シャボンディ諸島編
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前回までのあらすじ!
行きずりで助けた人魚のケイミーさんと、喋るヒトデのパッパグさんらにわたしが龍神族である事が発覚!
みんなの自己紹介も一通り終わり、わたしは今、何故か、パッパグさんがデザインを手がけた可愛いTシャツ2枚にサインを書き終わったのでした!!!
………本っっっ当〜〜〜に、何故こんなことに??
いやいや、ことの事情はケイミーさんから聞いたよ?(パッパグさんが話そうとしたが、何故かケイミーさんがトップスピードで説明してくれた)(それがまた分かりやすいのなんの。)
なんでもその昔、龍神さまが魚人島の危機を救った事がきっかけで、一種のヒーロー的な意味での宗教が出来たのだと。陸での龍神教とはまた信仰が違っているらしいが、今の人魚の王様は龍神教にも深い関心があるらしい。
故に再熱。若い人魚さん達も龍神さまが大好きらしい。
………いや、有難いよ?我父めちゃくちゃ人気者で、わたしも鼻高々ですよ??
でもさ、龍神さまのサイン貰ってきて!じゃなくて、わたしにサインください!ってなるの結局おかしくない??
わたしの拙い字が刻まれたオシャレなTシャツをニッコニコで着ているお二人に顔から火が出そうな程の恥ずかしさを覚えた。
「すげーーなアンリ!!おれも後でサインくれよ!」
「ぃゃ…本当、かんべんして、チョッパー…」
チョッパーから熱く眩しい眼差しを受けて、ノックダウン。以下終了である。
閑話休題。
ナミが魚人島への行き方をケイミーさん達に尋ねる前に、言葉を遮るように電伝虫が鳴いた(いや、その前にケイミーさんからタコ焼きをご馳走してもらうんだ!とかルフィが不要な食い意地を見せていたけれど)。
電伝虫の内容を要約すると、ケイミーさんのお知り合いのはっちんさんという方が、人攫いグループに捕まってしまったらいしい。
お友達を助けたかったらおれ達のアジトまで来い、とさながら不良のような台詞を言って、相手は通話を切ってしまった。
「タコ焼きは?」
「「そんな事態か!!」」
「…ちょっと待って、今の電伝虫の“はっちん”って男の声、……なんか知ってる声のような…」
「ナミ、しりあいなの?」
「……いや、そんなハズないわ。
もしろ、これってチャンスよね!」
人命(タコ命?)がかかってるのにチャンスと捉えるその姿勢、わたしは大好きだよナミ。ちょっと倫理感はヤバイけど。
「ごめん!!ルフィちんお礼のたこやきまた今度でいい!?私今すぐ友達を助けに行かなきゃ!!」
「え〜〜〜〜!!」
「ちょっと待ってケイミー!
首突っ込んで悪いんだけど、捕まった友達の救出なら私達も協力するから!!あ、間違えた。コイツらが協力するから」
「お前は!?」
「その代わり、あんたは魚人島に行く方法を私たちに教えてくれる、っていうのはどお?」
「えっ、いいのナミちん!?
はっちんの救出手伝ってくれるの!?」
「いいけど誰だ?はっちんって」
「私が働いてるタコ焼き屋の店主!!世界一美味しいんだよ!」
その言葉に大きく反応したルフィ達は綺麗に手のひらを返してやる気を見せた。
わたしも微弱ながらお手伝いできるかも知れない!
ナミは笑って交渉成立だといい、相手のアジトの場所を確認した。
「アイツらが言ってた44番グローブは諸島の最も東に位置する島だからよ。丁度ここからシャボンディ諸島へ行くライン上にある様だな。諸島に着く5km手前だ。まず西へ進もう、あとは魚達に聞きゃあ分かるだろ」
「うん、そーだね!急いで行こう!!」
ケイミーさんが器用に尾びれを使ってベンチから離れると、海に顔を出して魚に呼びかけている、らしい。
にしても、ケイミーさんもパッパグさんも、わたしより器用に歩いたりお喋りしていて、一々感動してしまう。
「おーーい!おーーーい!!
