしがノしてしまったトビウオさん達だった。まさか、報復…!?なんて思わずフランキーさんの影に隠れて身構える。(フランキーさんは体が大きいから、きっとわたしなんてみえない、はずだ)
耳を傾けて聞いてみると、なにやら報復ではないようで一安心。ほっとため息を吐いてから、ちょっとだけ、顔を覗かせて屋台船の方を見てみる。どうやらこれくらい離れていれば魚達は怯えないようだ。距離感、覚えておこう。
ふと、大きな金髪の男の人と目があった。というか、あの大牛に乗っている人が別人すぎて二度見してしまった。デュバル、のような格好のその人は、さっきとはまるで別人のような…、えっともう骨格からして違っていたのだ。……まさか、サンジさんの蹴りで???
「アッまた女の子がオラを見てる…!!
ハァイ、元気……、がいッッ☆」
「ヒッ!?」
「ナニ出来てねェウィンクでアンリちゃんの事ビビらしてんだテメー!!」
あれウィンクなの!?
いや、わたしも出来ないけど、なんか骨格から雰囲気まで変わっても色々残念な人だな!?
「どうだった、アンリ」
「…なんか、命をねらってきたとは思えないほど、おもしろい人になってました」
「アイツはどこまで面白マユ毛に似るんだか」
「そんなことないですっ!サンジさんはもっと…!!」
「もっと?」
「…………、……」
途中まで掘り進めてしまったその墓穴を、ロビンさんのニコニコ顔を見て、そっと埋めた。
最近、油断してる気がする…。もっと、気を引き締めないと。
*
「ニュ〜〜〜…、それにしても、龍神族のお方と茶を囲む日が来るとは…」
「そういうの本当に気にしないでください。
こちらこそ、いっぱいタコやきごちそうになりましたし」
「いや、それは麦わら達に助けてもらっちまったお礼だ…、デス」
「ら、楽な話し方で大丈夫ですからっ」
一通り食事も終わり、屋台船にいたみんなもこちらに上がってサニー号で食後のお茶を楽しんでいた。が、ハチさんはわたしを見るや否や、大きな目を見開いて、改めてはじめましてのご挨拶。龍神族特有の威圧感?が原因なのか、やっぱりハチさんは思っていたよりもずっと物腰柔らかくて、2人であわあわしてしまった。
なんだか落ち着かなくて、サンジさんのお手伝いをしようとしたんだが。
「魚人族にとっちゃ、アンリちゃんは女神かプリンセスみたいなモンなんだろ?まあそれはおれにもだけど。
そんなら、お茶配ったりしてるとハチやケイミーちゃんが余計に気遣っちまうと思うよ。なにより初めての戦いの後なんだから、ゆっくりしてな」
と、いう風に窘められてしまい、なおさら落ち着かなくてナミとロビンさんの間でちょこんと座らせてもらった。というか、サンジさんはあれでいて目上の人の立ち回りが上手だなあ。きっと、前のレストランで副料理長さんだったからかもしれない。
話題は移り変わり。
船の進路、次の島の話になった。魚人島へ行くにはやっぱりシャボンディ諸島、という場所に行かなくてはいけないみたい。
「おれ達魚人や人魚、それにアンリ様みてェな龍神族なら潜ってすぐに行けるけど、おめェらはただの人だからそのまま潜ると水圧で死んじまう」
「すいあつ…」
サメの潜水艦でも無理なんだから、やっぱりあるよね水圧。海にいた頃は深海や底で生活してたから存在自体を忘れてた。
すると、パッパグさんが柵に登ってばばーんと魚人島、ひいてはその後の“新世界”へ行くルートを説明してくれた。
要はレッドラインの上を歩いて行くか、下を潜っていくか、らしい。しかし、レッドラインの上にはマリージョアという天竜人?と呼ばれる偉い人たちがいて、海軍もいっぱいなので海賊であるわたし達がお願いしても許可されない。
ってことで、実質選択肢は一つ。
「だがしかし!お前らの使う航路は船もそのまま!魚人島経由の海底ルート!!」
「でも、海底ルートは危険も多いよ!」