…あれ?誰もいないのかな??」
「どうしたんだ、ケイミー」
「それがね、魚達がなんの反応もないの」
陸上でもああして尾びれで歩ける程器用で筋肉が発達しているということは、人魚さんってもしかして泳ぐのめちゃくちゃ早んじゃないだろうか。
ぼーっとケイミーさんの後ろ姿を眺めながらどうでもいいことを考えていると、バッと後ろを振り返りわたしを見つめるケイミーさんとパッパグさん。
「え?」
「な、なぁケイミー。もしかして、魚達が一匹も反応しないのって…」
「そ、そ、そんな……。いやいやでも私達だって感じてる事だし、魚なら余計に…」
「ちょっと、あんた達どうしたの?」
「それがね、ナミちん…。
アンリ様が龍神族だから、みんな怖がって出てこない、みたいなの……」
「「「「あ」」」」
龍神族の弊害が、こんな形で現れるとは思っても見なかった。
*
“理性ある海の生き物はわたし達を畏怖し、理性なき生き物は恐怖し近寄らない”。
なんて、どうせ龍神さまが盛って伝えたとばかり思っていたが、ケイミーさん達の表情から察するにどうやらマジのようだ。
龍神さまが言ってた事を身をもって体験した事で、わたし達はどうするかと首を捻る。が、ものの数秒でロビンさんが打開策、というより正解を導き出してくれた。
「それなら、アレを使えば良いんじゃないかしら」
「「アレ……??」」
「…ああ!なるほど!!」
まさかこんなに早くコレを使うことになるとは思わず、わたしも思考の外へ追いやっていた物が一つあった。
急いでアレをしまっているクローゼットまで走って取りに行き、頭から被れば、さっきまでうんともすんとも言わなかったお魚たちが水面から顔を覗かせた。
「おぉ!!すげーー!」
「これで道が聞ける!!」
「……よ、よかったぁ、ちゃんと効果があったみたいで」
しゃらりと肌に掠る冷たいレース越しに、海をそっと覗いた。そう、最後に龍神さまからもらった“断絶のヴェール”だ。
どういう仕組みになっているのか分からないが、曰くこのヴェールを被っている間だけ龍神族の特性を無効化出来るらしい。
故に、お魚さんにも怖がられないし、道案内をお願いできる。みんなの足を引っ張らずに済んで、ほっと一息吐くと、なんだか上から視線が降ってきているような気配が。見上げると、サンジさんが弾かれたように目線を逸らした。
な、なんでだろう…少し、ショックだ。
確かにこんな綺麗な花嫁用とも取れるヴェールを、わたしみたいなちんちくりんが被ったところで馬子にも衣装だろう。
でも、心のどこかでサンジさんなら、と期待でもしていたんだろうか。全く、勝手に期待しておいて勝手に凹むなんてお門違いもいいところだ。
「アンリが落ち込んじゃったわよ、サンジ」
「あぁぁぁああ!!?」
「そんなに慌てるなら早く訂正してきたら?
人魚さん達のことも気にしてたみたいだし、不安なんじゃないかしら」
「……そう、だよな。
ありがとう、ロビンちゃん」
わたしはひっそりとベンチに腰掛けて、みんながケイミーさんと大はしゃぎしている様を眺めていた。また近寄ってご迷惑をかけてはいけないからだ。
白のヴェールが境界線みたいに、わたしと、それ以外の人達を線引いてるみたいで、少しもやもやしてしまう。
ああ、なんだか、魚人島に行くの不安だなぁ。
「アンリちゃん」
「……サンジ、さん」
芝生を踏みしめる音が聞こえて、いつの間にか下がっていた目線をあげると、サンジさんがいた。隣いいかい?と聞かれ、断るのも違うなと思い拙く了承した。サンジさんはサッと腰を下ろすと、わたしの目の前に青色にきらめくグラスを傾けた。
「あ、の。これは?」
「ああ、まだ敵さんの所にゃ着かねェだろうなと思って淹れてきた、おれ特製のスペシャルドリンク南国風でございます」
「ありがとう、ございます…?」
受け取ったグラスをカラカラと傾けると、お日様の光を反射して、海みたいでとても綺麗だ。
ブルーハワイよりも深く、けれどとっても優しい、サンジさんみたいな色に気がつけば口角が上がっていた。
ふと、サンジさんの視線が気になり、ちらりと見れば申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。あれ??サンジさんって耳とか尻尾とかって生えてたっけ?心なしかしゅんとしてる大型犬みたいになってるんだけど。
「それ、アイツから貰った龍神族の体質を無かったことに出来るっつー魔法のヴェールだろ?
アンリちゃんが被ってる姿見て、あのクソ親父が夢に出てきたって、前に話してくれた時のこと思い出しちまって。目、逸らしちゃったんだ。……気を悪くしたかい?」
「い、いえ!!でも、いつもならまじまじと見つめてくるのに、……だから、わたしの方こそ何かしちゃったのかな、って」
「いや本当、それはねェから。あとそれでちゃんと水分摂るんだよ。体質の無効化っておれは分かんねェけど、きっと身体にも負担かかるんだろう」
優しい笑顔と、優しい忠告。それだけで気にかけてくれているんだ、と嬉しく思ってしまう自分は卑しいだろうか。
なんて、思ったのも束の間。サンジは腰を上げ、かと思えば芝生に片膝をつけて、なぜか跪く。こうしてみると、やっぱりサンジさんは背が高い。座ってるわたしを少しだけ見上げるようにして、空いてる方の手を取る。あ、れ、なにこれドキドキしてきた。
「なんせ今からアンリちゃんの初陣だ。怖い思いもするだろうが、おれが君を守るから」
「…あ、え、その、」
「ハハハ、ヴェール被ってても分かるくれェ顔真っ赤だな。……っんとーーに、」
「…???」
最後らへんなにを言ったのか聞き取りづらく、なんて言ったの?、と聞き返そうとしたが頭を撫でられて、新しい煙草を咥えて離れてしまった為、話は終わってしまった。
恐らく、煙草の煙がわたしの方へ来ないために風下に行ってしまったんだが…。そ、その気遣いどうにか何ないのかな!あと真っ赤にさせたのはあなただと主張したい!!
*
船を進めている間、パッパグさんからそのハチさんの話や、人身売買の話(サンジさんをはじめ、ルフィ達ですらも怒り心頭だったのは、きっとわたしが攫われた事がまだ過去になりきれてないからだろう。)、トビウオライダーズという手強い人攫い集団の話を聞いた。
まあ気を張りすぎてはいけない、という事でブルックさんが元気の出る曲を弾いてくれたので船の上はしばらく愉快だった。
落ち込んでいたケイミーさんも楽しそうに歌って踊っていた。
暫くしてから、ケイミーさんが何かの異変に気がついた。
「ーーーえ?」
「どうしたケイミー」
「魚達が、…“悪いけどここまで”だって」
「っっうわぁ来た!!
トビウオライダーズ!!!」
パッパグさんは弾かれたように声を荒げて敵襲を知らせるが、水面には何もいない。
「何もいない…??」
「違うよ!!海じゃなくて!!
空!!!!」
バッと見上げると空には確かに数匹の魚。それにバイクのように跨る柄の悪そうな男の人が何人もいた。……罠だとは思っていたが、完全に奇襲だ。してやられた。
あたふたしている隙に、空の上から爆弾が降ってくる。
「あ、」
「アンリちゃん!!」
しゃがんだり、頭を守る暇もなく爆弾はゾロさんとルフィによって寸での所で破壊されたが、い、今のはこわかった…。
「危なかった!!」
「また来るぞ!」
「気をつけて!あのトビウオは海から飛び出て5分の間は飛行できるの!!」
「5分!?もう鳥じゃないですか!」
きゅっと父親の裾をひっぱる子供のように、頭に被ったヴェールを握りしめる。
大丈夫、大丈夫。ドキドキと高鳴る心臓を撫で下ろし、空をキッと睨みつける。
(境界線は白く頼りない)