「っあれ?ケイミーケイミー?バトンタッチしてないぞ??」
「海獣や海王類に船ごと食べられちゃう人もたくさんいるんだから!」
「……だが、お前らならその危険はないかもしれねェ」
「…………へ…?」
ハチさんのその一言で、みんなの視線が一気にわたしへ向かった。凝視されることに未だ慣れるはずもなく、目を泳がせた後不器用な笑みを浮かべることしかできなかった。
「…そうだ、アンリが居りゃ海獣も襲ってこねェし、海王類も近寄ってこねェかも!!」
「アンリ゛〜〜!!!ずっと居てくれ〜〜〜!!!!」
「チョ、チョッパー!?そんなにくっつかなくてもずっと居るから!大丈夫だよ!!」
主にウソップさんとチョッパーの怖がりさん達がわたしを囲う。わたしが何を言ってもプルプルと震えるチョッパーはわたしの足から離れることはなかった。
そんな事を真横でやっていても、ブレないのが我らが航海士。ケイミーさんがさっき言ってた“船ごと”という言葉に引っ掛かりを覚えたらしい。しかし、こんなファンタジー世界なんだから、船が潜ったり飛んだりすることにはなんの疑いもなかったんだが。いやまあ、言われてみればそうだよね。いくらサニー号が丈夫だとはいえ、普通の帆船だ。
その船を乗り捨てずに行く、となれば“何か”しなければいけない。ケイミーさん達は、その“何か”をコーティングと呼んだ。
「????」
「ホラ、前見ろついたぞ」
パッパグさんの一言で、みんな一斉に前へ目を向けると、ふよふよと何かが浮かび、高い木が何本も集まるとても幻想的な島が姿を表した。
「あれが、シャボンディしょとう…」
何かの記憶の箱が、開きそうな気がした。
*
ハチさんの提案で船を木の根の近くに着けて、みんなで上陸することに。
この島は木の集まり?らしいので、上陸、というとどこか引っかかる気もするけど。
しかし、一番引っかかるのは、この既視感。
もしかして、…いやもしかしなくても、既視感の正体はわたしの前世の“知識”だったりするだろうか?
わたしが知ってることといえば、最初らへんのみんなが出会うところ(ナミとハチさんの話とか、チョッパーの話とか)と、ビビさん?って砂漠の王国の話、空に島があった話。あとは、あのーー壮絶な戦争くらいだ。
もしかしたら、わたしが思ってるよりも早くにあの戦争はやってくるのだろうか。すぐ後ろに何かが迫っているような、そんな焦燥感が胸をざわつかせる…ーーー。
芝生からぷくぷくと発生するシャボン玉をぼんやり眺めて歩いていると、パッパグさんが今まさに説明してくれたヤルキマン・マングローブと呼ばれるこの大きな木から出ている天然の樹脂に足を取られて後ろから倒れそうになった。
「ぉわ、っ!?」
「っと、あぶねェ」
前から手を引かれ、そのまま飛びつくように誰かに抱き寄せられた。
確認せずともわかった。香水と、タバコの匂い。視界はスーツの黒。それとわたしを心配する甘い声。あまりの衝撃に思考が弾け飛んだ。
「大丈夫かい?アンリちゃん」
「あ、は、はい。ごめんなさい、ぼーっとしちゃって」
「…なにか悩み事?
おれで良けりゃ、いっつでも相談に乗るぜ」
「ふふ、ありがとう。
何か考え事してたはずなんだけど…、びっくりしちゃってわすれちゃった」
「…そっか。
じゃあ、また思い出したら是非教えてくれ。アンリちゃんの難しい顔も魅力的だが、」
「???」
「やっぱりおれァ笑顔の方が好きだ〜〜♡♡♡!!!」
「あははは」
ーー言えない。
どこで、どんな風に起きるかも覚えてない事件のことなんて。どこで覚えた知識か、なんて。
ただでさえ厄介で非力な身の上に、さらにこんな話を受け入れてもらってまで、わたしは彼らに、彼に甘えて生きていたくない。
「(…でも、サンジさんやっぱり鋭いなぁ。
気を抜くとバレちゃいそう)」
「おーーーーい!!アンリー!!!
見てみろよーー!あっちに遊園地あるぞー!後で行こーーーーー!!!」
「……うんっ!」
あの後、ルフィとハチさん達はサニー号をコーティングしてくれる腕の立つ職人さんの居場所を探して出て行った。わたしもついて行こうと思ったんだが、にっこり笑顔のナミに腕を掴まれ、そのまま連行されてしまった。
わたし達が船を降りる時もそうだ。
「アンリはコッチ」
「えっ!?わ、わたし、ルフィと遊園地にいくやくそくが……」
「また明日ね♡
今日はショッピングに行かなきゃ」
「えぇぇええ〜〜〜!!ナミぃ、お洋服はまた今度で!今度でいいから〜〜!!」
「良かないわよ。
アンタ私たちが買ってきたのばっかり着回してるじゃない!ここで買い揃えないでいつ買い揃えんの、よ!!」
「ふふふ、もう観念しちゃった方が早いと思うわよ、アンリ」
「レディ3人でお出かけ!?
な、ならボディガード兼荷物持ちでおれが…!」
「あぁーー!困ったなぁ♡
今船にお宝いっぱい積んであるのに、これを守ってくれる騎士がどこかにいないかしら♡」
「っっ!!!
はーーーい♡♡♡!!
その名誉ある騎士はおれが務めマーーーース♡♡♡!!!」
「よしっ」
「あぁあ〜、そして(味方は)だれもいなくなった……」
肩を落としてサニー号を降りると、甲板からにこやかに手を振る宝物絶対守るマン(騎士)のサンジさんと目が合った。煙草を吹かす、遠目であっても彼とわかるそのシルエットを眺めながら、呆れて笑みが溢れた。
「ーーねぇ、アンリ聞いてる??」
「アッはい!!聞いてます聞いてます!」
「…アンタ、さっきから変よ?そんなに島周りたかった?」
「あー、いや、そう言うわけじゃ…」
「そ。なら、これとこれとこれ、あとこのスカートの試着よろしく♡」
どっさり服を渡されて、一人ぽつんと試着室に取り残されてしまった。
どうやら、一緒に船を降りたルフィ達も気がつくと別行動になっていたみたいで、ナミとロビンさんとわたしは服屋さんにいた。
どこまでぼーっとしてたんだ、わたしってば。
「どれだけ考えても、わたしのじゅみょうがのびるわけじゃないのに…」
ぽつりと零れた言葉は、的確にわたしの心臓を抉った。
しばらくしてボンチャリ(この島特有の移動手段らしい)でショッピングモールを見て回っていると、ナミとロビンさんの話題がケイミーさん達に移った。
「200年前!?」
「そう、たった200年前まで、実際にあった悪い歴史……。魚人族と人魚族は“魚類”と分類されて、世界中の人々から迫害を受けていたの。みんなが彼らを蔑んでいた…」
「!?あの強い魚人族を……!?」
「“多勢”という力には何者も及ばないわ」
「はく、がい…」
「… アンリには、まだ刺激が強すぎたかしら?ごめんなさい」
「だい、じょうぶです。
ロビンさん、続けてください」
「分かったわ。
200年前、世界政府が魚人島への交友を発表するまで、ずっと。
ーーもう一つ昔の人間の悪い歴史、“人買い”や“奴隷”の文化が、まだこの諸島では黙認されている」
「っ…!!」
「だから、もしかしたら魚人や人魚に対する差別も残っているものではと思って」
政府が、人身売買を黙認している……??
あの冷たくて狭い、恐ろしい檻の中を偉い人は知らないでいるの?自分たちは無関係だと?
わたしはみんなが、サンジさんが来てくれたから無事だったけど、もし心配してくれる仲間がいなくて本当に一人ぼっちだったら。
ーーそう考えただけで、身動きが取れない。
カタカタと震えていると、ロビンさんが申し訳なさそうにわたしの頭に小さく手を置いた。
じんわり熱が伝わってくる、綺麗な手に氷のようにカチコチだったわたしの体も少しずつ溶けていくようだ。気を遣わせてしまったかな…。
しかし、そんな話を聞いてしまうとケイミーさんやハチさんが心配だ。わたし達のためにコーティング屋さん探しを手伝ってくれているのに、もし何かあったら…。
あの二人のことを思い描きながら空を見つめていると、遠くから飛行機のような高音を発してトビウオライダーズと、その上にまたがるフランキーさんが、今立ったばかりのフラグを回収しに来た。
「ロビン!!小娘!!アンリ!!
トビウオに乗れ!人魚の奴が、攫われた!」
(無自覚の収集)